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日本初のテレビ付きケータイいよいよ発売!?去る10月1日、ボーダーフォン(旧Jフォン)がテレビ付き携帯電話「V601N」の発売を発表した〈関連記事〉。これは現状のアナログテレビ放送に対応するもので、前回議論してきたデジタル放送対応のものとは異なる。 地上波放送のデジタル化を待たずして、早くも通信と放送「融合」の試みが始まった形になる。アナログ向けといいつつ、これが日本初のテレビ付き携帯電話となり、今後どのくらい普及するのか、どんなサービスが提供できるのかといった点について、大変興味が持たれるところである。 はたしてテレビは将来的に携帯電話の標準搭載機能となるのだろうか? まずは、すでに市場に出ている製品をケーススタディとしつつ、その将来性を探ってみよう。 一体化のメリット、デメリット現在、携帯電話契約者数の80%以上がブラウザフォン契約をしており(下図)、いまやWeb接続機能は携帯電話の標準搭載機能になっていると言ってよい。 ブラウザフォン加入状況(各年3月のデータ) また、携帯電話保有者のカメラ付き比率は現在5割弱と言われているが、これも徐々に標準搭載機能としての地位を獲得しつつある。 携帯電話に限らず、複数の機能がひとつの端末に一体化していく動きは、近年特に数多く見られる(下図)。 端末融合の動き ある機能を備えた端末の中に別の機能が一体化され、標準搭載機能となるにはどのような条件が必要なのだろうか。まず一体化のメリットについて考えると、下記のような要素が挙げられよう。
第1の省スペース化は、端末を一体化することでスペースが節約できるという点である。特に、移動体のように持ち運びが必要なものでは、省スペース化の必要性は高い。 第2のコストダウンについては、提供者側と利用者側の双方のメリットがある。端末の製造、あるいは流通コストの低減がはかれるという提供側のメリットと同時に、個別に購入するよりも安価で商品、サービスを利用できるという利用者側のメリットもある。 現在、携帯電話の端末はタダ同然の価格で販売されていたりするが、これは将来のパケット通信料収入を見込んで端末価格をぎりぎりまで下げる「インセンティブモデル」を取っているからこそ可能なのであり、デジカメ単体の販売ではこうしたこともありえない。 第3の機能間シナジーについても、カメラ付きケータイを例に取ると分かりやすい。カメラ付きケータイの価値は、写真を撮影して保存する機能だけでなく、撮ったその場で画像を送信できるという機能にもある。カメラ付きケータイは、通信との連動によってデジカメを越える新しい価値を生んだということができる。 もちろん一体化は良い事ばかりではない。たとえば、一体化のデメリットとして下記のようなことが挙げられる。
第1の点については、最近多くの人が不満を感じはじめている点である。いまやWeb接続機能の付いていない携帯電話を探す方が困難なくらいだが、これも利用しない人にとっては無用の長物である。標準搭載になると、必要のないユーザーにもその機能が押しつけられてしまうことになる。 実際、いまの携帯電話をオーバースペックに感じるユーザーは少なくない。TU-KAの「話せりゃええやん、電話やし」という広告はそうしたユーザー心理を代表しているとも言える。 第2の点は、端末が一体化することで個別の操作が複雑になるという問題である。たとえば、いまビデオのリモコンひとつでテレビとビデオの両方を操作することができるが、それを煩雑に思って別々に2台のリモコンを使っているユーザーも多い。携帯電話についても同様で、操作の複雑化はユーザーの利便性を損なうため、一体型端末の普及において阻害要因となる。 第3の点である、機能間のカニバリゼーション(共食い)は、融合を阻害する要因として非常に重要である。ケータイの基本はあくまでも通話機能にあり、それを妨害するような機能はいくら便利でも利用者から支持されない。 ケータイに音楽メディアが一体化しにくい理由として、どちらも音声を主体とするメディアであり、聴覚のカニバリゼーションが生じ易いことが挙げられるかもしれない。 また、「電池の持ちが悪くなる」「サイズが大きくなる」「重量が増える」といった物理的な要因に対しても、ユーザーの許容度は概して低い。 テレビ付きケータイは?それでは、ケータイとテレビの親和性はどうであろうか。まずメリットについて考えると、第1の省スペース化の効用は明らかであろう。しかし、第2のコストダウン、第3のシナジー効果については不明瞭な点も多い。 単に端末にテレビチューナーが内蔵されただけでは、通信との相乗効果は生まれにくい。それどころかテレビ視聴にユーザーの時間(そして物理的には電池の容量も)を取られてしまい通信時間が減少する恐れさえある。そうなると、端末コストを通信料金で回収するという、いわゆる「インセンティブモデル」も崩れてしまい、端末の売出価格を下げることができなくなる。第2、第3番目のメリットを享受するためには、何らかの仕掛けづくりが必要であろう。 次にデメリットについて考えたい。たしかに、普段テレビを見ない人は「わざわざケータイでテレビなど見たくない」と思うに違いない。しかし、テレビは世帯普及率99.4%、総普及台数1億1千万台(推計)を誇る万人のメディアである。これがケータイと一体化することに違和感を示す人は実際にはそれほど多くないのではないだろうか(もちろん価格や機能次第という側面も大きいが)。 また、テレビの操作はもともと簡単で、携帯電話のテンキーと親和性も高いため、テレビ機能の付加によって端末操作が複雑化することも考えにくい。もちろん、通話とテレビの切り替えがスムーズであることは不可欠の条件であるが。 そうした中、最も重要なのはカニバリゼーションの問題であろう。テレビ視聴中に電話やメールや着信した時、それをいかにユーザーに告知し、いかにスムーズにモード切り替えができるようにするのかという問題もある。また、テレビ視聴にユーザーの時間が奪われ、通話、メール、Web接続などのパケット通信の利用が減るという問題も無視できない。 さらに、電池の持続力の問題も大きい。現状でも電池の持続力に不満を持つユーザーは過半数を超えており、テレビ視聴による電池の消耗に対するユーザーの許容度はかなり低いと思われる。省電力設計、燃料電池の開発など、電池に関しては技術的に改善の余地は大きい。 以上で見てきたように、ただケータイにテレビチューナーを内蔵するだけでは利用者側にも通信キャリア側にそれほどの恩恵はもたらさない。重要なのは通信と連動したサービスでいかに相乗効果を生むかという点にある。 前回見てきたように、通信と放送では、取引慣行、企業風土、法制度など多くの点で異なっており、(コンテンツまで連動した)深いレベルでの融合型サービスの実現にはまだ時間を要するだろう。しかし、通信側にとってもテレビという「最大のマスメディア」を活用しないという手はないだろう。通信側はまずはテレビを「引き」としてユーザーをいかに通信へと誘導していくかを考えるべきだろう。 通信、放送の双方にとって「おいしい市場」が生み出されれば、互いに協力し合って新しいビジネスを創造しようという動きも生まれてくるに違いない。 釣りにたとえると、いまは撒き餌をして魚を呼び寄せる段階であり、その次に「どう協力し合って魚を釣るのか」「釣った魚をどう分けるのか」という段階に入る。後者について議論することはたしかに重要だが、それも「魚を逃がさない」という大前提があってのことである。 Copyright (c) 2003 DENTSU INC. All Rights Reserved.関連記事 第1回:ケータイから見た“非”融合(上) 関連リンク OPINION:電通総研 [西山守,電通総研] サーベイチャンネルは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、ソフトバンク・アイティメディアの他、サーベイチャンネルコーディネータ、及び本記事執筆会社に提供されます。
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