4つのレベルでWhatを引き出す自分らしいキャリアを築くために(3/3 ページ)

» 2006年12月07日 13時52分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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「現職レベル」のWhatと「案件レベル」のWhat

 これまで紹介した「ライフレベル」や「キャリアレベル」のような大きいレベルだけでなく、もう少し小さい「現職レベル」もあります。一言でいうと、「今の会社」です。フリーランスの人は、「今の仕事」ですね。

 例えば「ライターとして、何が大事?」と考えてみたとします。仮に「心の平安」が大事だとしたら、仕事を引き受け過ぎると、忙しさで心の平安が乱されてしまいますね。ところが、1年のうち、この3カ月間は忙しいけれど、その代わり、後の何カ月間は少し余裕を持つなど、ちゃんと自分でバランスをとれればいい。それが、なんだか分からないまま、次々と引き受けてしまうと、苦しくなります。

 「新しいことに接する」ことが大事だという場合、さらにもっと新しいプロジェクトを──という話がきて、それが新しいと思えばトライしてもいいでしょう。ただし、慣例通りのものをやってくれ、といわれた場合は、確かにそれは大切なことかもしれないけれど、自分の価値観と合わない、ということで、申し訳ないけれどもお断りさせてもらう方がいい。今の仕事で「何がやりたい」「どうなりたい」が明確になると、職場での自分のポジショニングがわかります。そして、これが、行く行くはキャリアレベルにつながっていくのです。

ある例──「笑顔を見ること」と「売り上げ」の共有点を広げる

 ある営業マンCさんの例です。Cさんは、「こんな会社なんか辞めたい」と言っていました。理由を聞くと、この会社は売り上げばかりうるさく言って、お客さんを騙してでも取ってこい、という風潮がある、それが嫌だ、といいます。そこで「あなたにとって、何が大事ですか?」と聞くと、「お客さんの笑顔を見ることが大事だ」といいます。一見、売り上げと笑顔だと、真っ向から対立します。会社は、騙してでもいいから取って来い、という。Cさんは極端にいえば、売れなくても喜んでもらえればいい。これだと会社を辞めたほうがいいかもしれません。

 しかし、ここで両方の要望の共有点を探ります。売り上げを上げながら、笑顔を見る方法はないだろうか、と考えてほしいのです。「笑顔を見つつ、売り上げを上げるには何ができるだろうか」「その笑顔が、どうやって売り上げにつながるだろうか」と、常にこれを指針にすれば、がんばって営業できるのですね。笑顔を見せてくれれば自分はOK。でも、じゃあ、笑顔だけで終わらないで、ちゃんと売り上げにつなげるには、と考える。自分の現職レベルのWhatと会社のWhatの共有ゾーンを見つけてほしいのです。


 最後に、皆さんが得意かもしれない、「案件レベル」です。まず、1個1個の案件におけるWhatを見つけることです。それが決まれば、Aの案件に関して、Bの案件に関して、Cに関して、Dに関して……と、それぞれの案件に関して、バラバラに決めていった方がいいかもしれないし、この4つはだいたい○○系、この4つは△△系、のように、テーマ別に行ったほうがいいかもしれない、など、さまざまな場合が考えられます。

自分が迷っているレベルにフォーカスする

 以上、4つのレベルを紹介しましたが、キャリアを考える際には、上から下へと考えていきます。まず、「どんな人生を送りたいか」を考えます。それでは、「そんな人生を送るために、あなたはこの40年間にどんな仕事をしたいの?」「何が大事でどんな仕事をしたい?」と考えます。さらに、「そんな仕事をするために、今の会社で何を大事にして、どんな仕事をしたいの?」と考える。そして、「今の会社でそれを大事にするために、1個1個の案件をどんな気持ちで取り掛かる?」「何を大事にしていきたい?」と考えていくのです。

 場合によっては、今の会社でやりたいことは生涯のキャリアとはだいぶ違っているかもしれません。けれど、「これをここで学んで、こういう経験を積むと、将来の仕事に生かせる」という納得感があれば、全然違う業務でもいいわけです。

 例えば、キャリアレベルで、「人と接して、人に喜ばれる仕事をしたい」という人がいたとします。でも現職で、経理をしてくれといわれてしまった。その際に「うわ〜、嫌だ」と思わないで、「経理を学ぶことで、いつの日か自分で起業したとき、経理の部門は得意だ」と考えるようにすると、よりいっそう、人との付き合いにフォーカスできるようになるのです。

 また、前回に「Whatを先に決めて、Howに落とし込むことが大事」と説明したように、それぞれのレベルでも、WhatからHowという流れになります。ただし、これは全部のレベルで考える必要はありません。今、自分が一番困っている部分、「なんとかしたい」「曖昧だ」と感じているところにフォーカスすればいいのです。

 例えば、案件レベルで迷っているとします。「このAの案件をどうしようか」と迷ったときに、「この案件に関して、自分は何を語っていこうかな」とか「この案件、最後どんな風になればいいんだろう」「お客さんが、最後にどんな気持ちになって、どんな状態だとしたら、これが成功するんだろう」と、想像しながら案件を進めていくことです。

 あるいは、「今の会社で、本当にいいのかな」「自分は何をしたいんだろうと」迷ったときに、「今の会社で何が大事だっけ?」「どうしたいんだっけ?」と考えるのです。仕事全般にやりがいを感じない場合は、「自分は、本当は仕事で何が大事だっけ」「どんな仕事をしたいんだっけ?」と考える。

 迷ったときは、どこの問題で悩んでいるかを明確にして、その部分のWhatを引き出すことで、常に軸のしっかりした人生になります。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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