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音を追求するとシンプルになる?――デノンがプリメインアンプの新フラグシップモデル「PMA-SX1」を投入(1/2 ページ)

» 2014年09月01日 10時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 デノンは9月1日、約6年ぶりとなるプリメインアンプの最上位機「PMA-SX1」を発表した。回路構成と外観の両面で“シンプル”を突き詰めた「デノン渾身(こんしん)の作。先代PMA-SXをも凌駕する新たなフラグシップ」(同社)だ。10月中旬に発売する予定で、価格は58万円(税別)。

デノン「PMA-SX1」

 外観はいたってシンプル。アルミ製フロントパネルは最も厚い部分で15ミリ厚に達するというもので、その中央に大きなボリュームノブがある。電源を入れると琥珀(こはく)色のLEDが点灯し、ノブの輪郭を浮き立たせる仕組みだ。その横には入力切替のセレクターノブと電源ボタンのみ。トーンコントロールやヘッドフォン出力など、常識とされていた装備をあえて外した。昨年秋に発売したSACDプレーヤー「DCD-SX1」とはデザイン的にもベストマッチするという。

新製品の企画意図とアンプ回路の概要

 中身もシンプルだ。「アンプにおいて繊細な表現力を可能にするには、できるだけシンプルな構成にすることが理想だ。しかし、シンプルな回路で大出力を得るには、桁外れの大電流を扱える素子が必要になる」という。デノンは1993年発売の「POA-S1」開発時に、その理想に合致する「UHC(Ulrta High Current) MOS FET」によるシングルプッシュプル回路を開発し、20年間にわたってブラッシュアップしてきた。その最新世代となるAdvanced UHC MOSシングルプッシュプル回路に伝統の全段バランス構成のアンプ回路を組み合わせたのが「PMA-SX1」となる。

 「新採用のUHC-MOS FETは、従来に比べて定格電流が30アンペアから60アンペアに、瞬時電流は120アンペアから240アンペアへと倍増され、一段と余裕のある再生を実現している。さらにカスコードブートストラップ接続により、アンプ回路全体の動作を安定させている」(同社)。

 回路構成はPMA-SXを踏襲しているが、さらにシンプルになった。プリアウトは非搭載。トーンコントロールやバランスコントロールも廃し、音楽信号の経路となる内部配線を最短化。OFC(無酸素銅)を使い、信号伝送時のロスを抑える。バランス/アンバランスの入力はともに変換回路を用いず、直接バランス構成の電圧増幅段に入力される“バランスダイレクト設計”とした。定格出力は50ワット+50ワット(8オーム)。実用最大出力は100ワット+100ワット(4オーム)。

社内では通称「巨人のボリューム」と呼ばれている大きなボリュームノブ。琥珀色のイルミネーションは、明るめ、暗め、オフの3段階で調整できる(左)。中身もシンプル(右)

 PMA-SX1には、その出力に見合わないほど大きな電源トランスが搭載されている。従来のSシリーズ同様、砂型アルミ鋳物のケースにレジン(樹脂素材)を充填してトランスが発生する振動を排除。磁気シールドで漏洩磁束に起因する筐体(きょうたい)内のノイズを抑制する。「アンプの動作とは、入力信号を電源回路から供給される電流に“拡大コピー”するようなもの。電源電流が汚れていると、その汚れの上にコピーされてしまい、正確な増幅ができない。シンプルでパワーのとれる電源が“要”になる」。

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