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» 2012年05月31日 12時00分 公開

インタビュー:スマートデバイス業務利用の勘所  ガリバーに聞く、スマートデバイス導入成功の秘訣

[唐沢正和,@IT]

ガリバーインターナショナルのスマートデバイス戦略を探る

 中古車の買い取り・販売を手掛けるガリバーインターナショナル。同社ではモバイルワークスタイルの変革を目指し、他社に先駆けてiPadの導入に着手。現在では、全国各拠点の営業スタッフをはじめ、事業全体にiPadが浸透し、買い取り・販売プロセス全体の効率化を実現している。

 iPadの導入事例は年々増えているが、そうした中でも、全社的に導入して大きな効果を挙げているケースとしては代表的な成功事例と言えるだろう。

 だが、周知の通り、デバイスやシステムのメリットを引き出すためには、企業内への浸透に向けたさまざまな施策や配慮が不可欠となる。同社の場合、どのような点が成功のポイントとなったのか?――“スマートデバイス活用によるモバイルワークスタイル改革のポイント”について、同社 経営企画室 クラウドプロジェクトリーダーの椛田泰行氏に話を聞いた。

ツールありきではなく、ビジョンありき

 ガリバーインターナショナルが、iPad導入のプロジェクトをスタートしたのは2010年6月。「このプロジェクトは、iPadを導入することが目的ではなく、あくまでモバイルワークスタイルの変革を目指したものだった」と、椛田氏は狙いを語る。

ガリバーインターナショナル 経営企画室 クラウドプロジェクトリーダーの椛田泰行氏 ガリバーインターナショナル 経営企画室 クラウドプロジェクトリーダーの椛田泰行氏

 「当社の営業スタッフは、優れた営業力を備え、組織面の統率も取れているが、その一方で、“自ら考えて動く”創造的なビジネスは不得意な側面があった。

 そこで『2000人の脳みそを動かす』ことをコンセプトに掲げ、その取り組みの一環として、モバイルワークスタイルの変革にも着手した。これを実現するツールとして、ベストフィットしたのがiPadだった」と、椛田氏は“ツールありき”でなく、「まず営業活動を活性化させようという目的があり、その手段としてiPadを選択したことを強調する。

 同社は現在、全社で約2000台のiPadを導入。各営業拠点では、従来型の大きなショールームに中古車を展示するのではなく、中古車の詳細情報をデータ化して収集し、iPadからオンラインで確認できるようにしている。また、販売スタッフは、営業先でiPadを使って中古車の写真を拡大したり、画像や説明のページをめくったりしながら、1人1人の顧客のニーズに沿った中古車情報をリアルタイムに提示することが可能となった。これにより、買い取りと販売のプロセス全体の効率化に成功しているという。

 ただ、ここに至るまでの道のりは、決して平坦なものではなかったようだ。「導入プロジェクトの開始当初は、iPadの導入に当たって参考にできる事例はほとんどなかった。そのため、最初から完成形を目指すのではなく、米アップルの担当者に直接協力してもらうなど、試行錯誤を繰り返しながら、導入を進めていった」と、椛田氏は当時の苦労を振り返る。

 「導入の際、特に気を付けたのは運用・管理面だ。MDM(モバイルデバイス管理)ツールについても、当時は海外製品がほとんどで、日本の企業文化にフィットするものがなかった。そのため、アイキューブドシステムズと協力して独自にMDMを開発した」という。

 独自開発したMDMには、同社がこれまでノートPCで実践していたモバイルデバイス運用のノウハウを集約。さらに、ツールの機能だけに頼るのではなく、「デバイスを紛失するパターンにはどのようなものがあるのか」「万一、紛失したときにはどう対処すべきか」といった、モバイルデバイスを扱う上でのリテラシやモラルまで含めて、一歩踏み込んだ運用設計に力を注いだ。さらに「iPadを本格導入する前に、まず経営層にiPhoneを自費で購入してもらい、率先してモバイルワークスタイルの改革に取り組んでもらった」と椛田氏。このことも、iPadの全社展開を成功に導く下地となったと言えよう。

iPad用アプリを用意し、どれを使うかはユーザーにゆだねる

 モバイルワークスタイルの改革に向けて、iPad上で提供している業務アプリは現在8種類。「買い取り」「販売」「顧客情報の閲覧」「顧客情報の登録」「プレゼンテーション」「顧客のつながりを可視化」「車の位置確認」「大型展示場向け」と、用途に特化したアプリを提供しているのが特徴だ。そして、これらのうち、どのアプリを業務に使うかについては、現場の営業スタッフ1人1人の判断にゆだねているという。

 「iPadのアプリを無理やり使ってもらおうとは思っていない。人によってはノートPCの方が使いやすいケースもある。強制しなければ使ってもらえないようなアプリは、いずれ破たんすると考えている」と、椛田氏は力を込める。こうした、iPadによって安全に業務効率化を図るインフラを整備し、その上で自分のスタイルに合わせて自由に使いこなしてほしいといったコンセプトが、デバイスの自然な浸透と積極的な活用を下支えしているのだろう。

「現在もゴールではない。改善を続けていく」と椛田氏 「現在もゴールではない。改善を続けていく」と椛田氏

 なお、椛田氏は、6月7日(木)に開催する「第17回 @IT情報マネジメントカンファレンス “活用・運用”をセットで学ぶスマートデバイス業務利用の勘所」に登壇する予定だ。ここでは紹介し切れなかった詳細な話や、導入・浸透に当たってのリアルなこぼれ話、その解決策などを当日紹介するという。興味がある方は、ぜひ聴講してみてはいかがだろう。

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