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「求めたのは還流阻止。CDでは他に方法がなかった」――レコ協に聞く第3回:輸入音楽CDは買えなくなるのか?(2/2 ページ)

» 2004年05月17日 20時41分 公開
[渡邊宏, 中川純一,ITmedia]
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 レコ協ではこの点に関し、依田巽会長(エイベックス代表取締役会長兼社長)が否定の意思表示(平成16年4月15日 文教科学委員会)を行い、確認書を提出していることから、そうした事態は起こりえないと主張する。

 また、5月7日付で、協会およびユニバーサル ミュージック、東芝EMI、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナーミュージック・ジャパン、BMGファンハウス、日本レコード商業組合の連名で日本の洋楽ファンの皆様へと題して、これまで通り輸入盤の提供を続けるとコメントしている。

 現時点では、規制の対象と明確にされているのは、中国などアジア圏でライセンス生産された安価な洋楽CDが日本に還流してきた場合で、これは邦楽CDに準じて輸入権を行使するという。こう見ると、米欧などで生産された洋楽CDについては、従来どおりの並行輸入販売が可能であるかのように見える。

 しかし、実際にはこの点については疑問が残る。というのは、全米レコード協会(RIAA)と国際レコード産業連盟(IFPI)は、パブリックコメントの中で「並行輸入は音楽産業の製造・配給体系を弱体化させる」「並行輸入は製品のマーケティングやプロモーションへの便乗を可能にする」といった具合に、並行輸入そのものに否定的な見解を示しているからだ。「平行輸入は独立した各小売店ではなく国際展開している小売チェーンに優勢をもたらす」といった具合に、RIAAの並行輸入否定論は、“アジアなどでのライセンス生産”といったカッコ付きのものではない。

 5月7日付けの5大メジャーの日本関連会社を含む表明でも、「私たちは、欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に何ら不利益、不自由を与えることなく、今後ともこのような状況を維持し、さらに多くの洋楽レコードを提供してまいります」と述べているだけ。並行輸入を許容するかどうかについては、実は明確に触れられていない。

 また依田会長も参議院文教科学委員会での質問に、「5大メジャーの日本での関連会社はライセンサーに洋楽レコードの直輸入禁止を働きかける考えはない」と明言しているが、逆に5大メジャーの本社サイドについては、「欧米諸国で製造されたいわゆる洋楽レコードの直輸入を還流防止措置によって禁止する考えのない旨を日本から本国に確認をしておるところ」「ファイブメジャー各社が欧米で発売するレコードに日本での販売禁止の表示をして権利行使をする考えはないことを明確に確認している」と述べるにとどまっている。

 DVDで導入されたリージョンコードを見れば分かるように、ある国ではその国の物価に見合った価格でソフトを販売したいというのがコンテンツ制作サイドの本音だ。コンテンツ産業は、コストのほとんどを人件費が占めるからだ。

 平行輸入さえストップすれば、「国内盤と輸入盤を手がけているレーベルは輸入盤を出す必要がなくなってしまう」(HEADZ代表 佐々木敦氏)。理由は簡単。単価を高く設定できる国内盤の方が、利幅が大きいからだ。

 米5大メジャーの日本関連会社が直輸入盤販売を直ぐにストップすることはさすがにないだろう。だが、米本社の意向が変われば、日本の関連会社の保証など当てにすることはできない。これは外資系企業に携わった経験のある人であれば直ぐに分かることだろう。

 RIAAのコメントを見る限り、日本でも輸入権が確立されれば、並行輸入について厳しいコントロールが課せられる可能性が高い。それが、結果として、洋楽についても直輸入盤という選択肢を次第に狭めらていくことは十分ありえる。DVDのリージョンコード――地域ごとに販売を切り分けるというお手本はすでにあり、CDの“次”に進むべき方向はそちらにある、とレコード業界が認識していることは間違いないのだから。

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