まず、似たようなケースで、行動して良かったことを思い出します。これは2つめのポイント(過去を思い出す)と同じやり方です。
次は未来です。行動してうまくいくことを想像します。そして、完成のイメージをありありと思い浮かべます。行動することは、最初はちょっと慣れないけれど、定期的に行うことでそれが習慣になって、いつの間にか歯を磨くように無意識にできるようになる。そうして行動が習慣になった結果、将来、どんな仕事をしているかなど、完成をイメージします。
そして次。ここでも大事なのは、“同時進行で”行動することと快と結びつけることです。例えば、以下のような感じです。
ある女性がダイエットのためにジムでエクササイズをします。彼女はチョコが大好き。一般的に、ダイエットするならチョコはいけませんよね。
ところが、彼女はエクササイズの荷物を詰め始めたらチョコをひとかけら食べます。荷物を持って車に乗ったら、ひとかけら。ジムについたら、ひとかけら。着替えたら、ひとかけら。20分走ると、ひとかけら食べます。つまり、ジムに行くひとつひとつの行動を、チョコという快と結びつけているのです。
最初はチョコが必要ですが、そのうち荷物を詰めると、甘いいい感じに、車に乗ると、なにかいい感じに、となってきます。食べなくても脳が勘違いして、それが良いものと誤解してしまうのです。
会いたいな、と思って好きな人の家に行くと、その家までの道のりのいろいろなものが、なんとなく良く感じることはありませんか? 逆に嫌いな人だと、全部嫌なものに見える。本当は関係ないはずなのに、いい気持ちでそこを歩くと良いものとして結びつくし、嫌な気持ちだと悪いものとして結びつく。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というのと同じです。
ステップ4は、ステップ2と内容が似てはいるのですが、決定的に違うのは、“同時進行で”その行為自体が気持ち良くて/苦痛でたまらないように、快・苦痛と結び付ける点です。
だから、行動が終わった後にご褒美、ではダメです。ジムにいって運動して、帰ってきたあとに、「今日はジムに行って、よくがんばったからチョコレート」、ではダメです。これだと運動していない状態と、チョコが結びついてしまう。チョコは行動している最中に食べなくてはいけない。むしろ、帰ってきたときにチョコを食べたらダメです。チョコを食べたかったら、準備をしながらチョコひと口、車に乗りながらチョコひと口、着いたら、ひと口、着替えたらひと口、運動しながらひと口で、最中に食べ終わって欲しいのです。すると、行為そのものがチョコ(=好きなもの)になってきます。
以上のように、同時進行で結びつけるために何が快刺激で、何が不快刺激なのか、できるだけ挙げて活用してほしいのです。チョコの人もいれば、音楽の人もいて、ハーブティ、アロマという人もいる。中には腹筋がすごく好きで、1日中腹筋をしていたい、という人もいますよ。大事なのは、「同時進行で」ということです。そうすると、そのうち快刺激がなくても、行動できるようになってきます。
平本 斎藤さんの会社で、大変なんだけど、やらなきゃいけない作業って何ですか?
斎藤 記事の原稿を書くことです。
平本 じゃあ、どういうものがあると、原稿を書くときに少し楽しくなりますか?
斎藤 人によって違うのですが、タバコを吸うのが大好きな人がいますので、そういう人は、外の喫茶店でタバコを吸いながら書いています。
平本 それは快刺激に入りますよ。
斎藤 ただ、喫煙所で仕事はできませんので、仕事が一段落してからタバコを吸いに行くようになると、帰ってこなくなるんです(笑)
平本 そこなんですよ。同時進行じゃないから、タバコを吸うことと原稿を書かないことが結びついているんです。書かないのが気持ちいいこと、書くことが我慢でつらいことなんです。すると、どんどん書かなくなっていきます。
パソコンで自分の原稿を書いたり作業をしたりするときは苦痛なんだけど、ネットサーフィンや仕事とは関係ないサイトを見ているときは楽しい、という人もいますよね。例えば、アダルトサイトもそうかもしれない(笑)。だとしたら、アダルトサイトを開けながら、作業をするんです。すると、アダルトのいい感じと作業が結びつく。「作業が終わったら見る」というのではダメです。見ながらやってほしいんです。そうすると、作業がアダルトサイトのお姉さんと結びつくので、仕事をしていると、そのうちなんだか、いい〜感じがしてくるんですね(笑)。作業中のウィンドウも、閉じてはダメですよ。閉じると、作業しないこととアダルトサイトが結びつく。アダルトサイトを見るんだったら、作業をしているときしか、見ちゃいけないことにするんです。
斎藤 ご褒美にするんじゃなくて、結びつけると。
平本 そうです。原稿を書いているとアダルトサイトの映像が流れていて、なんだか楽しくて仕方がなくなるようにしたい。最初はちょっとヘンな感じがするんですが、慣れてくるとアダルトサイトの映像がなくても、作業自体が快になってくる。ここがキーです。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
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