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» 2012年07月02日 22時42分 UPDATE

「挑戦価格」7980円の理由は――三木谷社長が語る、電子書籍の勝算

Kindle Touchと同等の端末を7980円という「挑戦価格」で投入し、電子書籍市場に殴りこみをかける楽天。その勝算を三木谷社長が語った。

[ITmedia]
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 「7980円。挑戦価格です」――7月2日、東京・六本木の発表会場で、楽天の三木谷浩史社長が「kobo Touch」の価格を発表すると、会場の記者や出版関係者からどよめきが起きた。

 kobo Touchは、楽天が子会社のカナダKoboを通じて提供する電子書籍端末だ。タッチ操作に対応した6インチ電子ペーパー(E Ink)を搭載し、EPUBとPDFの閲覧が可能。同等の機能を持つAmazonの「Kindle Touch」の139ドル(約1万1000円、広告なし、Wi-Fiモデル)と比較してもかなり安い。

 「端末で大幅な利益をあげるのではなく、まずはマーケットを拡大したい」と三木谷社長は“挑戦価格”の意図を説明。低価格で一気に普及させ、電子書籍プラットフォームを確立する作戦だ。

 近く日本で電子書籍事業をスタートするとみられているライバルのAmazonは、契約内容や料率などで出版社と対立していると伝えられている。対する三木谷社長は、「出版社や作家と対峙せず、win-winの関係を築きたい」と、会場に詰めかけた出版関係者にアピール。Koboで書籍市場を活性化し、「読書革命を起こしたい」と意気込んだ。

「ほぼすべての出版社が協力的」

画像 Koboのマイケル・サービニスCEOは、タッチアンドトライ会場であいさつしたのみ。発表会のプレゼンはすべて三木谷社長が行った

 Koboは、カナダ、米国、フランスなど9カ国で事業を展開。koboの電子書籍端末と、電子書籍が読めるスマートフォン/PCアプリ利用者は、世界190カ国・900万人に上るという。

 楽天は昨年11月、同社の買収を発表。三木谷社長はKoboのマイケル・サービニスCEOに会った2日後にカナダに渡り、買収の話をまとめたという。三木谷社長のKoboにかける思いは強く、7月2日の発表会では、すべてのプレゼンを三木谷社長1人でこなす力の入れようだった。

 日本で販売するkobo Touchの機能はグローバルモデルと同等(スペックなど端末の詳細端末の写真リポート)。ユーザーインタフェースを日本語化し、日本語フォント(モリサワフォント)を搭載した。iOS、Android、Mac、Windows用のkoboアプリも提供予定。購入したコンテンツはさまざまなデバイスで閲覧できる。


画像 kobo Touch
画像 Facebookと連携した「ソーシャルリーディング機能」も売り。Pinterestとの連携も検討しているという

 電子書籍ストア「koboイーブックストア」では7月19日から、日本語・外国語の電子書籍240万冊を販売する予定だ。日本語の小説やビジネス書、コミックなどは当初3万冊を用意し、順次拡充。150万冊の提供を目指す。参加する出版社名は明らかにしていないが、「ほぼすべての出版社が協力的」。楽天が自前で出版社を設立したり、著者と直接取引する予定はないという。

画像 提供コンテンツのイメージを説明するプレゼン資料には、漫画「宇宙兄弟」(小山宙哉作・講談社)、「テルマエ・ロマエ」(ヤマザキマリ作・エンターブレイン)、「新世紀エヴァンゲリオン」(貞本義行作・角川書店)、小説「太陽は動かない」(吉田修一著・幻冬舎)などの表紙が写っていた

 書店とも協力。大手書店の店頭で、kobo Touchの端末を展示し、客に実際に体験してもらう。一部店舗では、端末の購入もできるようにする。

三木谷氏が語る、日本で電子書籍が普及しなかった理由

 日本では電子書籍専用端末が期待ほどは普及せず、市場は盛り上がりに欠けるのが現状。その理由として三木谷社長は、規格が多様で複雑化しており、各規格への対応コストが大きいことを挙げる。

 KoboはEPUB3.0という「オープンな」規格を採用。日本の業界内で、電子書籍規格をEPUB3.0に統一する話を進め、規格の乱立問題に対処していくという。「電子書籍のプレイヤーが欧米より多い」とも指摘。「今後、合従連衡が進むのでは」と展望する。

 端末価格が高いことも市場が立ち上がらなかった原因とし、7980円という低価格で一気に普及を進めていく考え。「やるからにはナンバーワンプレイヤーを目指す」と三木谷社長は意気込む。

 日本の書籍コンテンツが日本市場に閉じていたことも、電子書籍市場の拡大を妨げたとみる。「日本の漫画やファッション誌、歴史小説は世界で注目されている」。世界展開するKoboのプラットフォームに載せれば、コンテンツを海外で流通させられる。

 Koboはカナダの事業者であるため、コンテンツに消費税は上乗せしないという。財務省が海外からのコンテンツ配信に消費税課税を検討していることについては、「ルールに従ってやるのみ。フェアであればいいと思う」とコメントするにとどめた。

「読書革命、起こしたい」

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 三木谷社長も、さまざまな書籍を読み、事業の参考にしたり、人格形成に役立ててきたという。「日本人の読書量の減少は国家的危機。このままでは日本の優れた出版文化が衰退する」――三木谷社長は、Koboが日本の出版文化の発展に寄与すると強調。電子書籍の普及で、1人当たりの読書冊数が増えたという米国のデータを引用し、「デジタルがアナログを駆逐するとも言われていたが、デジタルが発端でより多くの人が、より多くの本を読むようになった」とアピールする。

 Koboが持つグローバルなプラットフォームを通じ、「日本で、世界で、読書革命を起こしたい」と、三木谷社長は意気込んでいる。

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