「2026年はフィジカルAI元年」 日立、AIサービス群全体で売上5000億円へ ミュトス利用の知見を基にした新サービスも
2026年は「フィジカルAI元年」――日立製作所(以下、日立)の徳永俊昭社長は同社が開催した「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」の基調講演でこう切り出した。
同日、日立はAIソリューション群「HMAX」の拡充を発表。米Anthropicの「Claude Mythos Preview」(以下、Mythos Preview)を活用した知見を盛り込んだセキュリティ支援などを追加し、社会インフラを支える「フィジカルAIサービス」として売り出す。HMAX事業は26年度末時点で売上高5000億円、利益率22%を見込む。
「守るべきものは増える。しかし、人は増えない」
徳永氏はフィジカルAIを、人が決めた通りに機械を動かす「自動化」ではなく、現場の機器やシステムが状況に応じて自ら判断し動作する「自律化」を実現するものと定義する。日本では2040年に1100万人の労働力が不足するとの推計がある一方、社会インフラの運用現場では今も人が24時間365日監視に当たっている。「守るべきものは増える。しかし、現場を支える人は増えない」(徳永氏)
徳永氏は、フィジカルAIの実装段階を物理法則の学習からデジタルツインでの試行、業務固有のルールの学習、現場での実践までの4つに分け、米NVIDIAが前半に注力するのに対し、日立はITやOT(制御・運用技術)、プロダクトの蓄積を生かして後半で価値を出すと説明した。
その中核がHMAXだ。24年9月の鉄道向けを皮切りにエネルギー、産業、金融へと広げてきた。徳永氏は、フィジカルAIで現場を革新するデジタルサービスは「社会インフラを動かすOSといえる存在になる」と語る。
「ミュトス」で人間が見つけられなかった脆弱性を発見
日立はフィジカルAIの実装を支えるデータセンターやセキュリティなどの分野でソリューション群の拡充を進めている。イベント同日に発表されたセキュリティ分野の新ソリューション「HMAX Cyber」は脆弱(ぜいじゃく)性の可視化や、24時間365日の監視・運用、有事の復旧支援などを組み合わせたサービス。
その背景にあるのが、日立が26年6月に参画した米Anthropicのサイバーセキュリティプロジェクト「Project Glasswing」だ。HMAX Cyberの筆頭ホワイトハッカーを務める青山桃子氏によると、一般非公開のMythos Previewで社会インフラ向けの大規模ソフトウェアを検証したところ、「人間が到底見つけられなかった脆弱性」を発見し、検証を高度化・高速化できると分かったという。一方で「止まることを許されないシステムでは、重要な判断はまだ人間が行う必要がある」(青山氏)ため、日立ではサイバーセキュリティ分野の専門組織を今後も拡大する見込みとした。
HMAX Cyberの責任者を務める小岩博明氏によれば、Mythos Previewのような先進モデルによる脆弱性スキャンを顧客システムに適用するのではなく、日立社内での検証で得た知見を顧客に還元することを目指すという。Mythos Previewに限らず米OpenAIや米Googleなどのフロンティアモデルがセキュリティ分野で広く使われるようになった際に、AIが見つけた大量の脆弱性候補をどうトリアージし、修正するか。その判断を支援する狙いだ。
小岩氏はこのサービスの需要が特に大きいのは金融機関だと述べた上で、サイバー攻撃がOT分野にも広がっている現状を指摘。OT分野での日立の強みが生かして支援するとした。
HMAXの戦略を統括する黒川亮氏は、「日立自身はロボットもLLMも作っていない」一方で、米NVIDIAやAnthropic、OpenAIなど世界のパートナー企業と組み、「世界一のフィジカルAIの使い手」を目指すと抱負を述べた。
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