BIの限界と未来[Analysis]

» 2009年06月15日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 筆者はここ数年、BI(ビジネスインテリジェンス)DWH(データウェアハウス)に注目している。この場でも、BI業界DWH業界に関する記事も書かせて頂いたが、その後もBIとほかのアプリケーション/ミドルウェアとの連携が強化されている。また、業界変動によって、いまやBI専業の主要ベンダは、SASとインフォマティカ、マイクロストラテジーの3社になってしまった。SASの主力は統計解析分野なので、いわゆる一般的なBIベンダといえるのはインフォマティカとマイクロストラテジーだけかもしれない。今回は、激動しているBIの今後を考えた。

 2007年3月から11月にかけて、主要BIベンダだったハイペリオンがオラクルに、ビジネスオブジェクツがSAPに、コグノスがIBMにそれぞれ買収された。各BIベンダの業績はおおむね好調だったので、救済的な買収などではない。しかし、これらBIベンダが買収された背景には、そもそもBIというアプリケーションが持つ性質や限界があったからだろう。BIの定義は各社で異なっているので一概に定義することは難しいが、DBやDWH、各業務アプリケーションから取り込んだデータを分析し、ダッシュボードなどで表示するのが一般的だ。従って、BI単体では成り立たない。必ずデータソースを必要とするため、各種データソースとの連携が必須だ。

 また、BIを利用した後にも課題がある。データソースを分析し、気付きを得たとしても、その気付きを実行するプロセスが別途必要だ。例えば、コンビニエンスストアのアナリストが「店舗Aでは、雨が降ると豚まんが大量に売れて品切れになる」という事実に気付いたとしよう。恐らく、このアナリストはその気付きを上司や店舗Aの店長などに連絡し、「天気予報で、翌日が雨の場合には豚まんを多く仕入れるべき」というだろうが、その後は店長任せな部分がある。しかし、もしBIがPOSやSCMなどと連携しており、いくつかの承認を経ることでその気付きが自動的にシステムや実際の仕入れ状況へ反映されるようになれば、かなりの効率化や売上増につながるはずだ。

 つまり、BIには前後のつながりが必要だ。前段階ではデータソースとの連携が必須であり、後段階では各種業務システムと連携することで効果が増す。その部分に注目したオラクルやSAP、IBMが各BIベンダを買収し、自社の既存システムとの連携を強化している。すでにデータソース部分の連携はかなり強化されており、DWHベンダなどとの連携も強化されている。今後、強化されていくのは後段階の部分だ。例えば、SAPではBusinessObjectsで行った分析結果を、同社のERPやCRMといった業務アプリケーションと連携させるべく強化しているという。

 従来のBIというと、「見える化のためのツール」「分析結果が遅くて使う気にならない」「統計などを勉強したアナリストなどが使う難しいもの」「経営者向けのレポートを提出するためのもの」といったイメージが強い。しかし、ネティーザのようにハードウェアで高速化を図ったり、グリーンプラムに分散型で高速化を図るなど、DWHの高速化に伴ってクエリの処理速度が速まり、BIの操作性もかなり向上しているという。また、先日SAPが発表したBusinessObjects ExplorerのようにUIを改善し、思いついたキーワードを入力して、検索をしながら分析できるようなUIを実現したBIも登場している。

 繰り返しになるが、今後のBIのポイントは業務アプリケーションとの連携だ。現場の人間が「ふと思いついたこと」を入力・検索するだけで希望する分析が行え、それが自動的に実業務に反映されるのが理想だ。現時点で、ふと思いついたことを分析する部分まではかなり現実味を帯びてきた。今後はそれをいかに業務アプリケーションと連携させるかだ。ただし、現在の経済情勢を考えると、多大なコストを必要とする作り込みで実現するのではなく、業務アプリケーションとBIをつなげるだけで先述のコンビニエンスストアのような例を実現できるのが理想だ。

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