ITリーダーは、コミュニケーションのサイロ化を解消せよガートナーと考える「明日のITイノベーターへ」(7)(2/3 ページ)

» 2012年04月18日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

「とりあえず始めてみる」のがソーシャルメディア導入のコツ

三木 ソーシャルメディアを活用するためには、これまでの電話や電子メールのコミュニケーションとはまったく異質のリテラシが要求されますよね。この点が導入・活用の障壁になることはないのでしょうか。

志賀氏 20年前に電子メールが登場した際にも、同じことが言われていましたよね。「電話とはまったく違う。果たして使いこなせるだろうか?」と。でも今や電子メールは、ビジネスコミュニケーションの中心的な手段としてすっかり定着しています。これと同じことが今、ソーシャルメディアでも起こっているのだと思います。そもそもベースはコンシューマ向けの技術ですから、多くの人が直感的に使いこなせるようになるはずです。

 また、今の若い人たちはプライベートでも当たり前にFacebookを使いこなす世代ですから、ビジネスでの利用にも自然となじめるはずです。確かに、年配の方々はそうはいかないでしょうが、今はまだ過渡期ですから、「使ってみたい人から、徐々にやっていきましょう」という程度で十分だと思います。そうやってできるところから始めていって、小さな成功事例が出てくれば、それにつられておのずと利用者も増えてくるはずです。やはりソーシャルメディアは、ユーザーがその気にならないとなかなか普及しませんからね。

「多人数でディスカッションをしたり、意見を集約するような用途に電子メールは向いていない。ソーシャルメディアのオープンな場で、ステークホルダーが全員集まって議論することで、より質の高いアウトプットが生まれる」――志賀嘉津士

 逆に言えば、全社員にトレーニングを受けさせて、一斉に強制的に使わせるというやり方だと、うまくいかないかもしれません。そもそも、ソーシャルメディアの文化自体が、「使いたい人が、おのおの自由に使う」というものですから。

三木 つまり、ソーシャルメディアの価値をいち早く見出した企業から導入・活用が進んでいくということですね。

志賀氏 その通りです。言い方を変えれば、ソーシャルメディアの価値を理解できる経営者が率いる企業と、そうでない企業との間に差が生まれてくるということです。理解できない経営者はすぐ、「ROIを出せ! これを導入したら何%売り上げが上がるんだ?」と言い出しますが、ROIを割り出すには時間もコストも掛かりますから、むしろはっきり言ってやらない方がいい。そもそも、ソーシャルメディアの導入には高いコストは掛かりませんし、やろうと思えばコストゼロでも可能です。

「ソーシャルメディア型のコラボレーションツールの導入によって、どれだけの企業が具体的な効果を出せるのか。ROIを問われたとき、自信を持って答えられるものなのか。使いこなすためのユーザーのリテラシの問題も含めて、導入の障壁は低いとは言えないのではないか」――三木泉

 感覚的にその良さを理解できて、「じゃあ、やろう!」と判断できる経営者の下でないとソーシャルメディアの活用は進みませんし、今はそういう経営スタイルが必要とされているのではないでしょうか。

三木 取引先やパートナー企業との間でコミュニティを形成するという活用法も、実際にはごく少数のパートナーとビジネスを行っているBtoB企業であればやりやすいのかもしれません。しかし、数多くのパートナーと多岐にわたってビジネスを展開している企業ではなかなか着手しにくいかもしれませんね。

志賀氏 私は必ずしもそうとは限らないと思います。むしろ企業規模が大きいほどソーシャルメディアは有効だと考えています。ソーシャルメディアの面白さは、ユーザーがおのおの勝手にアイデアを出し合うことで、自然発生的に情報の価値が高まっていくところにあります。従って、初めから使い方や適用範囲を規定してしまっては、価値が半減してしまうと思うのです。

 得てして、現場の創意工夫やノウハウというのは属人化してしまっていて、可視化されていません。それが、「とりあえずソーシャルを使ってみてよ」となると、案外面白いネタがぽんぽん出てくるんです。集合知というものは、分母が大きければ大きいほど良いので、規模が大きな企業ほどソーシャルメディアの利用価値が高いと思います。また近年では、買収によって巨大化した企業が、異なるコミュニケーション基盤を統一するためにソーシャルメディアを活用する事例なども見られます。

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