HP、「HP BTO software」シリーズに2つの新製品を追加ITマネジメントの無駄を省き、戦略的なIT投資を支援

» 2008年12月10日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 ヒューレット・パッカード・カンパニーは12月8日から10日にかけて、オーストリア・ウィーンでイベント「HP Software Universe」を開催した。HPが提唱する“ビジネスとITの高度な連携を図る”ためのコンセプト「BTO」(Business Technology Optimization、ビジネス・テクノロジの最適化)を実現するための一連の製品群、「HP BTO software」シリーズにおいて、ソフトウェア開発の品質管理を支援する「HP Quality Center 10.0」と、ソフトウェアライフサイクル全般の状況を可視化するデータベース「HP Universal Configuration Management Database 8.0 integration with HP BTO software」の2つの新製品を発表した。

 また、HP BTO softwareのうち、ITプロジェクトの効率的な推進に寄与する「Project&Portfolio Management Center」をはじめ、今回発表したHP Quality Center 10.0、HP Universal Configuration Management Database 8.0も含めた計7製品をSaaSで提供するという。

コストを削減しても、革新性あるITの開発には積極的な投資が必要

 現在、世界的な不況によって、企業にとってコスト削減が喫緊の課題とされている。これに伴い、多くの企業でIT投資予算が削減される傾向にあるが、ヒューレット・パッカード・カンパニー BTOバイスプレジデント兼バイスプレジデントのロビン・プロフィット(Robin Purohit)氏は、「賢いCIOは、逆境を優位に変えられる」と力説した。

写真 ヒューレット・パッカード・カンパニー BTOバイスプレジデント兼バイスプレジデントのロビン・プロフィット(Robin Purohit)氏

 「世界的に厳しい経済情勢の中、企業は厳しい目でコストを管理し、あらゆるリスクを低減していかなければならない。しかしコストを削減しながらも、アジャイル開発の実践やSaaSの活用、IT運用のサービス指向化や自動化、仮想化技術の導入など、アプリケーションやITインフラの開発・運用のすべてにおいて、新しい仕組みを進んで取り入れることが大切。企業が勝ち残るためには、その場限りではない、持続可能な競争優位を実現していくべきだ」(プロフィット氏)

 ただ、コストを削減しつつ、新しいものを取り入れるためには、それなりの工夫が必要だ。例えば、要件定義の正確性の向上をはじめ、プロジェクトの内容や要員数の精査、1つのプロジェクトがビジネスに及ぼす影響など、進行中のプロジェクトをあらゆる側面から精査し、徹底的に“無駄”を省かなければならない。

 プロフィット氏は、これを実現するための指針として、「HPが提唱する3つの基本的な活動」を紹介した。「IT運用をコントロールし、ビジネス価値に基づいて投資に優先順位を付ける」「サービスの提供機能を集中化しすることで、冗長性をなくし、変化するビジネスニーズに柔軟に応える体制を作る」「品質を向上させ、コストを下げるために、ベストプラクティスや自動化を取り入れて“標準化”する」という3つだ。

 プロフィット氏は、「これらを実践すれば、厳しい予算でも新しいものを取り入れ、よりよいビジネス効果を獲得できる」と解説。そして、これら3つを効率的に実現するためのフレームワークとして、同社が提唱するコンセプト「BTO」を紹介した。

 BTOは、「ソフトウェア企画立案、開発、運用というソフトウェアライフサイクルのすべてにおいて、常にビジネスの成果を見据えることでビジネスとITの連携を高める」「ライフサイクルの各プロセスにおける主要かつ基本的な業務を自動化、標準化して作業を効率化する」「ライフサイクルの各プロセスにまたがる主要かつ基本的な機能を自動化、標準化し、統合する」という3つを軸とした概念であり、プロフィット氏は「HP BTO softwareは、まさしくこれらを具現化するための製品群だ」と力説した。

IT開発・運用の無駄を省けば、戦略的な投資は可能

 例えば、今回発表したHP Quality Center 10.0には主に3つの特徴がある。1つは同製品のモジュールの1つである「HP Center Management for Quality Center」により、複雑なアプリケーション開発プロジェクトの効率的な管理を可能としたこと。これにより、プロジェクトに適切な優先順位を付けられるほか、アプリケーションのポートフォリオも最適化できるという。 

 また、HP Quality Center 10.0と、Project&Portfolio Management softwareとの連携機能も強化。メリットの薄い冗長なプロジェクトや、価値の低いプロジェクトを容易に判別可能とした。これにより、意義の薄いプロジェクトを未然に中止することができ、莫大なコスト削減に寄与するという。

 2つ目は、従来ばらばらに行われていたアプリケーションのリリース活動を“リリーストレインモデル”に統合することで、リリース時期、開発プロセス、開発KPIなどをプロジェクトチーム間で共有可能としたこと。これにより、開発に関するあらゆる情報をプロジェクトを超えて共有できるため、より高品質なソフトウェアを効率的に開発することができる。

 そして3つ目は、要求管理、テスト管理、セキュリティテスト、不具合管理といったソフトウェアライフサイクルにおける各種イベントを、単一のプラットフォームで統合管理可能としたこと。これにより、プロジェクト間はもちろん、企画、開発、運用というライフサイクルの各プロセスも越えて、要求やテスト、不具合に関する情報を共有することができる。すなわち、開発の無駄を省いてコスト削減を実現するほか、品質向上にも大きく寄与する。

写真 HP Quality Center 10.0と HP Universal Configuration Management Database 8.0が、あらゆる無駄の発見を支援し、戦略的かつ効率的なIT開発・運用をサポートする

 一方、もう1つの新製品、HP Universal Configuration Management Database 8.0は、HP BTO softwareシリーズのうち、IT運用を効率化する「HP Business Availability Center 8.0」「HP Operations Manager i Series」など、17以上の製品との連携を実現した。

 これにより、ビジネスプロセスやそれを実現するアプリケーション、それをサポートするインフラストラクチャ、アプリケーションを使うエンドユーザーまで、IT開発・運用にかかわる情報を360度、明確に把握可能とした。いわばIT開発・運用のダッシュボードが得られることで、「ビジネスへの影響度に基づいて問題解決に優先順位を付ける」といった意思決定の効率化、迅速化に大きく寄与する──すなわち、BTO実現を支援するというわけだ。

SaaS提供は、あくまでCIOを支援するため

 加えて、今回からProject&Portfolio Management Center、HP Business Availability Center 8.0、HP Quality Center 10.0、HP Universal Configuration Management Database 8.0など、7製品をSaaSでも提供する。

 これまでも一部の製品は、旧米マーキュリー・インタラクティブがHPによる買収以前からSaaSで提供していた。ただ今回、SaaSによる提供範囲を拡大したことについて、プロフィット氏は「“クラウド化の一環”などではなく、あくまでソフトウェアの初期コストがかからないため」とあえて補足した。「CIOはIT予算のべストな使い道を考えなければならない。その点、SaaSでの提供製品を拡大すれば、その分、投資の選択肢も増えることになる」(プロフィット氏)。

 プロフィット氏は、「厳しい経済情勢の中でも、CIOはIT予算の使い道を精査し、コストやリスクを厳しく管理しつつ、重要なソリューションには積極的に投資しなければならない。事実、そうしなければ、逆境の中にあって競争優位に立つことはできない。その点、BTO softwareはIT投資予算に対し、常に最大の効果を求められるCIOを支援してきた豊富な実績がある。今後もソフトウェアライフサイクル全般の効率化をカバーできるHP BTO softwareを軸に、企業のIT戦略を包括的に支援していきたい」とまとめた。

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