技術論争乗り越え事業化フェーズへ 躍進する「Sakana AI」、創業者デイビッド・ハー氏の狙い(2/3 ページ)
創業18カ月で急成長、背景に戦略的な資金調達
Sakana AIの急成長を支えているのが、日米の投資家からの相次ぐ支援だ。創業時には米シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルから出資を受けただけでなく、NTTやKDDI、ソニーといった日本の大手企業からも支援を獲得。その後、わずか1年での事業進捗が評価され、世界最大の半導体企業NVIDIAもシリーズAラウンドに参加した。
経済産業省も同社の技術力に着目している。生成AI基盤モデル開発支援事業(GENIAC)の採択企業7社の1社として選ばれ、AIの開発に不可欠な256台のH100 GPUを実質無償で利用できる環境を手に入れた。「コンピューティングリソースという面で、初年度の研究開発を実質的にフリーで進められる体制が整った」とハー氏は説明する。
この充実した開発環境を生かし、同社は研究成果を次々と生み出している。最近では「Nature Machine Intelligence」に論文が掲載されるなど、学術面での評価も高まっている。「日本のAI企業として世界で認められることは、次の資金調達や人材採用にもプラスの影響を与える」と、ハー氏は手応えを語る。
「進化的最適化」で省資源のAI開発に挑む
Sakana AIが開発した技術のポイントは、既存のAIモデルを進化的に組み合わせ、新たなモデルを生み出す「進化的最適化」にある。この技術により、大規模なAIモデルの開発に必要な計算資源を100万分の1程度まで削減できることが、「Nature Machine Intelligence」誌に掲載された論文で示された。
「現在のAI開発は、巨大な計算資源と膨大なエネルギーを必要としている。日本の強みを生かすには、より効率的な方法が必要である」。ハー氏は自社の技術的アプローチについてこう説明する。同社の手法は、既存の複数のAIモデルから必要な機能を抽出し、進化的アルゴリズムで最適な組み合わせを見つけ出す。
その成果の一つが、日本語に特化した視覚言語モデル(VLM)の開発だ。画像認識と日本語処理を組み合わせたモデルを、従来の方法より大幅に少ない計算資源で実現。例えば信号機の色を「青」と表現する日本語特有の言い回しまで理解できる。
「われわれの目標は、技術開発の民主化である」とハー氏は強調する。同社の技術により、大手企業だけでなく、スタートアップや研究機関でも最先端のAI開発が可能になる。実際に東京工業大学との共同研究では、大規模言語モデルを100分の1程度まで圧縮し、スマートフォンでもリアルタイムで動作する技術の開発に成功。この成果は、国際会議ICLRでの発表も決まっている。「日本の産学連携の強みを生かし、世界標準となる技術を生み出したい」とハー氏は意気込む。
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