コラム
» 2007年06月11日 08時00分 UPDATE

小寺信良:知財推進計画が目指す「コンテンツ亡国ニッポン」 (1/3)

先日発表された「知的財産推進計画2007」を見ると、「著作権法の非親告罪化」という動きがある。「創造」に「模倣」という要素が含まれる以上、これはクリエーターをゆっくりと殺していく悪法になりかねない。

[小寺信良,ITmedia]

 5月31日に政府が発表した「知的財産推進計画2007」。この知財推進計画が初めて策定されたのが2003年、小泉再改造内閣発足後のことであるから、今年で5年目を迎えることになる。もういい加減スローガンだけでなく、何かの結果を出さなければならない時期に来たわけである。

 今年の推進計画は、知財戦略本部のサイトからPDFで誰でもダウンロード(PDFファイル)できる。この文章は、これまでさまざまジャンルで問題となってきた事柄の詰め合わせパックのようなことになっているわけだが、全体を俯瞰してみてつくづく感じるのは、これは文化を道連れにした経済政策なのだなぁという思いだ。

 推進計画では特許問題に多くのページを割いているが、それは主にハードウェア産業に関わることである。一方でソフトウェア産業推進ということを考えると、当然著作権関連の整備がテーマとなる。個人的に意外だったのは、いわゆる海賊版対策を、これもまた大きな柱としていることだ。

 これまでも海賊版という問題が記事として取り上げられたことはないではなかったが、それほど大きな話だったか? という疑問がある。むしろ補償金問題やコピーワンスといったことのほうが、世間の興味・関心が高かったように思う。

 今回は、推進計画内における海賊版対策を、文化という側面から検討してみたい。

海賊版規制の行き着く先

 海賊版対策の詳細は、推進計画2007の54ページ以降で述べられている。本来この手の対策は、大きく2つに分かれると思う。ひとつは模造品、つまり物理物のコピー商品であったり、ブランド偽装品に対するもの。もうひとつが、プログラムやコンテンツなどのソフトウェアに対するものだ。推進計画では双方とも海賊版として一緒くたにされており、その対策法も当てはまるもの、当てはまらないものが出てきている。

 もう少し詳しく述べるならば、模造品の多くは「世界の工場」との異名を取る中国を始めとするアジア諸国で生産され、日本に入り込む例が多い。これはどちらかと言えば、特許や商標に関わる問題だ。税関における水際作戦も、功を奏するかもしれない。

 一方でソフトウェアに関しては、海外からの流入ものは少ない、というかほとんど成立しないのではないかと思われる。というのも日本の消費者には、言葉の壁という仮想防壁があるからだ。映画やコンピュータプログラムは、特にその傾向が強い。唯一輸入品でも関係ないのは、音楽ぐらいだろうか。

 海賊版ソフトウェアの海外流入が考えにくいもうひとつの点は、それらがデジタル化されていることである。わざわざ物理物として輸入しなくても、ネット流通で十分なのだ。しかもDRMのようなプロテクトを外す技術は、日本と近隣のアジア諸国の間で大きな差があるとは思えない。やるヤツはどこの国でもやるし、やらないやつの多い少ないは、啓蒙によって左右されるからである。今から検討するなら、流入よりも流出対策のほうが重要だろう。

 61ページからは、国内での取り締まり強化策が提案されている。その筆頭は、ネットオークション上の模造品・海賊版取引防止策である。ここでは具体的な法整備については書かれていないが、「知的創造サイクル専門調査会」の第8回で配布された資料(PDFファイル)の19ページに、一例が出ている。

 これによれば、どうも現状は権利者から削除要請があった場合に、出品者に対しての損害補償の問題があって、オークション事業者が7日間は削除できないという事情があるようだ。しかしテンポの速いネットオークションでは、7日もあれば容易に取引は成立してしまうだろう。

 これに対抗する策として、米国のNotice&Takedown制度が引き合いに出されている。この制度のメリットは、権利者が一定の要件を備えた侵害通知を提出することで、即座に出展を削除しても損害補償の責務が発生しないという点である。またオークション事業者自身が、侵害の判断をする責務から解放される。

 じゃあその一定の要件とは何かといったことまではさっぱりわからないが、ちょっと懸念するのが、その要件の中に「なんとか協会」のような権利団体のお墨付きがなければならないといったことがあるのならば問題である。すなわちそういう団体に加盟していない著作者の著作物は、保護に値しないという制度になってしまう危険性があるからだ。

著作権法が親告罪ではなくなる?

 さて、そんな国内取り締まり強化策の中で、もっとも見逃せないことがサラッと書いてある。63ページの「著作権法における親告罪を見直す」という項目である。

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