生成AIの業務活用は大企業のみならず、人手が限られる中小企業においてこそ、その効果が発揮される。ランサーズで生成AIサービスの開発に携わるクリエイターの入江慎吾氏が、中小企業のための生成AI活用術を解説する。
皆さま、初めまして。今回、中小企業の生成AI活用をテーマに、連載を担当することになりました、クリエイターの入江慎吾と申します。Web制作会社で10年間の勤務を経て独立し、これまで30件以上の個人開発プロジェクトを手がけてきました。
現在は、人材サービスのランサーズ(東京都渋谷区)において、生成AI研究や新規プロダクト開発を行うLLM Labs代表を務めています。
2022年11月に米OpenAIがリリースした対話型AI「ChatGPT」の登場は、社会に大きなインパクトをもたらしました。ITエンジニアとして長年、さまざまな技術の進化を見てきましたが、生成AIの登場は、それらを凌駕(りょうが)するインパクトを持ち、インターネットやiPhoneが登場した時以来の“革命”だと当時、直感しました。
リリース当初から、いち早くChatGPTを試し、自身の能力が拡張されたかのような感覚を覚えた筆者でしたが、当時、周囲にはまだ、ChatGPTがもたらす劇的な変化に気付いている人はごくわずかであったと思います。現在も、生成AIという言葉は知っていても、実際に業務活用している人は決して多いわけではありません。
総務省が7月に発表した「2024年版情報通信白書」によると、生成AIを「使っている」(「過去使ったことがある」も含む)と回答した割合は日本で9.1%。中国(56.3%)や米国(46.3%)、英国(39.8%)、ドイツ(34.6%)に大きく水を開けられている様子がうかがえます。
日本の労働人口が減っている現状において、生成AIこそフル活用されるべきだ――こう考えた筆者は、2023年7月、現在所属するランサーズにおいてLLM Labsという生成AIの研究開発チームを立ち上げ、誰もが簡単に生成AIを活用できるサービスを目指した「Autoron」(オートロン)の開発に携わりました。
生成AIはさまざまなことができる一方で、使いこなすにはある程度の知識やスキルを要すため、うまく指示を出せない人は十分に活用できない可能性があります。そこでAutoronは、仕事で使えるAIアシスタントを約80種類搭載しています。例えば、特別な設定なしに利用できるメール作成アシスタント、自社用にカスタマイズし、社内ファイルを読ませて社内FAQアシスタントなどを作ることができます。
ChatGPTだけでなく、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeシリーズも切り替えて使用できるのがサービスの特徴です。生成AIになじみの薄いビジネスパーソンに活用してもらい、業務効率化を実感していただければと願っています。
Autoronのサービスをスタートさせて痛感したのは、ツールそのものの使いやすさも重要ですが、自身の業務においてどのように活用すればよいか分からず、導入に躊躇(ちゅうちょ)するユーザーが多いということでした。
ヒアリングをして業務の棚卸しをし、導入できるポイントを提示することで、多くの企業が具体的なイメージを持ち、活用をスタートするケースが多々見受けられました。
価格や機能よりも、まず生成AIの活用イメージを持つこと。そしてそれは、それぞれの仕事によって異なるという点を理解することが重要であると感じています。
「中小企業のための生成AI活用術」シリーズでは、具体的にどのように生成AIを仕事で使えるのか、詳しく紹介していきます。
クリエイター。30個以上のWebサービスやアプリケーションを開発。代表作にメンターマッチングプラットフォーム「MENTA」がある。ランサーズ株式会社にて生成AIの研究や新規プロダクト開発を行うLLM Labs代表。生成AIアシスタントサービス「Autoron」を運営中。
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