「我が社もAI PC」の前に 知っておくべきオンデバイスAI実行環境の基礎知識(3/3 ページ)
NPUで実行できるAI処理はまだまだこれから
ではNPUで具体的にどんなAIが実行できるかというと、実のところ2024年8月時点では数えるほどしかないのが現状だ。例えば、「Windows Studio エフェクト」というWindows純正のAI機能で背景ぼかしやノイズキャンセリングなどをNPUに担わせることができる。米Adobeの画像編集ソフト「Photoshop」や映像編集ソフト「Premiere Pro」も一部の編集機能がNPUに対応している。
しかし、多くのAI搭載ソフトがNPUに対応しているかというとそうではなく、特にWindowsマシンにとって本命の生成AIの一角であるCopilotも、現時点ではオンデバイス実行に対応していない。
この状況はある意味当然といえば当然で、NVIDIA GPUの実行環境はハードウェアからミドルウェア、ソフトウェアまでそろいプラットフォームが成熟している一方、NPUはハードウェアとミドルウェアが出始めた段階。少なくとも多くのサードパーティーのソフトウェアベンダーが対応するにはまだ時間がかかるだろう。
Copilotについては、AI PCでオンデバイス実行ができるようになる可能性をIntelの幹部が米メディア「Tom's Hardware」の取材に対して示唆している。また、AI処理のためにMicrosoftが用意したミドルウェア「DirectML」は、各種NPUだけでなくGPUでの実行も可能にする。ゲーム開発環境の「Direct X」の機械学習版といった位置付けであるため、今後はDirectMLによる実装が増えていくことは見込める。
そう考えると、現状でAI PCを検討するなら「近い将来への投資」という意味合いが強いといえるだろう。特に企業における従業員のPC買い替えサイクルは通常2~3年ほど。直近の更改タイミングでAI PCを選ぶかどうかは、情シスだけでなく経営陣も交えた判断が必要になりそうだ。
ちなみにNPUとGPUは排他的な関係ではなく、両方搭載したノートPCも存在する。ただし両者を協調的に使うというよりは、現状ではNPUで実行できるAIはNPUで実行、GPU実行が前提のAIはGPUで実行というソフトウェアレベルの使い分けになるだろう。
QualcommのSnapdragon搭載「Copilot+ PC」はどうなの?
最後に、Copilot+ PCとして先駆けて登場したQualcommの「Snapdragon X Plus/Elite」を搭載したノートPCについて触れておこう。
先に、誤解がないように言及しておくと、「Copilot+ PC=Snapdragon搭載PC」ではない。Copilot+ PCはNPUによる一定のAI計算性能(40TOPS以上)などを持つPCとしてMicrosoftが定義したブランドで、その定義を満たすプロセッサが今はQualcomm製のみというのが正しい。IntelやAMDも、今後Copilot+ PCの定義を満たすプロセッサを投入予定だ。
ではAI PCの中ではSnapdragonを搭載したCopilot+ PCが完全に上位互換なのかといえば、そうとは言えない。なぜならCPUのアーキテクチャがIntelとAMDのx86とは異なりARMだからだ。
ARMアーキテクチャのプロセッサはQualcommが多くのスマートフォン向けプロセッサとして供給しているように、高い実行性能と電力効率を特徴とする。そのためSnapdragonを搭載したCopilot+ PCはこうした特徴を持つのがメリットである反面、従来のWindowsマシン向けに作られたソフトウェア群が動くとは限らないのがデメリットとなる。
従来のソフトウェア資産をSnapdragon上で動かすために「Prism」というエミュレーションエンジンを搭載してはいるものの、やはり全てがうまく動作するわけではないようだ。詳しくは、僚誌「ITmedia PC USER」のレビューも参照してほしい。
特に、企業導入を検討するならば業務アプリケーションだけでなく、管理に当たって必要なソフトウェア群が動作するか、よく確認するべきだ。
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