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ユビキタスネット社会実現に向けて取り組むべき課題とは〜総務省

» 2004年12月27日 17時01分 公開
[ITmedia]

 総務省は、ユビキタスネット社会の実現に伴い顕在化が予想される課題を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施、その結果を発表した。

 この調査は、「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」の利用環境WGにおいて、野村総合研究所を通じて行われたアンケートをまとめたもので、調査時期は2004年8月25日から11月17日までの約3カ月。調査対象は懇談会構成員36名を含む有識者177人で、内107票を回収した。

 同懇談会では、ユビキタスネット社会の「影」の問題として想定される課題を「プライバシーの保護」「情報セキュリティの確保」「電子商取引環境の整備」「違法・有害コンテンツ、迷惑通信への対応」「新たな社会規範の定着」「情報リテラシーの浸透」「地理的ディバイドの克服」「地球環境や心身の健康への配慮」「サイバー対応の制度・慣行の整備」の10項目に分類。

 各項目ごとに10課題、計100の対応課題のなかから、「社会に対する影響度合い」「対応の未熟さの度合い」および「ユビキタスネット社会との関わりの度合い」について調査。その結果、「社会に対する影響度合い」「対応の未熟さの度合い」が共に大きい課題は、社会に対する影響の度合いが大きいにも関わらず、十分な対応がなされてないと捉え、今後優先的に取り組むべき課題と位置づけた。また、優先的に取り組むべき課題のほかに、ユビキタスネット社会特有の課題を把握した。

 今後優先的に取り組むべき課題として、以下の21の課題が抽出された。

  課題
1 医療におけるプライバシー保護のあり方
2 公的機関や事業者の保有する個人情報保護のあり方
3 一般ユーザーの情報セキュリティ意識の向上
4 情報ネットワークの脆弱性の克服
5 コンピュータウイルスへの対応
6 電子決済の安全性の確保
7 ネットを利用した悪質商法への対応
8 迷惑メールへの対応
9 知的財産戦略のあり方
10 デジタル財の著作権保護のあり方
11 コンテンツの二次利用不足の解消
12 情報技術の研究開発における科学技術倫理のあり方
13 教育におけるICT(情報通信技術)利用の促進
14 高度なICT人材の不足の解消
15 高度サービスの地域格差の解消
16 電子自治体における格差の解消
17 社会資本整備におけるICTの優先度の見直し
18 青少年の発育の影響への健全化
19 電子政府の利便性の向上
20 医療におけるICTの利活用の促進
21 地方公共団体の業務の標準化

将来的に顕在化することが懸念される重要な課題

 また、優先的に取り組むべき上記21課題の他に、ユビキタスネット社会の実現によって、国民や企業などにもたらされる不安や脅威が助長・増幅される懸念があるユビキタスネット社会特有の対応課題として以下の14課題が抽出された。

  課題
1 金融・決済などにかかわるプライバシー保護のあり方
2 ウェブサイトなどを利用した顧客情報の取得への対策
3 生体認証の導入・普及のあり方
4 位置情報の取り扱いルールのあり方
5 電子タグの利用ルールのあり方
6 盗聴、通信傍受への対応
7 不正アクセスへの対応
8 トラフィックの急増などへ対応
9 非PC機器のセキュリティ
10 コンテンツの安全性・信頼性の確保
11 社会性や適応力の低下の防止
12 情報の氾濫への対応
13 誰でも用意に使えるインタフェースの確保
14 新技術の人体への影響の軽減
グラフ 将来的に顕在化することが懸念される重要な課題(クリックで拡大表示)

 なお、参考資料として個別設問ごとの結果も公表している。

 問題が起きたときの深刻度が高い対応課題としては、「金融・決済などにかかわるプライバシー保護のあり方」「情報ネットワークの脆弱性の克服」「電子決済の安全性の確保」を挙げた回答者は5割以上に上る。「ネットを利用した悪質商法への対応」「医療におけるICTの利活用の促進」「医療におけるプライバシー保護のあり方」なども4割以上おり、金銭収受を伴う金融や商取引、人間の生命・健康を扱う医療などにおいて、深刻度はより高くなる。

 また、問題が起きたときの波及度が高い課題として、被害が比較的身近で、関心が高まっている項目が上位を占め、「コンピュータウイルスへの対応」が62%と高く、「デジタル財の著作権保護のあり方」「公的機関や事業者の保有する個人情報保護のあり方」「迷惑メールへの対応」も5割以上、「ネットを利用した悪質商法への対応」「電子政府の利便性の向上」も45%以上。

 法制度面の対応や技術開発など対応策の整備が遅れている課題としては、「コンテンツの二次利用不足の解消」が40.2%と最も高く、「社会資本整備におけるICTの優先度の見直し」「ネット上の商業活動に関するルールの未整備」「情報ネットワークの脆弱性の克服」などが続き、ルールづくりやインフラ整備に関わるものが目立つ。

 課題に対する法制度面の対応や技術開発といった対応策の実効性の低さが指摘されている対応課題としては、「迷惑メールへの対応」「教育におけるICT利用の促進」「電子政府の利便性の向上」などが上位に挙がった。なお、「迷惑メールへの対応」を挙げた回答者は62%に上り、早急な対応策の見直しが迫られている。

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