“売る”ためのコミュニケーション──お客様の3つの感覚モード(3)コミュニケーションをワンランクアップ!(2/3 ページ)

» 2006年09月19日 23時13分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

3つの感覚モードを活用した接客──車を売る

 売りたいワンボックスバンが1台あるとしましょう。視覚傾向のお客さんの場合は、デザインやフォルムなどの見た目を重視します。ボディには扉があって、もちろん反対側にも扉がある。ここでお客さんが「反対側の扉も、見せてもらっていいですか?」と聞いたとします。

 クルマが置いてあるのはショールームの壁際。「お客さん、あっちもこっちも同じ扉です、見た目は一緒ですよ」と言いたくなりますね。でも視覚傾向のお客さんに対しては、何度も切り返しをして車を動かし、向こうに通して見せてあげて、「どうですか?」と聞いてあげるべきなのです。すると大抵は「ああ、一緒だね〜」ということになります。

 このとき、「そうだよ、同じだよ。何でわざわざやらせるんだよ」と思っちゃダメです。見せてあげることが大事なのです。乗ってみてみたいといったら、乗せてあげてください。景色を見てみたいといったら、見せてあげてください。視覚傾向のお客さんに買ってもらうには、とにかく見せてあげることが大事です。

 次に、聴覚傾向のお客さんです。「乗ってエンジンかけてみていい?」と言われたとします。そのとき、「いや、エンジンはさっきのクルマと同じですよ」と言ってはいけません。エンジンをかけてあげてください。すると大抵、「う〜ん……さっきのと一緒だね」となります。そこで「だったら、かけるなよ!」と思わないで、気持ちよく聞かせてあげてほしいのです。

 「窓を全部閉めちゃっていい?」と聞かれたとき、「いや、札が付いているから全部は閉められないんですよ」って言っちゃダメです。札をはずしてピタッと閉めてあげてください。聴覚傾向の人には、エンジンの音を実際に聞かせてあげて、窓を閉めて静けさを分からせてあげてください。

 体感傾向の人が車を買う場合です。例えば、シートにビニールがかかっているとします。お客さんが「このビニール、はがしてもらっていいですか?」とお願いされたときに、「いや、お客さん、あっちの車と同じシートです。さっき座られらたのと一緒なんですよ」なんて言ってはダメです。はがしてあげて、座らせてあげてください。すると、「う〜ん、確かに同じ感触だね」となります。そのときに「だったらはがすなよ!」と思ってはダメで、快くビニールをはがして、座らせてあげて、触らせてあげてください。

 このように、どの感覚傾向かによって、買う理由が変わってきます。

3つの感覚モードを活用した接客──家を売る

 もう1つの例を挙げましょう。家を売るためのセールストークです。視覚傾向のお客さんだったら、「どうですか、この広々した部屋。窓からの景色がこんな風に見えるんですよ」と“見えること”でアプローチします。

 聴覚傾向の人だったら、「どうですか、この部屋の静けさ。ここで思索にふけったり、音楽を心地よく聴いたりすることもできますよ」、と“聞こえること”を中心にします。

 体感傾向の人の場合は、「どうですか、このあったかい空気や雰囲気。温もりを感じますよ」というような話。空気や雰囲気の話をするのです。

 反対に、視覚傾向のお客さんに、「どうですか、この空気、雰囲気」といっても、相手にはよく分かりません。聴覚傾向の人に「どうですか、この見晴らし」っていてもダメです。体感覚傾向の人には、見晴らしや静けさではなく、場の空気や雰囲気を売り込まないと買う気になってくれません。

 「見晴らしが広くていいですね」「広々してますね」など、お客さんが“見えるもの”を話していたら、「そうですか、何が見えます?」「どんな風に見えますか?」と、見えるもので会話をしましょう。このように、ミラリング、ペーシング、バックトラッキングに加え、視覚・聴覚・体感覚を合わせると信頼関係を築くことができます。

接客ワンポイント

 視覚傾向のお客さんには、賄賂にならない範囲で何かモノをプレゼントしてあげるといいです。金額は安いもので全くかまいません。「ついでだったので」というようなものでも、それを見せることができると視覚傾向の人は認められた感じがします。また、頻繁に顔を出すことも大事です。

 聴覚傾向のお客さんには、電話や手紙、メールなどを頻繁にしてあげるといいです。

 体感傾向の人だったら、その場の暖かい雰囲気を伝えてあげてください。


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