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ローカル民放、衛星配信、縦の統合西正(1/2 ページ)

» 2006年05月18日 01時27分 公開
[西正,ITmedia]

県域免許についての考え方

 2011年のアナログ放送全廃に向けて、条件不利地域を残すことのないよう、衛星やIP方式による再送信が補完的措置として検討されている。IP方式による再送信の議論の中では、民放ローカル局の存在意義のような点にまで言及されているが、地域からの情報発信拠点としてのローカル局の責務は大きい。

 衛星であってもIP方式であっても、県域免許は守られる方向で検討が進められているが、地域からの情報発信が減りつつある今、次なる展開についても前向きに検討していく必要がある。

 そもそも衛星やIP方式を使えば、無理に県域免許を守らなくても、キー局等による全国一律の放送が可能ではないかという暴論も聞かれる。しかしながら、地域ニュースは地元に暮らす人たちに受け入れられており、最も視聴率を稼ぎだしているという実態もある。

 そのため、ローカル局の存在意義は十分に認められるのだが、豊富な番組制作資金を投入できるキー局と比べると、番組の魅力という点では勝負にならない。キー局とローカル局は系列関係にあるケースが大半なので、非常に多くの番組が、キー局から送られてくるものを流すことになる。そこに情報の中央集権化が進みやすい理由があるだけに、デジタル化投資で厳しい経営を強いられる中、ローカル局がどこまで地域情報の発信に注力できるかが生き残りのためのポイントになろう。

 ただ、衛星やIP方式による再送信を補完的手段として使うということは、あくまでもデジタル放送時代に新たな難視聴地域、いわゆる条件不利地域を解消すべきだという了解はなされていると考えられる。

 ブロードバンドの敷設計画は、あくまで通信会社側の経営判断による。それだけに依存していては、補完的手段としては不十分である。離島であろうと山の奥深くであろうと、放送を届けるためには、衛星という選択肢が無くなることはない。

 衛星にはBSとCSがあり、明らかにCSを使う方がコストは安い。ただ、NHKのように公共放送としては何よりも「全国に遍く」が要求されている以上、降雨減衰対策を施すことのできるBSを使いたいという主張は納得できる。

 民放であっても公共の資源である電波の使用を寡占的に認められているという経緯からすれば、条件不利地域の解消に向けた努力を行ってほしいものだ。ただ、条件不利地域を無くせない最大の原因が、ローカル局にとってのデジタル化投資の重さにあることからすれば、衛星の中継器などは安価な方がよいに決まっている。

 そうであればCSを使えばよい。CSの場合には降雨減衰の影響が出やすいが、今のスカパーのチャンネルを視聴していても、雨・風の影響で止まることが頻繁に起こるわけではない。あのレベルの受信環境であれば、平時における再送信手段としては十分だと考えられる。ただ、台風情報などの報道義務が重いのが地上波であるだけに、全く放送が届かなくても困る。NHKがBSを使うことによって、少なくともNHKの放送だけは届けられるようにしておくことは正しい。それで十分だと言えないこともない。

 つまり、民放がCSを使って再送信を行うという選択肢も決して間違いとは言えない。ローカル局の実情を考えれば、平時にはちゃんと見られるということまでで十分なのではなかろうか。

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