STEP1:場を作り、つなげる
プロジェクトでは、「参加者の数を増やし過ぎたために、参加者のコントロールができなくなり、いつまでも意思決定ができない」「参加者を絞りすぎたために、十分な意見収集ができず、プロジェクトの進むべき方向を見誤ってしまう」といった失敗が、発生しがちです。
このステップで、プロジェクトファシリテーターが最も注力しなければならないのは、「プロジェクトの状況に合わせて適切な参加者を選出し、参加させる」ことです。
それでは、ここから事例に基づいてお話ししましょう。
「Webサイトの再構築を支援してほしい」ある企業(以下、A社)の情報システム部長から依頼がありました。まずはプロジェクト状況のヒアリングをすると、以下の答えが返ってきました。
「デザイン一新、全面改修という方針は理解しましたが、まずは経営層がWebサイトに対して何を求めているかを明確にしましょう。今回のプロジェクトに関係する経営層で、特に現状サイトに『成果が見えない』という意見をお持ちの方を招集してください」
これが筆者が出した回答でした。
A社のケースでは、情報システム部はこれまでのリニューアルにおいて、できる範囲で予算を切り詰め、品質も維持していると自負しているにもかかわらず、経営からは「成果なし」と見られています。
デザインの一新、CMS導入といった手段が挙げられていますが、それによって、経営層のいう「成果」を実現できるかが不明確です。
まずは、経営層の想いをきちんと聞き出さないと、どんなに最新鋭のツールを使い、斬新なデザイン、高いメンテナンス性のサイトを構築したとしても、経営層は満足しないだろうと判断したわけです。
STEP2:意見を引き出す
このステップで重要になるのは、経営層やユーザー部門の方々が「いいたいことはいった」という実感が持てるようにすることです。意見を抽出し切れないままプロジェクトを進めても、経営層やユーザー部門の期待に応えきれないシステムを生み出してしまうからです。
しかし、「意見を抽出し切る」というのは簡単そうで、なかなかうまくいかないものです。「何が課題なのか?」「何を期待するか?」と単純に問いかけるだけでは、経営層やユーザー部門からの意見を引き出すことはできません。
意見を引き出すためには、プロジェクトファシリテーターが事前に仮説を立て、それに基づいて質問を繰り返す、といったアクションが有効です。
A社の例では、経営層が現状のWebサイトに対して「成果が上がっていない」と感じている理由について、以下の仮説をまず立てました。仮説を立てるに当たっては、現状のWebサイトの実態に合致しているかよりも、できるだけ多面的な視点で仮説を作ることにフォーカスしました。
などです。
これらの仮説に基づき質問を組み立て、さまざまな視座を経営層に提供することによって、Webサイトの現状に対する想いを、より多面的に引き出すことが可能となるわけです。
その結果、経営層の想いとして以下が挙げられました。
つまり、経営層のいう「成果」とは、Webサイトからの成約向上と、広告宣伝費を含む維持コストの削減だったわけです。
そして、プロジェクトは「Webサイトからの成約向上」と「維持コストの低減」という明確な目標に向けて動き出しました。
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