いったん電子化されても、あまり売れずに電子書籍ストアから消えてしまったり、ストアが閉店してしまうリスクもある。「絶版マンガ図書館」は、出版社による電子化という“日の目”を見なかった絶版漫画を網羅的に電子化し、日本の漫画のアーカイブとしての役割も果たしたいという。
「これから電子書籍サイトは統廃合が進むが、絶版漫画図書館はほかのサイトと品ぞろえがまったく違う。統廃合で残った大手電子書籍サイトと、絶版マンガ図書館の2つだけで全作品がフォローできる時代が来るのではないか。日本の漫画の100%保存の一翼を担いたい」
広告付き・無料の電子版から収益が得られるかは、作品の知名度と古さによるという。おおむね発表から5年以内の作品は有料配信の方が収益が大きく、10年以上だとほとんどの場合、Jコミの広告収益モデルの方が高収益という。
「電子書籍ストアからの売り上げが年1000円を切っているタイトルはJコミに入れたほうがいい。年に1万円以上もうかっているなら出版社との関係を重視し、出版社経由で有料配信を続けたほうがいい」と赤松さんはアドバイスする。
絶版マンガ図書館に掲載した作品はセリフ検索に対応させる予定だ。漫画をスキャンしたファイルから、吹き出し内のテキストを抜き出す技術を、東京大学工学部の相澤研究室と共同で開発した。
「テキストは広告とよく結びつく」と赤松さんは指摘する。テキストは動画と異なり、関連する広告とのマッチングが容易だ。セリフをテキスト化することで漫画の内容にマッチした広告が配信でき、収益性を高められるとみている。セリフは英語などに自動翻訳し、海外配信も行う計画だ。
ソフトバンクグループのSBイノベンチャーと提携し、Jコミ収録の漫画300冊以上が無料で読めるiPhoneアプリ「ハートコミックス」を今秋から提供。これまでリーチできていなかったライト層へのJコミ漫画の浸透を狙う。
「Jコミ」という名称はサービス内容が分かりづらく、「ジャンプ漫画しか載っていないのか」など誤解を招いたこともあり、よりダイレクトにサービス内容を表現する「絶版マンガ図書館」という名称に変更する。
これまで、広告収入など収益はほぼ100%が作者に還元される仕組みで、同社は利益を得ていなかった。「私がリッチなので、マネタイズは結構どうでもよかったんですが」と赤松さんは笑いつつ、漫画の“図書館”を目指すに当たってマネタイズを加速し、サービスの維持・発展につなげる。
赤松さんは「漫画家なので、広告に興味がなかった」が、新たに広告営業スタッフを雇うなどしてコミック内に挿入する広告の収益性を強化。絶版漫画のKindle化やオンデマンド印刷サービスで一定の手数料を徴収したり、漫画家エージェント事業など人脈を生かしたビジネスを検討し、収益化を加速させる。
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