連載
» 2006年11月24日 11時48分 公開

自分らしいキャリアを築くために:みんな「どうしたら?」は得意だけど……

人には価値観型とビジョン型の2つの傾向があります。この価値観とビジョンを合わせて「What」と呼ぶことをお話ししました。今回はなぜHow(方法)よりもWhat(自分軸)が大事なのか、お話しします。

[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

自分らしいキャリアを築くために
  連載タイトル
1 キャリアに「目標」は必須ではない
2 判断&行動の基準「What」を明確にする
3 みんな「どうしたら?」は得意だけど……
4 4つのレベルでWhatを引き出す
5 どうやって“What”を引き出せばいいか
6 個人のWhatと会社のWhatの共有ゾーンを広げよう
7 Whatを見つけて、今いる会社でオンリーワンの自分になる

 私たちは、学力、能力、知識、スキル、資格、戦略、マネジメント……こういうものはいっぱい学びます。「どうしたらうまくできる?」「どうしたら早くできる?」「どうしたら、いいポストが手に入る?」「どうしたら顧客を増やせる?」「どうしたら勝てる?」……。

 「どうしたら?(How)」を考えるのは得意だし、学校や会社でも学んできたのですが、「何のために、それをするのか?」とか「やったらどうなるのか?」ということをあまり考えませんでした。昔のように年功序列の大企業に入っていたら、こんなことは考えなくていい。とにかくどうしたら業績が上がるかが大事、給料さえ上がれば幸せ、だった。ところが今の時代は、そうもいきません。自分の軸を持たなくてはいけない。すると、やっぱりWhatが大事ではありませんか?

 少し厳しい話をしましょう。私の友人で、米国でMBAをほとんどオールAの好成績で取得した人がいました。ところで、MBAはスキル、つまり「How」です。マネジメント、ファイナンス、アカウンティングと、色々できてHowは十分です。ところが“何のために”MBAを取ったのか、MBAを取って“どうなりたい”が、ないまま終わってしまいました。彼は、今も人生が充実しているとはいえず、やりたいこともできていません。

 もう1人、こちらは米国で知り合った中国の方です。彼には「どうなりたいか」が明確にありました。日本のあるものを輸入して、中国で売りたいという「What」、つまり「ありたい姿」があったので、MBAの成績(How)はそんなに良くなかったけれど、今は大成功しています。

 さらにもう1人、途上国から来た友人です。彼に「なぜMBAを取ったの?」と聞くと、「母国にいる家族や親戚に、ちゃんとご飯を食べさせてあげて、服を着させてあげたい」と答えました。「何のために?」(What)がありありと実感でき、明確にあるので、彼も成功しています。

 「何のためにやっているのか?」「どうなりたいからやっているのか?」を「自分軸」とも言っています。「What」といってもいいし、「自分軸」といってもいいですが、これが明確にある人は、時代や世の中、会社に左右されずに自分の行きたい人生を歩めます。そして、この「What」の中には「価値観」と「ビジョン」があるので、価値観を軸にしたほうがいい人もいれば、未来のビジョンを軸にしたほうがいい人もいるのです。

 つまり、“何のために?”“自分にとって何が大事?”という「価値観」と、“本当はどうありたい?”という「ビジョン」をまとめたものが、総称の「What」です。Whatは、価値観型、ビジョン型、どちらの傾向が強い人にも見つけられるものなのです。

What
価値観 ビジョン
自分らしさ ありたい姿
何のために? どうありたいから?
自分にとって何が大事? 本当はどうありたい?
   
How
目標・手段・資源

WhatからHowが導き出される

 「What」と「How」の関係性を明らかにしたところで、先ほど定義した「ビジョン」(What)と「目標」(How)の違いを、例を出して、もう一度紹介しましょう。

 2カ月後に5キロやせたいという、ある女性Cさんの話です。“2カ月後に5キロやせたい”というのは「目標」なので、上の図だと「How」になります。

 さて、「では、何のために5キロやせたいの? やせてどうなりたいから、やせたいの?」と聞いていくうちに、その理由が分かってきました。Cさんがいうには、英会話スクールにステキなイギリス人の講師がいて、「先生とデートがしたいから(やせたい)」というのです。そこで、具体的に「ありたい姿(ビジョン)」を聞いていきました。どんな風にしたいのか、要するに結婚したいのかつき合いたいのか、恋愛したいのか、です。すると実は、お台場あたりのステキなカフェで、2時間くらいイギリスの話ができればいい、というのです。Cさんは結婚されている40代の方で、いまさら大恋愛してどうこう……ということは考えていないのですね。「あのステキな憧れの人と、2〜3時間お茶ができれば──」もうそれだけで天にも昇るような気持ちなのです。これが、「ありたい姿」です。「ビジョン」というと大げさなのですが、“先生とお台場のカフェで”というのはビジョンなのです。

 次に、「じゃあ、やせたいのか、デートがしたいのか、どちらがいい?」と聞くと、「デートがしたい」と答えます。「でも、2〜3時間、イギリスの話を英語でするだけだったら、個人レッスンでいいのではないですか?」と聞いたら、「もちろん、個人レッスンでいい」と言うのです。それでは、3週間後に個人レッスンを受けられるように、先生に「個人レッスンの時給はいくらですか」と聞きましょう、という話になりました。私と話したのはそれだけです。

 ところが、なんとCさんは1カ月後に5キロやせたのです。先生とデートだと思うと、胸がいっぱいで大好きなチーズケーキが食べられなくて、やせちゃったらしいのです(笑)

 こんな風に、“5キロやせたい”といきなり目標を設定するのではなくて、いったん、“何のために?”“どうなりたいから?”と「What」の方に上げるのです。そうすると、“先生と2〜3時間、カフェでお茶を飲みながら英会話のレッスン”というのが出てきます。そうすると、“5キロやせる”という「目標」が“個人レッスン”に変わりますね。──というわけで、目標には縛られないでください。

 仕事でも、例えば“1200万円、売り上げを上げる”と目標を決めますが、「じゃあ、何のために1200万円なのか」「どうありたいからなのか」を考えましょう。「シェア○%になりたいから」だったら、1200万円じゃ足りないかもしれない。あるいは、金額じゃなくて個数かもしれない。そうすると目標が変わってくるわけです。ビジョン抜きでやると「1200万円上げたけれど、疲れるだけだった」「なぜこんなこと、やっているのだろう」とモチベーションが下がります。元々、この「なぜ」がないからですね。

 読者のみなさんも、目標設定をする前に、少なくともあなたがやっている仕事が、どういう意味があってやっているのか、やったらどうなるのかを考えてみてください。なんだか分からないまま、言われたからとやっていること、ありませんか? 「ああ、そうか。会社はこうなって、最後にこうなるからやっているんだな」と理由が明確になると、取り組む姿勢が変わってきます。

Whatはささやかでもかまわない

 最後に一言、付け加えます。「How」を決める前に「What」を明確にすることが大事ですが、Whatというのは、道徳的に素晴らしい必要はありません。例えば、ある英会話スクールにすごく熱心に通ってくる中年の女性がいました。「なんでそんなに熱心に英会話を勉強しているんですか?」とWhatを聞きました。すると照れくさそうに、「パート先に来たカッコいい外国人のお兄さんに、英語で受け答えしたいから」と答えました。この程度のもので十分なのです。

 みなさんの周りでも、英会話をやりたいと思ったことがある人は多いでしょう。でも続いている人は何人いるでしょうか。なんとなく必要だとか、グローバルだから、といったWhatが曖昧な人は続きません。でも「3カ月後にアメリカに転勤だから」とか「英語で生のベースボールを見たいから」とか「旅行に行くときに、いろんな国の人と喋りたいから」など、“どうなりたいから”ということが明確にある人は身に付きます。逆に、どんなに英会話を学べるHowを知っていても、Whatがないとやらないし続きません。ここでもWhatが大事です。

 では「Whatはどうやって引き出すの?」ということになりますね。これは次回に詳しくご紹介します。


ks_hiramotobook.gif

ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ