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mixiのコミュニティー広告、成功の秘けつは

» 2006年10月20日 19時27分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やブログを活用して商品の口コミを広げ、マーケティングに生かそうという取り組みが進んでいる。運営を失敗して“炎上”する例もあるが、成功例も多い。

 スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー!)と大塚製薬はそれぞれ、日本最大のSNS「mixi」にコミュニティー広告を出稿。サービスや商品を宣伝し、一定の成果をあげた。両社の担当者が「WPC TOKYO 2006」で講演し、mixi活用の狙いや、効果的な活用法について語った。

15日で1万人参加 スカパー!大成功の理由

 スカパー!は、5月29日から6月14日にかけ、サッカー・ワールドカップ日本代表を応援する公認コミュニティーを設立。スカパー!のワールドカップ全試合無料放送の連動企画として盛り上げ、認知度向上を狙った。

 コミュニティー名は「集え!12番目の選手たち」。参加者を12番目の選手に見立て、背番号12番のサムライブルーのユニフォーム画像を提供してプロフィール画像を変更するよう呼びかけたり、掲示板上で日本代表の試合中に掲示板でリアルタイムに語り合ってもらった。

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 コミュニティー参加人数はオープン15日で1万人を超え、mixi公認コミュニティーとしては最速の大台突破記録を樹立。最大参加者数は1万1768人だった。掲示板のコメント数は、日本対クロアチア戦をリアルタイムに応援する掲示板が最多で、113分間で3000もの書き込みがあり、これも公認コミュニティー最多記録だった。

 「ブランドを押しつけないことが成功への近道」(河口さん)――スカパー・マーケティング企画営業部の河口祐毅さんは、コミュニティーではスカパー!の名やサービスを極力表に出さず、参加者に楽しんでもらう仕掛け作りに注力したことが、成功につながったと語る。

 参加者の70%がプロフィール画像をユニフォームに変更。これが集客力を高めた。プロフィール画像は、マイミクシィ(mixi上でリンクし合っている知り合い)のトップページや、各コミュニティーの参加メンバー一覧などにも掲載され、mixi上で露出の機会が多い。マイミクの画像が変わっていると気付いたユーザーが興味を持ち、コミュニティーの存在を知り、自分も参加してプロフィール画像を変える――そんなサイクルが見られたという。

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 ユニフォーム画像のネーム部分に自分の名前などを入れ込むことも流行し、画像加工技術を持たないユーザーが、技術のあるユーザー(“名前入れ職人”)に加工を依頼するという動きもあった。これを見てスカパー!は、加工依頼専用掲示板を作成。この掲示板にはのべ約1万件の書き込みがあり、約5000人の参加者が“職人”に名前を入れてもらったという。

 ユニフォームをPDFに出力し、紙細工にできる仕組みも提供した。「ネット上だけでなく、リアルで実体験できる仕組みがあれば、コミュニティーはさらに盛り上がる可能性がある」と河口さんは指摘している。

限られた予算で口コミ効果を

 大塚製薬は、7月から飲料「ファイブミニ」のコミュニティーを運営し、成果を挙げてきた。

 ファイブミニは、テレビなどでマス広告を集中投入できるほど予算がない上、薬事法の関係で、健康効果を直接的にうたった宣伝も行いづらかったこともあり、ネットを活用した口コミ広告の展開を決めた、という。

 ファイブミニのターゲットは20〜30代女性で、mixiのコアユーザーに近い。ユーザーが自発的に設立したファイブミニコミュニティーが従来からあったことも、mixi活用の決め手になった。

 設立したコミュニティーは、「美人占い」などのコンテンツを更新する「ファイバー美人大学」と、体内の悪玉菌「体内怪人」が暴れる「体内怪人ファンコミュ!」。美人大学を体内怪人が襲う、といった交流イベントも展開し、相乗効果を狙った。

 コミュニティー設立前は、1日当たり数百もなかったというキャンペーン特設サイトのユニークユーザー数は10〜20倍に増加。口コミが広がり、検索サービスで「体内怪人」の検索結果数は数百倍に増えたという。

 キャンペーン期間がmixi上場と重なり、コミュニティー広告の事例として紹介されたことも2次的に効果を高めた。9月以降、交通広告や雑誌広告などネット以外でも広告展開を行った結果、今は1日あたり1万人前後のアクセスがあるという。

 「SNSで口コミを引き起こし、情報を温めた上で他のメディアを絡めると効果が高まる」と同社製品部 オロナミンC・ファイブミニプロダクトマーケティングマネージャーの井上将司さんは語る。

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 ただコミュニティーという“ハコ”を用意するだけでは、効果は期待できないとする。「企業側からの情報を一方的に提供するだけではすぐに飽きられる。参加者が広告と分かっていながら楽しめる工夫をこらす必要がある」(井上さん)

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