実践! 一人で思い浮かばないアイデアは同志を募って集める【解決編】シゴトハック研究所

アイデア出しにWikiが使える──ということはけっこう知られています。しかし、書きっぱなしになってはいけません。今回はWikiと対面ミーティングを連動させる方法を考えます。

» 2006年12月08日 14時53分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:Wikiを使ったアイデアブレストの効果をより一層アップさせるには?

コツ:Wikiと連動した定期ミーティングを開催する


 戦国時代、対峙する各陣営の本陣では総大将を筆頭に各部隊を率いる武将が集まって軍議を行っていたでしょう。ここでは、各武将がそれぞれの前線で集めてきた敵軍の動きや状況といった情報をシェアし、自軍の戦略および戦術を組み立てます。この意思決定の場では、1つの大きな目的が共有されていたはずです。それは、例えば「どうすれば味方の犠牲を最小限に抑えながら勝利を収められるか」といったことです。

 前々回の記事でご紹介した現代版の「軍議」においてもこの考え方が踏襲されています。「お互いの技術力の向上を目指す」という共通した目的のもとで、めいめいが情報を持ち寄り、技術交流を行っているのです。

 ここで重要なことは、ただ集まって話し合うのではなく、めいめいが「材料」を持ち寄ることです。

Wikiブレストと対面ミーティングを連動させる

 Wikiによるアイデアブレスト(Wikiブレスト)が、ミーティングの「材料」を集める上で役に立ちます。言い換えれば、Wikiだけで完結させるのではなく、参加メンバーが実際に顔を合わせて話し合うミーティングとセットで運用するわけです。

 以下は、ミーティングも含めたWikiブレストの運用手順の例です。

  1. Wiki上に、ある一人のメンバーが課題や思いつきを書く
  2. これに対して、別のメンバーが、課題に対する解決案や関連する話を書き足す
  3. 最初に課題や思いつきを切り出したメンバーが、そのページの編集責任を負う

 手順といっても、これだけですが、ポイントは「言い出しっぺ」が編集責任を負うことです。こうすることで、その件についてはその人がリーダーとして、何かしらの結論や次につながる発展を導き出す役割を担うことになります。掲示板でいえば、「スレッドを立てた人」に近いかもしれません。

 このようにして、めいめいが思い思いの課題を立ち上げていくことで、同時に複数のディスカッションが進むわけです。

 ほかのメンバーから質問されたり、コメントをもらうことで、一人で考えていたのでは思いつけなかったようなアイデアが浮かぶようになります。特に質問は、自分では当たり前だと思っているために、あえて言葉に出さないようなことを引き出してもらえるため、非常に有効です。そして、「あ、そういう前提だったのか! であれば……」といったように、ほかのメンバーからもより多くの情報を得られるでしょう。

 こうしてWiki上に集積された議論をベースに、定期的に参加メンバーで集まってミーティングを開きます。このミーティングでは、Wiki上にある「スレッド」を1つ1つ取り上げて、口頭でディスカッションを行います。

 すでに議論し尽くしたと思っていることでも、改めて顔を合わせて意見交換をすることで、キーボードから入力するよりも豊かな情報を交換できますので、具体的な行動プランを立てやすくなります。

 ただし、参加人数が増えるとどうしても参加意識が薄くなるメンバーも出てきてしまいます。御輿(みこし)の担い手が多くなると、手を抜く人が出てくる状況に似ています。そもそも御輿に手が届かなくなるくらいに人が群れていれば、これはやむを得ないことでしょう。

 そういう意味では、Wikiに参加するメンバーはある程度絞った方がよいといえます。1人1人がそれぞれの役割を果たさなければ何も進まないくらいの方が緊張感を保つことができるからです。

ミーティングで集まった時点で、すでに材料がそろっている

 このように、普段からWikiでアイデアをシェアしておくことによって、ミーティングの役割が変わってきます。従来であれば、ミーティングの最初に材料となる情報を議論の「まな板」の上に並べるステップが必要ですが、Wikiでシェアが済んでいれば、「あの件だけど……」という具合に、すぐにディスカッションに入ることができるのです。

 つまり、Wikiを活用することで、ミーティングの時間をより濃く使う、すなわち人が集まって顔を合わせて議論するということに集中できるわけです。顔を合わせなくてもできるような情報共有は、先にWikiで済ませておけば、時間の節約にもなりますし、記録も残ります。

 ちなみに、前々回および冒頭でご紹介した「軍議」ですが、オンラインではWikiは活用していないものの、メーリングリストがあり、ここで次回の「軍議」の課題が発表されたり、持ち寄られたトピックなどがシェアされたりしています。

 さらにこの会社では、「軍議」の参加メンバーを社外にも拡大し、広く技術交流を図っているそうです。会社の枠にとらわれず、特定のテーマに関心のある人同士で、こういったオンライン+オフラインのコミュニケーションベースを作っておくことは、仕事の深さと広さを同時に広げる上で役に立つでしょう。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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