BABOKバージョン2を解説する本連載の最終回となる今回は、「基礎コンピテンシ」の知識エリアを紹介するほか、ビジネスアナリシスの資格認定制度などを紹介する。
本連載が開始された2009年夏から比べるとBABOK(Business Analysis Body Of Knowledge)に対する注目度も高くなり、さまざまなメディアで目にすることが多くなってきました。
さて、最終回の今回は、本連載で紹介する最後の知識エリア(Knowledge Area)である「基礎コンピテンシ」とビジネスアナリシスに関わる資格認定について、ご紹介したいと思います。
これまで紹介してきたとおり、BABOKではビジネスアナリシスを遂行するために重要な諸活動を、「知識エリア」として定義しています。ただし、ビジネスアナリシスは広い知識や経験を必要とする活動であるため、BABOKで定義されている知識エリアを誰もが最初から効果的に実行できるとは限りません。
そこでBABOKでは、ビジネスアナリストに求められるスキルセットを一つの独立した知識エリアとして定義しています。これが、今回ご紹介する「基礎コンピテンシ(Underlying Competencies)」です。
コンピテンシとは、手本となるようなモデル的な人物の行動特性を指します。
ビジネスアナリシス活動を実施していく中で、特に成果を上げているような人物を特定し、その行動を分析して参考にすることによって、私たちも同じような成果を上げることが期待できます。従って、コンピテンシの明文化とその共有は、属人的な個人の能力を超えて、その組織全体の能力向上につながります。
「基礎コンピテンシ」の知識エリアでは、ビジネスアナリストが備えるべき基本的な能力や知識、資質が、以下の6つのグループで分類され、整理されています。
ビジネスアナリストは、組織の目標達成のために最適なソリューションを導き出し、成果を上げるために、さまざまなステークホルダーのリエゾン(調整役)の役割を果たさなければなりません。「基礎コンピテンシ」には、そのために必要な能力が網羅的に示されています。
それでは、図3に挙げられているコンピテンシの概要を見ていくことにしましょう。
さまざまな要求を体系的に整理し、多角的にソリューションを生み出していくためには、物事を正確に把握していく分析的思考や、新たなアイデアを積極的に生み出していく創造的思考が必要となります。また、複数のソリューションから最適解を導くために問題解決能力も欠かせません。
ビジネスアナリシスの活動において、情報やタスクの効果的な管理や利害関係の衝突を調整できなくては、複数のステークホルダーをまとめていくことは難しいでしょう。そのためには、ビジネスアナリストが率先して適切な倫理観や自己管理を行動で示さなくてはなりません。
要求を理解し、実行可能なソリューションを提案するためには、一般的なビジネス知識を持っておく必要があります。詳細な知識や知見は、活動を通して各ステークホルダーから獲得することができます。
しかし、それらを聞き出し整理するためにも、ビジネスアナリストには最低限の知識が求められます。その必要な知識として、「ビジネス(財務、人事、購買、製造、販売など)」「業界」「組織」「(ITを含めた)ソリューション」が取り上げられています。
ビジネスアナリストがリエゾンの役割を果たすためには、情報を確実に伝達できなくてはなりません。その伝達の手段として口頭伝達や文章伝達のスキルが欠かせません。
また伝達は単に伝えれば良いというものではなく、きちんと相手に伝わり、理解されたかどうかが重要となります。ときには理解度を検証したり、状況に応じて教えることも必要となります。
ビジネスアナリシスの活動中には、利害関係の衝突やアイデアを創出するような場面に何度も遭遇します。そのようなときに、ステークホルダー間の関係を良好に保ち、ビジネスアナリシスを円滑に推進するためのファシリテーションやリーダーシップ、チームワークといった人間関係のスキルが必要になります。
ビジネスアナリシスの活動を円滑に進めるためには、要求を文書化し追跡できるようにしたり、それらをステークホルダー間で共有したり、バージョンや構成を管理する必要があります。ビジネスアナリストにはこうしたときに活用できるツールの知識とスキルが求められます。
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