働き方、ビジネスの在り方を革新できるSIPスマホ時代、SIPの可能性を再考する(3)(2/2 ページ)

» 2012年03月21日 12時00分 公開
[平野 淳(日本アバイア ),@IT]
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すでに実現可能な 「バーチャルスペースとオフィスの融合」

 さて、以上でSIPの効用についてはご理解いただけたのではないだろうか。そこで本連載の最後に、少々近未来的に感じるかもしれないが、「バーチャルスペースとオフィス環境の融合」がもたらす、効率化の可能性について紹介したいと思う。

 以下で紹介する例はSIPを使わなくても実現可能だが、SIPを利用することで導入コストの低減や運用管理の効率化、拡張性の向上など、複数の面でメリットが得られる。

 この「バーチャルスペースとオフィスの融合」とは、具体的には、自分のアバターが、バーチャルスペースでネットワーク越しに他のアバターとコミュニケーションをとることを可能にするものだ。このオンラインゲームでは当たり前に行われていることが、オフィス環境やコンタクトセンターでも行われるようになる可能性は十分にある。

 実際、オフィス環境のSIP電話から、バーチャルスペースにいるアバターに連絡をしたり、その反対にバーチャルスペースからオフィスにいる同僚に電話やビデオチャットで連絡して、資料をストリーミングで共有したりすることが、現在のSIP技術ですでに可能になっているのだ。

ALT 図3  SIP基盤を使えば、バーチャルスペースでネットワーク越しに他のアバターとコミュニケーションをとることも可能だ。このオンラインゲームでは当たり前に行われていることが、オフィス環境やコンタクトセンターでも行われるようになる

 では、そんなことをしてどのようなメリットがあるのだろうか? まず、アバター間で交わした会話や資料の履歴を全て残せる点でセキュリティ面で利がある。

 バーチャルオフィスに存在する特定のエリア(例えば会議室やトレーニングルーム)へのアクセスを、アバターベースで管理することもできる。もちろん、実際のオフィスでもアクセスカードなどを使ってそうした管理をすることは可能だが、バーチャルオフィスでは、特定の会議室やトレーニングルームに同室することが好ましくないアバターを瞬時に追い出したり、反対に呼び出したりすることができる。大勢の社員を一つの場所に集める必要がある場合も、オフィスや会議スペースを借りるコストを省けるなど、さまざまなメリットがある。

 図3のようなイメージを見ると、中には「SFの世界のようだ」と感じる読者もいるかもしれない。だが、子どものころからマルチメディア対応の端末に慣れ親しんで育ってきたミレニアルズにとっては、バーチャルと実世界が融合した空間はそれほど不自然なものには感じないはずだ。実際、私がシリコンバレーの高校生たちに向けた会社見学で、こうしたバーチャル空間の利用デモを行った際、彼らが「こんな職場環境があったら絶対に便利だし、利用したい!」と興奮していたのが印象的だった。

 今後は、オンラインバーチャルモールなど、「オンラインショッピング環境を提供するコンタクトセンター」が登場する可能性があると私は感じている。オンラインショッピングを1人で楽しむのではなく、バーチャルモール内にいるアバター同士で会話や相談をしながらショッピングを楽しむのである。

 そうなれば流通・小売り、製造、金融など、多方面の企業に新たなビジネスチャンスが生まれることは言うまでもない。コミュニケーションや情報共有はビジネスの核となるものだが、その在り方を合理的に革新できるSIPは、市場動向変化が加速し、働き方に対する価値観も多様化している今、企業が勝ち残る上で不可欠なテクノロジの1つと言えるのである。


 さて、いかがだろう。本連載第1回では、相手に分かりやすく伝わりやすいコミュニケーションを図る上では、複数のメディアを個別に利用する形態より、複数のメディアを一元的に管理・活用するマルチモードの方が適していることと、SIPがマルチメディア環境の構築・運用に有利なプロトコルであることを紹介した。

 第2回では、コンタクトセンターにおけるSIP活用の意義を解説をした。ポイントは、SIPを活用しなくても、マルチメディアコンタクトセンターを構築することはできるが、SIPを使えば導入・運用コストを大幅に削減できる点だ。

 そして今回は、SIPがわれわれの生活に浸透する環境がすでに整っていることと、次世代のビジネスパーソンにとって、SIPを使ったマルチモードのコミュニケーションや、バーチャルオフィスの活用は、ごく当たり前のものとして受け入れられるであろう可能性を示した。

 これまで述べてきたように、SIPは決して縁遠いものだったり、将来的なものだったりするわけではない。コミュニケーションを重視する企業は、すでに自社のシステム基盤に導入し、今現在もそのメリットを享受しているテクノロジだ。ソーシャルメディアの浸透、在宅勤務やワークスタイル変革など、コミュニケーションの在り方が再考されている今、もう一度自社のコミュニケーション基盤を見直してみてはいかがだろう。本連載がSIP活用の可能性を考える一助になれば幸いである。

著者紹介

▼著者名 平野 淳(ひらの あつし)

Avaya Executive Briefer. 1989年に渡米し、数学(BS)、応用統計学(MS)をジョージア大学で取得後、1996年シリコンバレーのCRMソフトウェア会社にソフトウェア開発者として入社。その後M&Aを経て、2001年アバイア設立当時から同社で勤務。2004年に日本アバイアへ移籍/帰国し 、2011年に米国アバイアに再異動するまでソリューションマーケティング部長として勤務。CRM Demo&ConferenceやInteropなどで数多く公演し、現在はシリコンバレーでエグゼクティブ・ブリーフィング・プログラムを担当している。

関連リンク:日本アバイア


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