働き方、ビジネスの在り方を革新できるSIPスマホ時代、SIPの可能性を再考する(3)(1/2 ページ)

コミュニケーションの在り方は、自社の収益やブランド、働きやすさを向上させる大きなカギ。コミュニケーションを革新できるSIPを利用している企業には、さまざまな可能性が開けている。

» 2012年03月21日 12時00分 公開
[平野 淳(日本アバイア ),@IT]

SIPを利用できる環境は身近にたくさんある

 第2回ではコンタクトセンターにおけるSIP活用の意義について解説した。今回は「オフィス内、あるいは企業間コラボレーションの基盤」としてのSIPのメリットを紹介する。

 まずSIPがオフィス環境にもたらすメリットを考える前に、注目すべき事実がある。それはSIPを利用した端末は、皆さんが思っている以上に普及している点だ。実際、SIPが利用できる端末は多い。例えば、電話機の形をしたSIP電話以外にも、PCをはじめ、iPhone、iPad、Android端末、タブレットなどが挙げられる。また、一般家庭に浸透しつつある薄型テレビやゲーム機(IP接続があるもの)もSIP端末として活躍するようになると筆者は考えている。

 そして注目すべきは、市場のマルチメディア化が進むにつれて、SIP経由のコミュニケーションが「SIP電話機」のみならず、以上のようなさまざまな「SIP端末」で行われる可能性があることだ。

 実際、「電話は固定電話でかけるもの」という固定観念は、携帯電話が普及した1990年代にすでになくなっている。そして現在、いつでも手軽にインターネットに接続できるスマートデバイスが急速に浸透している。

ALT 図1 米アップル 2011年3Q(4月〜6月)決算によると、iPhone 4sは2030万台、iPadは925万台を販売するなど、スマートデバイスの急速な浸透に伴い、SIPを利用できる環境はますます拡大している

 こうした通信環境にある中、ベビーブーマーの子供たちに当たるエコーブーマー(ミレニアルズとも呼ばれる世代)たちにとって、リアルタイムに行う通話は、固定電話でも携帯電話でもない、SIPコミュニケーションが可能なインターネットテレビやゲーム機などから当たり前に行われるようになる。そして近い将来、彼らの世代がビジネスシーンの中心になれば、SIPを基盤にした通信インフラ構築は、オフィス環境整備の必須条件になると予想されるのだ。

 逆に、そうしたインフラ整備の重要性を認識しておかなければ、いまやビジネスに不可欠な通信手段となっている電子メールについて、「オフィスに導入してもメリットがない」と考えていた1990年代の一部経営層と同じような過ちを犯すことになるだろう。

「コンテキスト」に基づく“気の利いた”コミュニケーションが可能に

 ところで、第2回で解説したように、SIPを利用すると通話やビデオ、インスタントメッセージなど、複数のメディアを同時に利用できるようになるメリットがある。ただ、こう言うと「複数のメディアを個別に利用できる」と考える向きが多いが、それは誤解であり、SIPのポイントは「複数のメディアを組み合わせて一元的に利用できる」ことにある。加えて、SIPを使った通信基盤なら、複数のメディアを通じて行った会議や通話に関連のある「コンテキスト」を記録し、ユーザーにリアルタイムに提供できるという大きなメリットがあるのだ。

 この「コンテキスト」とは、「関連のあるさまざまな形態の情報」を指す。具体的には、プレゼン資料、過去のメール、企業ディレクトリなどだ。

 例えば、あなたが数日前に会社の同僚と電話で打ち合わせをした際、プレゼン資料やドキュメントを電子メールで相手に送ったとする。そして今、その相手からの電話を取ると同時に、数日前に自分がメールで送り、相手と一緒に見たプレゼン資料とドキュメント、そしてその相手が所属する部署の組織図などが自動的にポップアップされたら、便利だと感じるのではないだろうか? マルチディアのセッションを効率的かつ一元的にコントロールできるSIPは、こうしたコンテキストの利用を可能にするのだ。

ALT 図2 マルチモードコミュニケーションの画面イメージ。実現基盤となるSIPは、社内外のコミュニケーションを物理的制約から解放するとともに、「コンテキスト」を記録・表示できることで、いわゆる“気の利いた”対応を支援する

 ちなみに米国では、1990年代から最近にかけて、多くの企業の顧客対応部門が、電話で対応を行う「コールセンター」から、電話や電子メール、チャットなど、複数の通信メディアでのコンタクトに対応する「マルチチャネルコンタクトセンター」に移行してきた。これが2010年から、以上のように関連情報を記録し、リアルタイムに参照して正確かつホスピタリティの高い対応を行う「コンテキストセンター」に着実に移行しつつあるのだ。

 そしてこのトレンドはオフィス環境にも急速に浸透しつつある。業務で使う各種メディアをSIP基盤でシステム的に関連付けし、社員の業務効率を向上させているのである。むろん、ここでも電話、メール、ビデオ、資料、ボイスメッセージなどを“一元的に利用できる”SIPの利点が効率化のポイントになっている。

 これらをバラバラに運用し、無理やり連携させても、扱いにくいため、業務効率が向上するどころかかえって不便だし、運用コストもかさんでしまう。事実、“ユニファイドコミュニケーション”が“バラバラコミュニケーション”になっているケースも少なくない。SIPはそうした課題を、第1回で述べたように低コストかつ迅速に解消し、利用サイド、運用サイドの両者に大きく寄与するのである。

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