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BSデジタルの「マス排」撤廃をどう考えるか西正(2/2 ページ)

» 2005年11月25日 20時31分 公開
[西正,ITmedia]
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 もはや単純にマス排を緩和するとか、撤廃するとかを超えて、両者の経営統合を認めるべきだという議論になってくるのである。

 総務省として民放キー局各社に対し、1局2波を認めるかどうかが問われることになるが、収入形態も性格も違うとは言え、NHKが地上波2波、BS3波を認められていることからすれば、それと同じ形にするだけのことであるとも言える。

 かつては民放キー局が全国波を持つことについて、系列のローカル局が警戒感を強めるのではないかということが懸念された。しかし、2000年12月のスタート時こそ、民放キー局側も系列ローカル局に対しては十分に配慮して運営していく姿勢を見せる必要があったようだが、その後の経営状態などを見ていると、もはやローカル局側から警戒されることは、ほとんどなくなった感が強い。

 むしろ、BS局の経営強化の一環として増資が必要だということになった際に、出資を求められるのは勘弁してほしいというのが現状のローカル局のスタンスであると言っても過言ではない。

 また、1局2波を認めることにより、地上波が若者向けに偏りすぎているという批判をかわす効果も期待できる。地上波はあくまでもローカル免許である。若者が多くいる都市部では地上波で若者向けを意識した番組を続けながら、若者の少ない地域においては、よりその地域の視聴者の平均年齢に合わせた番組を編成することも可能になる。そうした区分けを一律にし過ぎる弊害を避ける意味で、番組の大半を制作しているキー局の判断によって、全国波であるBS放送の編成を工夫していくことも可能になる。

 マス排の緩和・撤廃を検討するというのなら、そうした本質論に立って議論が進められないと、無意味に議事進行がなされるだけで、「徐々に緩和」といった「姿勢」だけを示す行政がなされがちになる。

 なお、1局2波を認めるようにしたとしても、それは統合を認めるというだけで、統合を強制するものではない。当該民放キー局の判断によっては、あくまでも別会社として運営していくことも可能とするべきである。

 2007年以降に空くBS9チャンネルには、三井物産のような有力な新規参入事業者が名乗りを上げている。BSデジタル放送を準基幹放送として活気付けていくためには、真の活性化を目指す規制緩和・撤廃が議論されるべきである。形式的な対応に終始していたのでは、1000万件を超えた先の未来を語る資格がないと言われざるを得ないのではなかろうか。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「IT vs 放送 次世代メディアビジネスの攻防」(日経BP社)、「視聴スタイルとビジネスモデル」(日刊工業新聞社)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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