確かな予測、経営層の需給調整参画がSCM成功のカギ日本オラクル、需要管理製品「Oracle Demantra 7.3」を発表

» 2010年04月08日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本オラクルは4月8日、需要管理製品の最新版「Oracle Demantra 7.3」を発表した。需要予測エンジンの処理速度向上や予測機能の拡充に加え、以前からニーズの高かった予実管理製品「Oracle Hyperion Planning」との連携強化による財務情報と製販情報の統合管理などを実現、日々変動する市場動向に迅速に対応できる製販計画立案を支援するという。

経営層のスピーディな意思決定が不可欠

 2000年以降、市場の急速な多極化により、「日本や中国で作り、日本や米国、欧州で売る」というスタイルが崩壊し、日本、中国、北米、インド、東南アジアなどが製造拠点であるとともに市場でもあるという複雑な状況になっている。これに伴いグローバルSCMも複雑化し、それぞれ特性の異なる市場動向を俊敏にとらえつつ、ニーズのある製品を、最適なタイミングで、無駄なく市場に供給しなければならない。

 この実現のカギとなるのが、情報収集とそれに基づく経営判断のスピードだ。同社 アプリケーション事業統括本部の岡田行秀氏は、需給管理で陥りがちな課題として、「拠点単位による非効率的な需給調整」「需要変動に生産調整が追いつかず、生産品と売りたい製品がマッチしないなど、販売計画に全社合意が取れていないこと」「需給調整の計画・立案に時間がかかること」「予算管理と販売管理が連携していないなど、販売計画と売上予算が乖離していること」の4つを指摘。

写真 アプリケーション事業統括本部 SCM/PLM本部 ソリューション1部 シニアディレクターの岡田行秀氏

 これらの改善策として、「需給調整の一元化による全体最適化」「需要に基づいた販売計画」「COOの参画による日次での需給調整管理」「COO/CFOの参画による予算計画と販売計画の週次管理」という4つの対策を紹介した。

 「中でも特に重要なのは、経営層が需給調整プロセスに参画すること。現場の情報をいち早くつかみ、日次での需給調整を部門横断で行う、予算計画と販売計画を週次で同期させる――これらを実現できる環境を整備することが、変動が激しい環境にあるいま、製販計画調整活動の最重要なポイントであり、Oracle Demantraは、そうした要件を満たす機能を持っている」と解説した。

変動し続ける市場にきめ細かく対応

 Oracle Demantraは6つのモジュールからなる。中でも、需要予測を行う「Oracle Demantra Demand Management」と、販売促進の計画・シミュレーションと効果分析などを行う「Oracle Demantra Predictive Trade Planning」の2つを基本モジュールとし、これらをデータベースと連携、必要な情報を吸い上げ、需給調整の専門スタッフが任意に情報を閲覧・分析したうえで、蓄積できる仕組みとしている。

 一方、データベースはアプリケーションサーバとも連携。販売拠点、物流拠点など現場側のユーザーに対しては、Web環境を使って各社に必要な情報だけを提供したり、逆に入力してもらったりすることができる仕組みとしている。このように、データベースを挟んで、サプライチェーンの各プレイヤーがスムーズに情報連携できるよう配慮している点が本製品の1つの特徴だ。

写真 Oracle Demantra Demand Managementの画面イメージ。シンプルな画面で現場の状況をあらゆる視点から即座に把握できる

 こうした中、今回はOracle Demantra Demand Managementの予測機能を強化した。1つは需要予測のモデリング手法を追加したこと。従来は、複数の市場があった場合、各市場の需要動向を統合・集約して、需要傾向の全体像を分析するモデリング手法を採用してきたが、今回はこれに加え、各市場の需要特性の把握に重点を置いて分析し、より実際の市場動向に即した確度の高いパターンを導出できる「Pooled Time Series Modeling」と呼ぶ手法を追加した。

 2つ目は、受注生産品の需要予測機能の追加だ。これまでは、例えば自動車のオプション品など、受注生産品の需要予測は対象外としていたが、今回から「製品別」「オプション別」「製品・オプション別」という3つの軸での予測が可能となった。これは「ユーザーからの要望が特に強かった機能の1つ」だという。

 そして3つ目は予実管理製品「Oracle Hyperion Planning」との連携強化だ。「これにより、事業計画、財務計画と製販計画をスムーズに連携できる。すなわち、経営層が製販計画立案に参画できる環境が整備されることで、全社合意に基づいた、より効果的・効率的なオペレーションが可能になる」(岡田氏)

写真 分析手法として「ベイジアンアプローチ」を採用し、確度の高い予測を実現

 分析手法として「ベイジアンアプローチ」を採用している点もポイントだ。これにより、販社などからの需要情報と過去の販売実績に基づいて、事業別、地域別、製品別といったさまざまな視点から、複数の予測モデルを任意に組み合わせた分析が行えるという。また、分析手法の学習機能も装備しており、過去の予測実績と実際の状況に応じて予測モデルの組み合わせを自動的に変更、より精度の高い予測を行うという。

 価格はライセンス制で最小構成2000万円から。岡田氏は「基本的には年商300億円以上の製造業や流通・小売業をメインターゲットとしているが、需要変動が激しい中、生産と販売のきめ細かな連携が求められる業種を幅広くサポートできる」と話している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ