4つのレベルでWhatを引き出す自分らしいキャリアを築くために(2/3 ページ)

» 2006年12月07日 13時52分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

キャリアレベルのWhat

 その次は「キャリアレベル」です。ここでいう「キャリア」とは、いわゆる技能とか能力、ステップアップ云々ではなく、「生涯の仕事」という意味です。18〜22歳から60〜65歳、人によってはそれ以降も続く仕事のすべてを「キャリア」といいます。だから、職種の問題ではありません。

 「仕事をする約40年間で、自分は何を大事にしていきたいか?」とか「この約40年間で何を実現していきたい?」と問いかけたときに引き出されるものが、キャリアレベルのWhatです。世間的に立派である必要はありません。ただ、将来、60歳や65歳で定年するときに振り返ってみて、「本当にいい仕事をしたな」とか、「自分はこの人生を全うしたな」と思える仕事は、どんな仕事でしょうか。あるいは、どんな職種・業績でしょうか。

 ある程度、これを想定しておかないと、目先のニーズばかりに応えることになってしまいます。そうすると、走り回って数字を出したし、給料もいいけれど、「何だったんだ、俺の人生」と嘆くことになってしまいます。

ある例──「元の会社に戻りたい」が、仕事に対する意欲を高める

 ある会社から出向で来ているBさん。出向先でも一生懸命、仕事をしていたのですが、ある日トラブルがありました。職場の同僚Xさんが大間違いをして、工場のラインが止まってしまったのです。それまでもミスが多く、「あいつ、なんとかしてくださいよ」と上司に言っていたのですが、上司は、「Xさんは会社の偉い役員の身内だから、そうはできない」と言います。

 さて、半年程たってXさんがまたミスをして、そのことでBさんと言い争いになりました。おまけに、Bさんは暴力まで振るわれました。「ミスして、暴力まで振るうヤツは、クビにしてください!」と言ったのですが、上司は、「やっぱりできない」といいます。「君の気持ちは分かる。君は本当に一生懸命やっているし、正しいのもわかるんだけど、色々事情があってXさんを辞めさせることはできない」と。

 彼は出向元にいたときから、ずっと一生懸命に働く人だったのですが、それ以来、真面目に働かなくなりました。「僕は一生懸命働きません」と決めてしまいました。一生懸命やっても、いい加減で間違えたり、暴力を振るったりするヤツと同じ給料だったら納得できない。絶対、働きません、と決めたのです。

 そこで、困った上司の方が、私のところに相談に来たわけです。彼の気持ちもよく分かる。確かに彼は一生懸命やっている。だからといって、「仕事をしない」と決められては、会社も困る。どうしたらいいでしょう、ということなのです。

 このときBさんに、「今の会社で何が大事で、どんなことしたいの?」と聞いても、「どんなことも、したくありません。とにかく、一切働かないようにがんばります!」みたいな感じになります。気持ちは確かに分かりますよね。がんばっても一緒なら、最低限でいい、と思うのは当然といえば当然です。でも、そこで、「じゃあ、今の会社を忘れよう。何の制約もなかったら、本当はどうしたいの?」と聞くと、「元の会社に戻りたい」といいました。つまり、仕事全般でどうしたいのか(What)というと、「出向元の会社に戻りたい」のです。

 「じゃあ、出向元に戻ろう。どうしたら戻れるだろう?」と今度はHowに落としていきます。すると、「今の会社で2、3年死に物狂いでがんばって業績を出して、それを突きつけて、前の会社に戻してもらいます」ということになりました。

 3、4年したら彼は出向元に戻りますが、働かないと決めて60歳までいられるよりは、立派な業績を出して3、4年でいなくなってしまうとしても、、出向先の会社は得ですよね。本人も3、4年はちょっと辛いけど、がんばったら自分の行きたい会社に戻れると思えば、本人も前向きな気持ちでがんばれます。


 皆さんの中でも、「本当はあんな仕事がしたい」「あんなことを、やってみたい」ということがあるかもしれません。ならば、それをありありと明確にしてみましょう。そして、「じゃあ、そこを満たすために、今の会社で何が学べて何ができるだろう」という視点で、今の会社や仕事に接してみてはどうですか? 今の会社がただ単にヤダと思うだけではなく、「今のところで学べることは何だろう」と考えてみてください。「将来、次にあんな仕事がしたい」「あんな事業がしたい」ということが明確な人ほど、今、それほどやりたくない仕事でも、高い生産性を上げられます。

 将来、というとビジョン型ですが、価値観型から考えると、「自分の仕事で、何を大事にしていきたいのか」を明確にすることです。これが見つからない人ほど、今の会社に不満を言ってばかりで、業績を出せないだけでなく自分の人生自体も充実しないことが多いのものです。

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