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「リメイク」が日本型コンテンツ多展開の鍵になる(1/2 ページ)

» 2004年07月01日 13時50分 公開
[西正,ITmedia]

マルチウインドウ・リリース戦略

 デジタル化、ブロードバンド化により、インフラ側の高度化が進展する中で、改めて、コンテンツ戦略の重要性が増してきている。優良なコンテンツを多元展開することが求められており、米国型のモデルが参考になると言われているが、無料で視聴できる広告放送マーケットの大きなわが国では、旧作の「リメイク」という手法も日本型モデルとして十分に検討していく余地がありそうだ。

 コンテンツの多元展開が先行している米国型モデルの典型が、「マルチウインドウ・リリース戦略」と呼ばれるものである。

 マルチウインドウ・リリース戦略とは、一つのコンテンツを多元的に利用する際に、リリースしていく時期や順番を決めて、最も効果的に収益を上げていくようにする方法のことを指している。ウインドウというのは、劇場公開や地上波テレビ、衛星放送、ケーブルテレビなどによる放映のように、コンテンツをリリースする出口となる媒体のことである。

 例えば、映画でいえば、最初に劇場公開が行われるわけだが、それが終了してしばらくすると、航空機やホテルにおけるペイ・パー・ビューで見られるようになる。さらに、その少し後に、ビデオやDVDなどにパッケージ化されて販売される。

 そして、その直後くらいから家庭向けの有料放送として、ペイ・パー・ビューによる視聴が可能になる。ペイ・パー・ビューによる放映が終わる頃になると、今度は同じ有料放送でもペイ・テレビの方で見られるようになる。ここまでが、視聴者からすれば“有料でないと見られない時期”に当たり、大体2年後くらいをめどにして、広告放送の地上波のネットワーク・テレビなどで見られるようになる。

 また、米国はケーブルテレビ大国であるという事情もあって、ケーブルテレビのベーシック・チャンネルでも放映されることが多くなっている。このように、だいたい3年くらいの間に各媒体を一巡することになり、その後はシンジケーション市場と呼ばれるテレビ番組や映画ソフトの二次流通市場へ出されていくことになる。シンジケーション市場は、全米各地に存在しており、再放送用のコンテンツを求めるローカルの地上波局やケーブルテレビ局などが取引を行っている。

 コンテンツを多元的に利用するといっても、このように時期や順番を考えてリリースするのでなければ、ビジネスとしての成功はおぼつかない。どの順番に、どのタイミングでリリースすれば最も大きな収入が得られるかを考えることが、コンテンツ戦略を練っていく上での最重点ポイントとなる。

 もちろん、コンテンツの種類や性格によって、リリースしていくべき順番も異なるため、真っ先にパッケージ化した方が高い収益性が見込めると判断されれば、劇場公開後速やかにパッケージ化されることも多い。

 いわば、どれだけ巧みに「出し惜しみ」をして、「早く見たい」と思う視聴者から順番に、より多くの収益を得られるようにするかが、コンテンツの多元展開を行うための要(かなめ)と言えるわけである。

 もっとも、わが国の場合、最大のコンテンツ制作プロダクションは地上波放送局である。ハリウッドという強力なコンテンツの出し手を持つ米国とは、その辺の事情が異なっている。地上波民放の系列化が確立しているせいか、米国のように二次利用を前提としたシンジケーション市場は実現していないが、コンテンツのアーカイブが地上波局に集中化されていることから、日本独自のウインドウ展開も期待できる。

 すなわち、過去の旧作を、タイムリーに引き出してきて、リメイクして新作をヒットさせるという手法である。

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