4つのレベルでWhatを引き出す自分らしいキャリアを築くために(1/3 ページ)

人には、自分の価値観を大事にする「価値観型」と、将来のありたい姿を目指す「ビジョン型」の2タイプがあり、価値観とビジョン=Whatを見つけ出すことで、やりがいが生まれる、ということを第1回と第2回で紹介しました。今回は、このWhatに関して詳しく見ていきます。

» 2006年12月07日 13時52分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

自分らしいキャリアを築くために
  連載タイトル
1 キャリアに「目標」は必須ではない
2 判断&行動の基準「What」を明確にする
3 みんな「どうしたら?」は得意だけど……
4 4つのレベルでWhatを引き出す
5 どうやって“What”を引き出せばいいか
6 個人のWhatと会社のWhatの共有ゾーンを広げよう
7 Whatを見つけて、今いる会社でオンリーワンの自分になる

 1回目では、ビジョン型と価値観型があることを紹介しました。型に分けることではなく、自分の傾向を見つけることが大事です。行き着く先は一緒なので、行きやすい道を見つけてください。将来のありたい姿を考えることで動機付けされる人も、日々、自分の価値観を満たしながらこなしていく人も、結果的には行きたいところに行けます。そして、部下も上司も同僚もお客さんも、みんな価値観とビジョンは違います。相手に合わせて対応してください。

 2回目では、旅行だったら、どこに行きたいか、という目的地や、なぜ行きたいのかという理由を聞きました。ところが、「人生でどんな人生を送りたいか」「どうしてそんな人生を送りたいのか」とか「この会社でどんな仕事がしたいか」「どうしてそんな仕事をしたいのか」「この会社での自分らしさってなんだろう」ということは、問わずにいるかもしれませんね。

 昔は、そんなことを考えなくても、とりあえず会社がいうように、一生懸命働いて、給料だけもらえればよかった。でも今は、多少給料が下がってよければ、会社はほかにもあるし生計は成り立ちますね。ですから「この職場で自分が何を満たせるか、何を実現させたいか」が大事です。この「What」が分かっていないと、ラットレースに入って疲れるだけです。

 このように、Whatの中には、「こだわり」「自分らしさ」「価値観」つまり「自分にとって何が大事?」と聞いて引き出されるもの、あるいは、「夢」「ありたい姿」「ビジョン」つまり「どうなればいい?」と聞いて引き出されるものがあります。Whatを先に見つけて、1つ1つ、行動(How)に落としていきましょう。そして必ず、HowはWhatを基準にしましょう。

4つのレベルのWhat? ライフレベルのWhat

 そして、今回は「4つのレベル」を紹介します。実はこのWhatには大きく4つのレベルがあるのです。

  • ライフレベル──仕事以外すべて
  • キャリアレベル──生涯の仕事
  • 現職レベル──現在の会社や役職、仕事
  • 案件レベル──携わっている目の前の案件としての仕事

 まず1つは「ライフレベル」です。ライフレベルのWhatとは、“自分の「人生」で何が大事?”“自分の「人生」は、どうなればいい?”という問いかけの答え、自分の人生での価値観やビジョンです。子供時代から現在まで、「自分は何が好きで、何がやりたかったか」という問いかけでもいいです。ライフレベルを別の言い方でいうと、「仕事以外すべて」です。家族、趣味、ライフワーク、コミュニティ、友達、友人などですね。こういう部分も、ないがしろにできません。

 空間軸では仕事以外すべてですが、時間軸でいうと「就職前と退職後」です。「学生時代」を切り捨てるわけにはいかないし、「定年になったら人間終わり」というわけでもありませんね。定年の年齢も60歳とは限りません。65歳の人もいれば、シルバーキャリアで新しい仕事を始めて、80歳まで仕事を続ける人もいます。80歳以降、定年後、人生をどう過ごしたいですか?

 ところで、「ビジネスで、なぜこんなことが大事か」と思われるかもしれませんので、その理由を言いましょう。

 ほとんどの人が18〜22歳くらいから60〜65歳くらいまで、約40年間仕事をします。しかしその40年間、どんな職種であろうとも常に右肩上がりではないですね。自分がスランプになったり、会社自体の業績が落ち込んだり、市況や景気が落ち込むこともあります。そのときに、仕事以外で常に支えになるものがあれば立ち直れます。でも、仕事以外での価値観やビジョンがないと、もし仕事がダメになったら、自分を支える軸が何もなくなってしまい、ポキンと折れやすくなってしまいます。ですから、ライフレベルのWhatを持っておくことが大事なのです。

ある例──「子供」のためにがんばれる

 営業するには気が弱すぎて押しが足りない──。そんな優しいけれど、実績を上げられない営業マンAさん。でも子供が生まれてからは変わりました。生まれて間もない8カ月の子供の写真をケータイの画面に入れて、「パパがこの仕事、絶対取ってくるからね! パパ、カッコいいんだよ」と、子供に話しかけると、営業でも強く押せるようになって、業績も上がりました。

 子供は仕事とは直接関係ありませんが、自分の人生で大事なものがあるから、それを守るためにがんばれる、という人もいます。

ある例──「プラモデル」を作りたいから、テキパキ働ける

 ある30代前半のコンピュータプログラマーの男性です。「どうして、この会社に入ったの?」と聞くと「たまたま、バブルのおかげで入った」とか、「将来、何をしたいの?」と聞くと「まあ、会社に残らせてもらえればいい」とか、まったく意欲が感じられませんでした。「好きなもの、やりたいことは?」と聞いても「いや、特にないです」と言っていたのですが、めげずに「それでも楽しいときは?」と聞くと、「プラモデルを作るのが好き」ということがわかりました。秋葉原に行って、何万円もするものを買ってきて、塗料を塗ったりするのが好きだ、とイキイキと、とても楽しそうに話してくれます。

 しかし途中から顔が曇ってくる。「どうしたの?」と聞くと「プラモデルが好きなんだけど、作る時間がない。プラモデルが来ないで、プログラムの注文ばかり来る」と(笑)。仕事が多過ぎて作れないんですね。「仕事を早く終わらせればいいのでは?」と提案すると、「早く終わらせても、どんどん、どんどん、次から次へと来るから、こなしてもキリがない」という。「でも、1カ月でおおよそ、こなせる範囲っていうのは決まっているのでは?」と聞くと、「どんなに多くても、確かにこれ以上は無理、というところはある」と答えます。「じゃあ、その量を決めて、その量を平日にこなすようにして、なんとか土日はプラモデル作る時間をつくるために、がんばってこなしてみたら?」と話しました。

 今までは、やってもやってもキリがないから、タバコをふかしながらダラダラ仕事をしていたんですね。でも、なんとしてもプラモデルを作りたい。できれば平日の夜も、7時か8時には帰ってプラモデルを作る! そのために、どうしたら能率よく仕事がこなせるだろうか、と考え始めたのです。やる量は自分で決めてしまうので、際限なく仕事が来ることはない。しかも、その量は「土日にやっても、物理的に無理」というようにしておけば、誰からも文句は言われません。

 最終的には、仕事の能率がとても良くなって、土日に出社せずプラモデルを作れるようになりました。


 このように、Whatが子供やプラモデルでもいいのです。プラモデルを作るために、今の会社でどう業績を上げればいいか。こんな風に、今の仕事や案件に落とすことができ、結果的に、その組織の生産性にもつながります。

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