情シスはプロジェクトファシリテーターであれ!情シスをもっと強くしよう(2)(1/4 ページ)

基幹システムの構築から運用保守まで多岐に渡る作業に日々追われる身でありながら、ユーザー部門からは叩かれ、経営層からも認められていない情報システム部門は多い。その原因には経営上の狙いやユーザー部門の業務課題を解決できていないシステムの存在がある。今回はこの問題の解決策を考える。

» 2009年06月29日 12時00分 公開
[植松 隆,@IT]

ゴールのギャップが情報システム部をでっち化する

われわれ情報システム部は、まるででっちのようだ。業務の根幹を担うシステムの構築・管理・運用・保守など多岐に渡る作業に日々追われる身でありながら、ユーザー部門からは叩かれ、経営層からも認められていない。責められることはあれども、感謝やその活動が評価されることなどないからだ。

 これはある1部上場企業の情報システム部長の言葉です。

 「でっち」というのは、皆さんもご存じのように、商人や職人の家で、家事・賄い、雑用などに従事する下働きの人たちのことです。つまり、地位の低い雑用係ということを意味しています。いい方はさまざまですが、「ユーザー部門からの不満」や「経営層からの不信感」などについて情報システム部門の方々がこぼしているのを、筆者はよく聞きます。

 このような情報システム部門がでっち化している会社には、「ゴールのギャップ」つまり、経営上の狙いやユーザー部門の業務課題を解決できていないシステムが必ず存在しています。

 今日の企業は、情報システムなしにその活動を継続することはできませんから、それを支える情報システム部門は、企業の中で最も重要な組織の1つであるはずです。にもかかわらず、「ユーザー部門からは叩かれ、経営層にも認められていない」といった状況に陥っているのは、経営層やユーザー部門が考えるビジネスの成功や業務の最適化に、ITが貢献できていないということの裏返しだからです。

ゴールのギャップを埋めるのは情報システム部門

 それではゴールのギャップを埋める、つまり経営上の狙いを確実に満たすITを作るにはどうすればよいのでしょうか?

 よく聞く指針は、「経営視点からのIT戦略を立てそれを実現する計画を立てるべき」というものです。確かにそのことに意味がないと筆者も思いませんが、多くの企業でこのようなアプローチで作られた計画書は、実行されることなくキャビネットの奥で眠っている状態です。立派な計画はそれを確実に実行することで、初めて魂が入ります。そして、「計画の確実な実行」で重要な働きをするのは、情報システム部門なのです。

 経営やユーザー部門の課題を解決できるITを提供できている会社の情報システム部門は、でっち化することはありません。

 そのような会社では、情報システム部門主導で「経営層やユーザー部門が抱える課題や”ありたい姿”をどうすれば解決・実現できるか」「そこに情報システム(部門)がどのような貢献ができるか」が提示され、実現されているからです。

 以下では、実際の事例をベースにして、経営層やユーザー部門へ貢献する情報システム部門の姿について記述します。

プロジェクトファシリテーターとは

 情報システム部門主導で「経営層やユーザー部門が抱える課題や“ありたい姿”をどうすれば解決・実現できるか」「そこに情報システム(部門)がどのような貢献ができるか」を提示していくために、筆者が提案したいのは「情報システム部門はプロジェクトをファシリテートする、プロジェクトファシリテーターであるべきだ」という考え方です。

 ファシリテーション(Facilitation)というと、「会議の手法」という狭い範囲のイメージを抱かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで述べる「プロジェクトをファシリテートする」というのは、それとはまったくスケールが異なる話です。

 「プロジェクトをファシリテートする」ということは、企業の戦略を立案する経営層、企業戦略を実現する業務を担うユーザー部門、企業戦略と業務を支援する情報システム部門が一堂に会するプロジェクトが、その目的を達成し、最大の効果を生み出せるように導くということです。

 この活動を担うプロジェクトファシリテーターは、企業活動そのものの成否を握っているといっても過言ではありません。

 プロジェクトファシリテーターが担う役割には、「場を作り、つなげる」「意見を引き出す」「抽出された意見を整理する」「創造的な合意形成に導く」があります。

 これらの活動をITプロジェクトでどのように実施していくかを、プロジェクトの実例を使って紹介します。事例は筆者がコンサルタントとして外部的な立場でプロジェクトファシリテーターの役割を担った例ですが、これから紹介するさまざまな活動は、すべて情報システム部門が独力で進めることのできるものです。

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