「ハイブリッドレコーダーの場合、大容量のHDDには多くの番組を録画でき、EPGの文字情報も扱える。このため2003年頃には、絵(画面サムネイル)よりも番組名などの文字情報による一覧性と、それを利用したタイトル検索などに対するニーズが高まってきました」
「ユーザー層も変化しました。たとえばアンテナ線も接続できないという初心者層が増え、たとえば“ファイナライズ”なんていうDVDレコーダーの用語は当然わからない。GUIの抜本的な見直しが急務でした」
「開発プロジェクトの発足は2004年1月。ソフト開発部門やデザイナーはもちろん、企画、ユーザビリティ・ラボを含めた横断的なプロジェクトとして、さらに東大の研究室にも参加してもらいました」
――東大との協業に至った経緯を教えて下さい。
「2003年1月に開催されたRCAST主催のカンファレンスにパイオニアが参加したのがきっかけです。デジタル家電のユーザーインタフェースを開発している研究室と協議し、先端研究の成果を具現化してユーザーフレンドリーな商品を市場に提案するという目的が一致しました」
「プロジェクト開始までの1年間、当時のDVDレコーダーを評価してもらったのですが、開発者が気が付かなかった部分をいくつも指摘されました。たとえば、“文字が大き過ぎる”という点。われわれは、文字を大きくすれば見やすいと考えていたわけですが、認知心理学の見地では“単に大きければ良いという訳ではない”。(GUI内の)ボタンと余白の割合など、さまざまな要素が絡み合って見やすい画面が出来上がるわけです。非常に細かい部分まで、指摘してもらいました」
――新しいGUIの開発プロジェクトはどのように進めたのでしょう?
「まず、ユーザーから寄せられた要望を徹底的に洗い出すところから始めました。たとえば“タイトル名の一覧がほしい”“録画タイトルの録画モードを確認したい”“コマンド欄との行き来がわずらわしい”などといった意見をまとめ、ニーズの把握に務めました」
「次に“使用シーン”の書き出しです。一般的に作る側は、画面内に“機能”を整理したがるものですが、ユーザーが使うときに不便では仕方ありません。“録画した番組を見る/消す”といった基本的な操作から“DVDへダビング”まで、考えられる利用シーンをすべて書き出し、必要な操作の細分化と再構築を繰り返しました」
「実際には、手書きのシナリオをハサミで切って、ぺたぺたと紙に貼っていくんです。1つの操作に対して何パターンも作りました。たとえば単に“再生”といってもシチュエーションはさまざまです。録画ファイルが少ないときは番組一覧の画面だけで済みますが、ファイルが多いと検索画面が必要になったりと、ユーザーの要求にも違いが出てくるでしょう? しかし、単に画面や操作ステップを増やすと複雑になってしまう。ターゲットユーザーに合わせて利用シーンに優先順位を付けて絞り込み、他(の利用シーン)との整合性を考慮しながら操作の流れを徹底的に検証しました」
「次に、紙にピクセルベースの画面デザインを書き、さまざまな要素を加味して採用するものを絞り込みます。スペースは限られているので、1つのパーツ、あるいは1つの文字が入るかどうかの勝負です。その1文字が使い勝手を左右する大きな要素にもなるので、検討を繰り返しつつ何十枚もスケッチを書きました。ただ、この時点では、実際の画面は1つも作っていません」
――なぜ作らなかったのですか?
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