STEP3:抽出した意見を整理する
経営層やユーザー部門のプロジェクトに対する意見を、ひと通り抽出した後は、「挙がった意見を実現するための手段は何か?」という視点での整理に入ります。
ビジネス課題や業務課題を解決するには、プロセスの改善や組織体制の見直しなどIT以外の実現手段も必要となります。それを明確にすることをしないままプロジェクトを進めると、ITに対する期待値が増殖していき、出来上がったITに対して「何も解決できてない」と評価されてしまいます。
このような事態を避けるために、課題解決のためにITはどう貢献できるのか、IT以外にどのような実現手段が必要となるかを明確にするのがこのステップです。いいかえれば、ITに対する期待値コントロールのステップとなります。
A社の事例では「引き出し」の段階で、挙がった経営層が課題と捉えている事項について、原因(原因が不明確なものはその仮説)を分析し、「どのような解決手段があるのか」「解決につながる施策は何か」を明確にすることで抽出した意見の整理を実施しました。
以下がその整理結果の一部です。
図1.A社事例での意見整理結果サンプル |
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実現手段 |
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ヒアリング結果 |
発言者 |
原因 |
情
報
シ
ス
テ
ム |
戦
略 |
業
務
プ
ロ
セ
ス
・
ル
ー
ル |
組
織
・
リ
ソ
ー
ス |
その他 |
課題解決の方向性 |
WebサイトにはA社の看板という位置付けと同時に商品の販売チャネルの1つとして期待 |
●●専務 |
→A社におけるWebサイトの位置付けとする |
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- |
- |
- |
- |
- |
Webサイトからの成約が一向に伸びていない |
●●専務 |
【仮説】
サイトトップページからオンライン販売ページへの誘導ができていない |
○ |
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【情報システム】
・Webサイトトップページから直接オンライン販売ページへジャンプできるリンクを追加
・トップページのデザイン一部修正 |
【仮説】
オンライン販売ページでカタログ参照から成約までの階層が深く、顧客が途中で離脱してしまっている |
○ |
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【情報システム】
・オンライン販売ページの構成変更
・ワンクリック購入機能の追加 |
【仮説】
B社を始めとする競合他社の類似商品に対して、自社商品の優位性をWebサイトでアピールできていない |
○ |
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【情報システム】
・オンライン販売ページのカタログから商品紹介ページ(新規ページ)へリンク |
【仮説】
競合他社の類似製品よりも価格が高い |
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○ |
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【戦略】
・価格の見直し |
【仮説】
サイトを訪問する顧客(または顧客予備群)のニーズと販売商品が合致していない |
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○ |
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【戦略】
・商品戦略の見直し
・オンライン販売商品の充実 |
成約が伸びない原因を追究できないサイトそのものが問題 |
■■部長 |
Webサイトを訪れた顧客が、サイト上でどのような振る舞いをしているか把握する仕組みがない |
○ |
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【情報システム】
・サイトアナライザの導入(サイト訪問者のサイト上での振舞いを分析) |
Webサイトへの誘引策として各種広告を積極的に出しているが成約に結びついておらず、広告の効果が見えない |
●●専務 |
どの広告媒体からWebサイト訪問につながったかを把握する仕組みがない |
○ |
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○ |
【情報システム】
・サイトアナライザの導入(広告を出しているサイトから自社サイトにリーチしたかを分析)
・訪問者アンケートページ(新規ページ)の作成
【その他】
・紙媒体など分析が困難な広告をやめる |
【仮説】
自社Webサイトを訪問する顧客層と広告戦略が一致していない |
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○ |
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【戦略】
・広告戦略の見直し
・顧客分析+広告戦略の見直し |
日々のサイト更新も開発会社に外注しなければならず、微細な変更でも数百万円かかる現状は理解できない |
●●専務 |
情報システム部にサイト更新ができる人材が不足している |
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○ |
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【組織・リソース】
・情報システム部メンバのスキルアップ
・Webに詳しい人材の採用 |
サイト構造が複雑なため、やろうとしても簡単にはできない。手順が複雑 |
○ |
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○ |
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【情報システム】
・Webサイト構造の見直し
・CMS(コンテンツマネジメントシステム)の導入
・CMSに合わせたWebページデザインの見直し
【業務プロセス・ルール】
コンテンツ管理プロセスの見直し(CMSを導入するなら) |
サイト更新のために開発会社への依頼、見積もりなどを都度実施する必要があるため、情報の配信がタイムリーにできない |
■■部長 |
開発会社の見積もりが遅い |
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○ |
【その他】
・開発会社の変更
・内製化 |
むしろ見積もりを取得した後の社内プロセスがなかなか回らない |
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○ |
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【業務プロセス・ルール】
見積もり受領から発注までの業務プロセス見直し |
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STEP4:創造的な合意形成
「予算・期間ともに無限大。やれることはすべてやってみて、1つでも結果がでればそれでよし」などというプロジェクトはありえません。挙がった施策に優先順位を付け、最も効果が出るポイントに絞ってプロジェクトを実行する必要があるわけですが、この優先順位付けというのが困難を極めることを、皆さんも日々実感していると思います。
プロジェクトファシリテーターのスキルが最も求められるのがこのステップです。
「挙がった施策に優先順位を付けます。どれが重要ですか?」
「そんなの全部だよ、全部」
合意形成のステップを混沌とさせるこのような事態を避けるためには、「評価軸」「評価基準」「評価後の取捨選択基準」を事前に決定しておく必要があります。
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