ITmedia NEWS >

2006年もOpteronの性能優位は動かない――HP幹部

» 2005年10月19日 18時03分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米AMDのデュアルコアOpteronプロセッサは今年、競合するIntelのシングルコアXeonに対して性能的に大きく優位に立ってきた。Intelは先ごろ同社初のサーバ向けデュアルコアチップをリリースし、来年初めにも新製品を投入する予定だが、どちらもOpteronに勝ることはないだろう。Hewlett-Packard(HP)の幹部が10月18日、フロリダ州オーランドで開催のHP Technology Forum 2005でユーザーにそう語った。

 Intelは「Paxville」のコードネームで呼ばれていたデュアルコアサーバチップの投入を当初予定の来年第1四半期から前倒しし、10月10日にサンフランシスコでのイベントで同チップを正式発表した。だが、Intelは来年第1四半期に2ソケットサーバ向けの「Dempsey」と4ソケットサーバ向けの「Tulsa」(いずれもコードネーム)をリリースするまで、デュアルコアサーバ向け市場で注目を呼ぶことはなさそうだ。

 これらのチップはPaxvilleよりもメモリとの通信が高速で、仮想化技術のハードウェアサポートなどの機能も備える。だが、高性能を求める顧客は、HPの4プロセッササーバ「ProLiant DL585」のようなデュアルコアOpteronベースのサーバを採用しようとするだろう、とHPのProLiantサーバ担当プログラムマネジャー、マリオ・クーパー氏は語った。

 OpteronはHypertransportインターコネクトと統合メモリコントローラにより、Dempseyに対しては若干の、Tulsaに対しては大きな優位を保つだろうと、クーパー氏はデュアルコアプロセッサの詳しい情報を求めるHPのユーザーとパートナーに語った。

 HPは、IntelとAMDの両方のプロセッサを搭載したサーバを販売する数少ない大手ベンダーの1社として独自の立場を取っている。IBMは多数のIntelベースサーバとともにAMDベースサーバを2機種販売しているが、HPほど積極的にはAMDベースサーバを売り込んでいない。

 IntelはDempseyとTulsaで、プロセッサとシステムのほかの要素との接続を高速化するが、Opteronがメインメモリと通信する速度はクロック周波数と同じであり、Opteronの最速チップの場合は2.4GHzだと、HPのProLiantサーバ担当グループマネジャーのスティーブ・カミングズ氏は説明した。これによってシングルコアOpteronはシングルコアXeonよりも優位に立つが、Opteronはデュアルコアの場合、チップ上の両方のコアを直接接続する高速リンクの恩恵も受けるという。Intelのデュアルコアプロセッサ上の2つのコアがデータを交換するには、プロセッサ外部を経由してデータを送信しなければならないからだ。

 Opteronのこうした直接接続は、SAPなどのベンダーが提供するERPアプリケーションなど、メモリとの高速なやり取りに依存するあらゆるアプリケーションのパフォーマンスを向上させる、とクーパー氏は述べた。実際、HPでは、SAPアプリケーションがデュアルコアOpteronサーバ上で、シングルコアサーバ上と比べて74%高いパフォーマンスを実現したというデータを持っているという。

 Intelがデュアルプロセッササーバ向けに提供するデュアルコアXeonであるDempseyの性能は、Opteronに迫るものになるだろうとクーパー氏は見る。だが、AMDのIntelに対する設計上の強みは4プロセッササーバでより発揮され、Opteron 800シリーズは来年初めの時点で、IntelのTulsaプロセッサに対して明確な優位性を持つだろうと同氏は述べた。

 一方、Intelが新しいアーキテクチャに基づくプロセッサを投入し始める来年末の段階で、両社の競争の行方がどうなるかはまだ予断を許さないとクーパー氏は語る。IntelはHPに予備的な性能データを提供しているが、HPは新アーキテクチャに基づくサーバプロセッサの第1弾となる見込みの「Woodcrest」をまだ事前検証していないという。

 IntelとAMDは性能競争を繰り広げているが、18日のHP Technology Forumでの技術説明会の模様は、多くの企業は極限の性能を求めてはいないことを関係者に思い出させた。クーパー氏とカミングズ氏はユーザーやパートナーから出た基本的な質問をさばいていったが、その質問者がデュアルコアチップの概念になじみがないのは明らかだった。IntelやAMD、HPなどの企業が何年も前から宣伝してきたにもかかわらずだ。

 HPのパートナーのNetOne Groupで管理サービス担当ディレクターを務めるデリク・ハフステーダー氏は、同氏の中小規模企業顧客のほとんどは、ファイルサーバやプリントサーバといった基本的機能を果たすのに十分な程度の性能の低価格サーバにまったく満足していると語る。

 「私の顧客はユーザー数が50〜500人くらいだ。デュアルコアサーバを売り込んだりしたら、取引してもらえなくなってしまう」とハフステーダー氏。IntelとAMDはデュアルコア化を積極的に推進しており、いずれはそうした企業も移行することになるのは必至だ。だが、ハフステーダー氏は当分の間、デュアルコアプロセッサが主流になるのを待ってから、ベンダーを選択するよう顧客にアドバイスするつもりだ。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.