約8000枚の名刺、8年分のメモ、10年分の写真のデータをデジタル化――。日本経済新聞社・編集委員兼論説委員の関口さんに仕事術を伺った。
「パソコン革命の旗手たち」(日本経済新聞社刊)などの著作でも有名な、日本経済新聞社の産業部編集委員兼論説委員・関口和一さんに新聞記者の仕事術を伺った。
紙の書類をほとんどすべてデジタル化するのが関口流仕事術の特徴。愛用のノートPCに名刺や取材メモのデータを保存する。名刺のスキャニングは当たり前で、すでに6000〜8000枚のデータが格納されている。
取材メモにはA4のコピー用紙を四つ折りにしたものを使う。メモを書いた後は、そのままスキャンし、PDFにして保存する。「1998年からの取材メモをPDFなどの画像ファイルとして保存している」というから驚きだ。A4のコピー用紙を1枚ずつ使うのは、手帳やメモ帳だと1枚1枚をスキャニングするのが面倒だから――というわけだ。
なお、A4のコピー用紙を四つ折りにするのは野口悠紀雄氏の「超」整理法から学んだ。四つ折りのメモ用紙は普段いわゆる“野口手帳”に挟んでおり、この手帳を下敷きにしてメモを取るのが取材スタイルだ。
もちろん取材先で撮影したデジタルカメラの写真や録音したICレコーダのデータも保存する。さすがに写真などの重めのデータはすべてを保存しているわけではないが、それでも「1996年からの海外出張の写真や、1999年からのICレコーダの録音データを保存している」。
大量に保存したファイルの管理には「PaperPort」を活用する。PaperPortはニュアンスコミュニケーションズのファイル整理ソフト。保存したファイルの内容をサムネイル表示するのが特徴。ファイルを探し出すソフトとしてはGoogleデスクトップなどの検索ツールもあるが「サムネイル表示するPaperPortの“手に取る感覚”がいい」。長年新聞という紙媒体と向き合ってきたベテラン記者らしい指摘だ。
こうして歴代の愛用ノートPCはいずれも酷使しており、1〜2年で買い換えることもしばしば。現在の愛機は東芝の「Dynabook SS SX 190」だ。Thinkpadを使っていたこともあったが、「軽さとバッテリーの持ち」からDynabookを使うようになった。
日々のコミュニケーションはメールが中心。1日60通ほどの返事を書くという関口さんは、電車の待ち時間でも愛用のPHS「WX300K」や「W-ZERO3」などでメールを書くという。急ぎの用事にはサブジェクトの冒頭に【急用】などとする工夫も常套手段だ。
外出も頻繁なため、「AOL」や「Jmail」「Gmail」などのWebメールを活用する。いずれも会社のメールを転送したりしているが基本的にはAOLがメイン。Jmailは不在通知の自動返信用に、Gmailは大容量を活かして非常時のバックアップ用に利用している。
一方、スケジュール管理には今も試行錯誤。最近では携帯電話からWeb上のスケジュールサービスにアクセスする方法を試していたが、「電話に出ちゃうとスケジュールが確認できない」という重大な欠点に気づいた。電波が届かないところで使えないことも大きなマイナスだ。結局、アポイントを取るだけなら手帳がもっとも都合がいいことがわかった。
ただし、スケジュールを管理する意味はほかにもあるという。取材先などのアポイントを押さえることのほか、同僚とのコラボレーション、これまでの経験の蓄積といった情報共有の側面があるのだ。こうした観点からみるとスタンドアローンの手帳では心もとない。関口さんといえども、今後も試行錯誤が続くだろう。
また、ブログやSNSなどのCGMはあまり積極的に活用してない。「ブログは会社で禁じられている。個人が趣味のサイトを運営するならかまわないんだけど、そういう趣味もないので」と笑う。SNSもOrkut、mixi、GREEといった有名どころのアカウントはもっているものの積極的に活動していない。「紙面に書く原稿だけで手いっぱいなんだよね」
1959年生まれの関口さんは、1982年に一橋大学法学部を卒業し、日経新聞社に入社。1988年にはフルブライト客員研究員として米ハーバード大学国際問題研究所に留学し、知的所有権の問題などを研究した。
時は折りしも、マイクロソフトとアップルコンピュータがWindowsの知的財産権をめぐり紛争中だったという。その後、90年から94年までワシントン特派員をして、情報スーパーハイウェイ構想の取材などをした。帰国し1996年から編集委員を務める。現在は産業部編集委員兼論説委員として情報通信分野などを担当している。
関口さんの仕事に対する姿勢は実践主義だ。あらゆるツールを試し、自分の仕事スタイルを作り上げてきた。座右の銘は「莫妄想(妄想スルコト莫レ)」。大学生のころからのモットーだが、妄想を排しプラグマティズムを心がけてきた。
今もトイレに地図を貼って、経路などを頭に入れるイメージトレーニングをしている。取材先を効率よく回れるように確認するためだ。とはいえデジタルマップもよく使う。「駅すぱあとよりも早く回ることが目標だ」。デジタルマップに勝つ――半ば冗談のような“目標”を笑いながら話してくれたのが印象的だった。
氏名 | 関口和一(せきぐち・わいち) |
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PC | 東芝 Dynabook SS SX 190 |
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) | ウィルコム(WX300K、W-ZERO3、データ通信カード)、au(GLOBAL PASSPORT対応 A5514SA)" |
デジタルカメラ | Canon IXY DIGITAL 50 |
ブラウザ | mozilla suite |
収集ツール(RSSリーダーなど) | 日経テレコン21 |
メールクライアント | mozilla suite |
インスタントメッセンジャー | Skype |
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) | PaperPort |
検索サイト | Google、Yahoo! JAPAN |
Webメール | AOL、Jmail、Gmail、その他多数 |
ブログ | 会社で禁止 |
SNS | mixi、GREE、Orkut、LinkedIn |
ソーシャルブックマーキング | 以前はBlink.comを使っていた |
Wiki | Wikipediaで新語の意味や用法をチェック |
影響を受けた人/本/Webサイト | デール・カーネギー、アラン・ラーキン |
座右の銘 | 莫妄想(妄想スルコト莫レ) |
手帳/ノート | 野口手帳(「超」整理手帳)、四つ折りのA4コピー用紙 |
ペン | 会社で支給されたもの |
その他小物(ICレコーダ、ポストイットなど) | オリンパスのICレコーダー「V-40」、芯取り替え型のペン(赤線を引くのに使う) |
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