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» 2009年03月31日 12時00分 UPDATE

これから始める進ちょく管理(3):EVMで進ちょく管理も予測も実現 (1/2)

今回は、アーンドバリューを利用したマネジメントを中心に、いかに進ちょくを管理できるか、さらに将来のプロジェクトの進ちょく度合いを予測する方法を解説する。

[高田淳志,オープントーン]

 これまで本連載では、工事進行基準の適用がプロジェクトマネジメントの現場、とりわけ「進ちょく管理」という側面にどのような影響を及ぼすのか、また、工事進行基準に対応した進ちょく管理を行うためにどのような考え方や知識が必要なのかという点についてのお話をしてきました。

 それでは、十分なQ(Quality:品質)、C(Cost:費用)、D(Delivery:納期)を達成できるような、もしくは、QCDを正確に予測しながらプロジェクトの進ちょく管理を行うためには、どのような取り組みをすればよいのでしょう?

 そこで今回から近年広く普及しつつある「アーンドバリュー(EV:Earned Value)」を用いたプロジェクトマネジメント(特に費用や納期に有効)技法である「アーンドバリュー・マネジメント(EVM:Earned Value Management)」についてお話しします。

 まずは、EVやEVMとはどういうものかといった知識的側面のご紹介を行ったうえで、次回の第4回(最終回)で、私自身がマイクロソフトのプロジェクト管理ソフトウェアである「Microsoft Office Projecrt(MS Project)」を使用して、どのようにEVMに取り組んでいるかといった実践的な側面を話していきたいと考えています。

EVM誕生の背景や発展の歴史

 アーンドバリューが、プロジェクトマネジメント技法の1つとして登場したのは40年ほど前のことになります。1962年のミニットマンミサイル開発計画で適用されたことに始まります。その後、米国連邦政府が発注する調達プロジェクトにおけるパフォーマンス計測・報告のために、米国国防総省が策定した基準「C/SCSC(コスト/スケジュール管理システム基準)」にも登場します。

 しかしそれより前、19世紀後半には工場生産管理の現場でアーンドバリューの原型となる概念が考え出され、適用されていたようです。実際、40年前にアーンドバリュー概念の導入に携わったあるメンバーは、「新たなアーンドバリュー概念は、生産管理技術から得た概念をソフトウェア開発のタスクに適用しただけだ」という趣旨の言葉を残していることからもそれがうかがえます。

 その後、アーンドバリューは、ANSI/EIA文書として発行され、今日に至っています。当初、EVM(アーンドバリューを用いたプロジェクトマネジメント)は米国国防総省が利用することを前提に設計されていましたので、「政府がやれというから取り組む」というのが民間企業にとっての取り組み動機だったと考えられます。

 しかし、アーンドバリューが1998年に「ANSI/EIA 748-1998」として規格化されたことにより、プロジェクトの種類にかかわらずプロジェクトマネージャが使用できるツールとして民間でのEVM普及に弾みが付いたであろうことは想像に難くありません。

 また、国内においても経済産業省が「情報システムに係る政府調達の基本指針」中の「契約」に係る項目の中で、「開発等の各工程においては、WBS(Work Breakdown Structure)を作成し、EVM等を活用すること等により、定期的な進ちょく管理及び報告を事業者に義務付け、実作業の進ちょくを管理する旨、契約書に明記する」のように、具体的に進ちょく管理方法として明記しています。

EVMでは、何をどのように求めるのか?

 EVMで使用する計測値には、次のようなものがあります。

略語
正式名称
訳語/概要
計算式
BAC Budget at Completion 完了までの当初予算
PV Planned Value 出来高計画値(計画時点で見積
もった予算コスト)
EV Earned Value 出来高実績値(現時点までに完成
した作業の予算コスト)
AC Actual Cost 出来高実績値(現時点までに完了
した作業の実コスト)
SV Scheduled Variance スケジュール差異 EV−PV
CV Cost Varianc コスト差異 EV−AC
SPI Schedule Performance
Index
スケジュール効率指数 EV÷PV
CPI Cost Performance
Index
コスト効率指数 EV÷AC
ETC Estimate To Complete 残作業コスト予測 (BAC−EV)÷CPI
EAC Estimate At Completio 完了時コスト予測 AC+ETC
VAC Variance At Completion 完了時コスト差異 BAC−EAC

 これらの計測値が、何を表すことになるのかを見ていきましょう。

 まず、BAC、PV、EV、ACの4項目は計算により算出されるものではなく、現実の数字ですから各数字を仮定してみましょう。次のような状況を基に考えてみることにします。

電子文書管理システム・製造工程
総予算 3000万円
所要期間 10カ月
開発モジュール数 50モジュール
8カ月終了時点での
当初計画値
40モジュールが製造完了しており、2400万円をコスト消化している予定である(説明を簡単にするため、各モジュール当たりの見積もり作業時間/予算コストは予算と同じものとする
8カ月終了時点での
状況報告
35モジュールが製造完了しており、2000万円をコスト消化した

 すると、この8カ月経過の時点でのBAC、PV、EV、ACの4項目の値は次のようになります。

 BAC=3000万円

 PV=2400万円(作業予定では、40モジュール分の2400万円が発生する計画だから)

 EV=2100万円(60万円×35モジュール:実際に製造完了したのは35モジュール、1モジュール当たりの予算は60万円だから)

 AC=2000万円

 この数字を使って、各計測値を算出しながら、各値の意味を考えてみます。

 SV=EV−PV=2100万円−2400万円=▲300万円

 SVは進ちょく状況を「コスト」の尺度で表したものです。2400万円分の作業完了が予定されていたのに、まだ2100万円分しか完了していない。 だから、300万円分作業が遅れているということを表します。

 CVは、完了作業についてのコスト差異です。

 CV=EV−AC=2100万円−2000万円=100万円

 35モジュールが製造完了しているので、本来は2100万円コスト消化しているはずが、実際には2000万円しかコスト消化していない。つまり、100万円アドバンテージのある状態です。

 SPIは、進ちょく状況が当初の予定通り進んでいるかどうかをかどうかを表します。

 SPI=EV÷PV=2100万円÷2400万円=0.875

 2400万円分の作業完了が予定されていたのに、まだ2100万円分しか完了していない。だから、予定に対する進ちょく割合としては0.875(87.5%)の完了状況だということを表します。

 CPIは、コスト効率が当初の予定通りかどうかを表します。

 CPI=EV/AC=2100万円÷2000万円=1.05

 2100万円コスト消化しているはずが、実際には2000万円しかコスト消化していない。つまり、予定に対するコスト効率は1.05(105%)で当初のコスト効率を上回っているということを示しています。

 ETC=(BAC−EV)÷CPI=(3000万円−2100万円)÷1=857万円

 ETCは、もしこのままの作業効率が維持された場合は、残作業を完了するまでにあと857万円を要することを示しています。

 EAC=AC+ETC=2000万円+857万円=2857万円

 EACは、もしこのままの作業効率が維持された場合は、2857万円のコストで完了することを示しています。

 VAC=BAC−EAC=3000万円−2857万円=143万円

 VACは文字通り、予算総コストと予測総コストの差異です。収支的に143万円プラスの状態でプロジェクトが完了できるであろうことを示しています。

 このような方法で、現状の実績値を基にして最終コスト予測をするための統計的手法なのです。

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