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» 2009年02月19日 12時00分 UPDATE

現地からお届け!中国オフショア最新事情(13):金融危機でオフショア開発は停滞するか? (1/4)

内閣府が2月16日に発表した2008年10〜12月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で12.7%のマイナスと、35年ぶりのマイナス幅となった。また、1月に就任したオバマ米国大統領は、内需を重視し、オフショアに反対を表明している。このような状況でオフショア開発は停滞するのだろうか。今回はこのあたりの問題を考える。

[幸地司,アイコーチ株式会社]

 オフショア開発は、時として政治問題として扱われるなど人々を熱くさせます。

 2009年1月20日、オフショア先進国の米国では、大きい政府を志向する民主党のオバマ大統領が誕生しました。オバマ大統領は選挙期間中、従業員を解雇してBPO(Business Process Outsourcing)を推進する米国企業への減税の適用中止を公約に掲げており、国内の産業空洞化を促進するオフショア開発に否定的な見解を示しています。

米国与党の民主党
米国野党の共和党
大きな政府、オフショア反対、米国雇用重視 小さな政府、民間主導のオフショア促進OK

 当面の間は、「猫もしゃくしもオフショア開発」といった楽天的な発想は影を潜めるでしょう。一方で、オフショア開発を無期限停止するといった現実逃避の姿勢も認められません。多様化する世界を生き抜くオフショア開発プロフェッショナルは、海外発注に「賛成か反対か」という安易な二元論の危険性を認識すべきです。

 これからのキーワードは「統合」です。

 単なるバランス感覚ではなく、お互いの特徴を消す融合でもなく、高次元の統合を目指すべきです。例えば、「いますぐ、すべての日本企業が中国オフショア開発に取り組むべきか」との問いに対して、私の答えは「ノー」です。

 その根拠は、拙著『オフショア開発に失敗する方法』(幸地司=著/ソフト・リサーチ・センター/2008年)で詳しく分析しましたので、興味ある方は書籍をご参照ください。ここでは、2つの主要要因を挙げるにとどめます。

  1. 中国人プログラマは供給過剰状態である供給過剰状態である
  2. 中国人マネジメント層の人材不足は短期的に解決される見込みがない人材不足は短期的に解決される見込みがない

 従って、ある会社では「オフショア拡大」という意思決定が正解でも、別の会社では「オフショア発注は時期尚早」が合理的な経営判断だ、ということが起こり得るのです。

 昔から中国オフショア開発に挑戦してきた一部の企業は、その見返りとして十分な先行者利益を享受しています。ところが、何の準備もしないまま周囲に流されて、慌てて中国オフショア開発に着手しても、得られる価値は小さいのではないでしょうか。

 以上の背景を踏まえながら、今回はオバマ大統領の誕生や世界中を襲った金融危機がオフショア業界に与える影響を考察します。

 次いで、日本市場におけるオフショア開発の最新動向を分析します。

オバマ大統領誕生によるインドIT業界への影響は?

インドIT業界はオバマ新大統領の誕生を歓迎(インドソフトウエア・サービス協会2008/11/6)

 上述のように、オバマ大統領は、オフショア推進企業の租税優遇税制措置を見直すと公言しています。

 オバマ氏の米国大統領就任に際して、インドでは一斉に「インドオフショア業界への影響は小さい」と報じました。しかしながら、私にはインドIT業界の負け惜しみに聞こえます。なぜなら、解決に至る時間軸が不明りょうであり、なおかつ業績回復に至る根拠が示されていないからです。

 不況に陥った米国経済の回復が長引くことは、多くの専門家の一致した見解です。少なくとも、米国経済が今年から来年にかけて回復する兆しはないと予想されています。従って、米国に売り上げの7割を依存するインドも、来年急激に回復する見込みはないでしょう。さらに追い討ちをかけるように、インドIT大手の根幹を揺るがすスキャンダルも発覚しました。

 短期的には厳しい経営環境に直面するインドIT大手ですが、長期的には心配ありません。さすがに、中期的にはインドIT各社とも盛り返すでしょう。私は、以下の復活シナリオを想定しています。

オフショアリング業界の短期・中期・長期の展望
短期 ERPパッケージ導入、組み込み、間接業務のBPO路線で苦労する
中期 米国市場に本格参入、メキシコ・カナダに巨大パーク建設
長期 新モデルの創出(クラウド・SaaS型、ハード生産一体など)

 インドIT大手のWiproは、これからの新戦略として「米国で技術者を採用してインドで教育し、必要なら米国に戻す」という方針を発表しました。

 コスト削減の効果は期待できませんが、顧客と一緒にR&D分野を担当する、次世代アウトソーシングの新形態となりそうです。米国やその周辺で採用されるWipro従業員の大半は、インドや新興国からやってきた米国留学生でしょう。

 その意味ではWiproの新戦略でも、米国出身労働者の雇用が創出される効果は期待できません。この点は、労働者寄りの政策を好むオバマ大統領に嫌われるかもしれません。実際、労働者や低所得者の保護を訴えて当選したオバマ大統領は、就労ビザや米国永住権の取得について、どこまで保護政策を打ち出すかは現時点では不透明です。

 米国市場に売り上げの7割を依存するインドIT業界に影響があれば、時間差を経て必ず日本にも影響が及ぶでしょう。負の影響か、それとも正の影響かは現時点では未知数です。

 Wiproは過去数年間、米国やルーマニア、エジプトに大規模な拠点を建設しました。そこで、これまでにない新しい取り組みとして、顧客のデータセンター管理のためのマイクロセンサの設計を計画しています。

参考記事
“Outsource Locally” (The New York Times、2008/11/4)

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