小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIのセキュリティ演習は“それっぽく見えるだけ”? 「AIレッドチーミング」を考える(4/4 ページ)
「セキュリティシアター」化を防ぐ際に重要なもの
もちろんレッドチーミングがあらゆるリスクを洗い出せなかったからといって、その活動に価値がないというわけではない。部分的な活動でも、問題点を確認し、対策を行えれば十分に実施した意味がある。また当然ながらレッドチーミングは定期的に行われるのが望ましいが、一度でも実施できれば、関係者に対して潜在的なリスクの存在をアピールできるだろう。
一方で「セキュリティシアター」が問題なのは、そこから「何かをやりきった」感が組織内に生まれてしまうという点だ。実際には洗い出されていない不具合や脆弱性があるにもかかわらず、レッドチーミングをしたというだけで安心されてしまっては、逆にリスクから目を背ける結果となってしまう。
予算確保の観点からはレッドチーミングの有効性をアピールする必要があるものの、それが達成できない部分もあることを、組織内で同時に周知徹底する必要がある。
実際に多くの識者が、AIや生成AIのレッドチーミングにおける透明性確保の重要性を指摘している。レッドチーミング活動が何を明らかにし、何を明らかにできなかったのか――それを多くの関係者に対して公開し、可能であれば、チームメンバー以外の専門家による検証も可能な状態にしておくこと。そうした対応を行うことで、間違った安心感を醸成してしまうのを回避できるだろう。
前述の通り、いま多くの専門家や専門機関、大手IT企業により、AIレッドチーミングの手法の確立が進められている。いち早くレッドチーミングに取り掛かることはもちろん望ましいが、そのベストプラクティスについて、継続的に知識をアップデートしていかなければならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIやメタバース、新たなサイバー攻撃など、テクノロジーの進化が止まらない。少しずつ生活の中に浸透し、その恩恵を預かれることもある一方、思いもよらない問題を生み出すこともある。このコーナーでは、さまざまな分野の新興技術「エマージング・テクノロジー」について、小林啓倫氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
2
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
3
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
-
4
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
5
SIE、PS5向けAI採用画質向上技術「QSSR」発表 AMDと共同開発、「Marvel's Wolverine」と「Ghost of Yōtei」が初対応
-
6
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
7
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
-
8
ChatGPTにAIでバーチャル試着機能とカメラでの書類スキャン→PDF化機能
-
9
Google、「Gemini 4 Pro」ではなく「Gemini 4 Argon」発表 まずはサイバー防御組織に限定提供、出力上限は100万トークンに
-
10
Rails作者DHH「Pencils Down、もう手でコードは書かない」 それでもソフトウェア開発の未来は明るい理由
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR