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「シンセサイザーの父」ボブ・モーグ博士が死去

» 2005年08月22日 17時04分 公開
[ITmedia]

 楽器としてのシンセサイザーの創始者であるロバート・A・モーグ博士が8月21日、脳腫瘍で死去した。71歳。

 モーグ博士の名前を冠したMoogシンセサイザーは「あらゆる音を出せる」ことを売り物に、あらゆる音楽家に愛用され、電子音楽のみならず、クラシック、ロック、ジャズをはじめとするほぼすべての音楽を変容させていった。

 シンセサイザーは、電圧制御でオシレーター、フィルター、アンプをコントロールすることによりさまざまな電子音を生み出す原理に基づき、さまざまな楽器音の模倣から、現実にはありえない音の創出、そしてシーケンサーを使った、人の手では不可能なサウンドを作り出すことを可能にした。

 1964年には最初のモジュラー型シンセサイザーである“Modular Moog”を披露したが、最初にこのサウンドが一般に知られたのはウェンディー(当時はウォルター)・カルロスの「スイッチト・オン・バッハ」(1968年)。それ以来、多重録音によるクラシック音楽の構築では冨田勲が、ポピュラーミュージックへの導入ではビートルズの「アビー・ロード」(1969年)における“Here Comes the Sun”や“Maxwell's Silver Hammer”、そしてリアルタイムでの音色変更やパフォーマンスの可能性ではエマーソン・レイク&パーマーでのキース・エマーソンが宣伝塔となった。

 音色の創出だけでなく、Moogシンセサイザーは、コントローラにおいても画期的なアイデアを生み出している。ピッチをコントロールするために用意されたリボン・コントローラや、ホイールは多くの競合製品でも使われ、ホイールのピッチベンドを使うことによりギター並みの表現力を備えたヤン・ハマーなどのパフォーマーを生み出した。

 現在でもMoogサウンドを再現したいというミュージシャンは多く、ラックマウントMinimoogやソフトウェアシンセサイザーが販売されている。

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