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「YouTubeは世界共通語」――角川会長の考える“次の著作権”(2/2 ページ)

» 2007年12月07日 00時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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著作権の完全管理で「不法コピーの巣窟」を脱却

画像 「著作権法は権利者やコンテンツ事業者を守りすぎているという批判がある。私的使用のための複製について定めた30条は、数少ない、国民のための条文だ」と角川会長

 YouTubeなど動画投稿サイトは、著作権を侵害した動画を排除する技術の開発を続けており、角川もそれをサポートしている。「権利者がYouTubeに文句を言い、それによってYouTubeが“知恵を付けている”段階。近い将来、技術革新が著作権の完全管理を可能にする」

 これを前提に角川会長は、著作権法に「3次利用権」として「閲覧権」という新たな権利を設定するよう提案する。ネット上でコンテンツをダウンロードしたりストリーミングで閲覧する行為についての権利を設定しよう――という考え方だ。

 「2次利用よりももっと軽い権利で、コンテンツを自由に楽しんでもらいながら、安価な閲覧料を徴収するなどし、著作者にも一定のお金が入るような仕組み」を想定しているといい、「超流通」の考え方に当たるという。「著作権法は著作権者やコンテンツ事業者を保護しすぎているという批判もあるが、こういう仕組みができて始めて、著作者・コンテンツ権利者・国民の3者間でwin-winの関係が築ける」

 著作権法は1970年の改正以来、著作者・著作隣接権者(コンテンツ事業者)を守る方向に強化されてきた。「著作権法を機能させるには、著作者、コンテンツ事業者、国民の3者の合意が必要だが、3者とも今、閉塞感に包まれている」

 この閉塞感を破るためにも新しい著作権の仕組み作りが必要と説く。それは「国益」の視点から考えるべきで、「国民合意」が必須という。「国民の合意が支えていない法律は有効性を失う。国民が納得する制度設計・料金で、3年〜10年ほどかけて超流通の世界を実現したい」

対価が支払われないのが一番の問題

 コンテンツを完全に管理する仕組みは、国民の知る権利や表現の自由を侵害し、言論統制につながるのでは――という指摘が、会場の白田秀彰・法政大学准教授からあった。角川会長は「例えば(登録楽曲の利用料を広く薄く徴収する)JASRACはユーザーの利便性を損ねただろうか。今の問題は、払う人からはたくさんお金を取り、払わない人は見過ごしているという偏ったお金の取り方だ」と答える。

 「一番いけないのは、コンテンツに対価が支払われなくなって作る意欲がそがれること。『好きだから』と作る人だけでは文化は発展しない。クリエイターに対価が支払われる動画サイト『Revver.com』には、YouTubeから作家が移動したと聞いている。最初は世間に知られたことだけで満足するだろうが、次は経済活動になったことで満足する」

コミケのような仕組みを

 会場の学生からは「例えばYouTubeに違法にアップロードされた楽曲プロモーションビデオをmixi日記に引用し、独自の解説を付けた場合は違法になるのか」といった質問が寄せられた。

 角川会長は「(YouTubeの違法コンテンツは)複製権、公衆送信権などの権利を侵害している。Googleも日本の法律に当てはめると5つの権利を侵害していると言われている。だが例えば、コミケができたとき、出版社は『海賊版の巣窟』ととらえたが、角川は新しい作家を生む場ととらえてクリエイターたちに声をかけていった。YouTubeを引用したmixi日記のようなもものも、合法化できないか考えなくてはならないと思う」などと話した。

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