「出なくともいい会議」はどこから?樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

筆者は会議の出席率について、面白い“算出方法”を知っている。年代別に、このくらいの割合で会議には出席すべき、あるいは欠席できる、というものである。新人から5年目あたりの社員が対象だ。

» 2007年09月21日 23時00分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 入社したばかりの新入社員が、最も緊張するのが会議だろう。新米のビジネスパーソンとして大きなショックを受けたり、失望感を持つのが会議かもしれない。ほとんどの場合、新入社員にとって会議とは緊張感100%の場であり、意見があっても“異議なし決定”を強いられることが多い。

 「これでは……」と失望し、「あの時、あの時代を、もっと有効活用しておけばよかった」と、素晴らしい自由の時間であった学生時代に思いを馳せるわけだ。少し昔を思い出しては、頬杖をつき、鉛筆を転がす。すると机の向こう側に落としてしまい、落ちた鉛筆の音が会議参加者の眠気を妨げる。ギロりとニラまれ慌てて鉛筆をひろう。悲しい瞬間だ。

 筆者は会議の出席率について、面白い“算出方法”を知っている。読者のみなさんはご存知ないかもしれないが、年代別「適正出席率」の計算方法があるのだ。年代別に、このくらいの割合で会議には出席すべき、あるいは欠席できる、というものである。以下にご紹介しよう。新人から5年目あたりの社員が対象だ。

 なお、会議を欠席する理由は、それ以上に値打ちのある仕事が存在するからだ。決してサボるために、会議を欠席するのでは話にならない。肝に銘じておこう。

入社〜6カ月以内(100%出席)

 この期間は、2日連続で朝まで痛飲しても、風邪をひいても、台風が襲来しても、地をはってでも会議には出席しなければならない。この間の出席率実績が、その後数十年間に渡り、最適な会議出席率を求める計算の「評判基礎算定ベース」となるからだ。1回休んだだけでも「あの新人、堂々と会議をサボりよって、俺だって無理して出てるのに」と年長の参加者。若者にも言いたいことはあろうが、事の真偽はどうあれ評価は下がるものなのだ。これが2回3回と続けば、「彼は会議をよくサボる」「会議ではほとんど見たことがない。誰か文句言ってやれ」と常習犯に仕立てられてしまうのである。

 実のところ、誰も新人たちの発言を期待していない。でも参加者の心中は「会議で何かを学びとってほしい」なのだ。だから、新人たちに「黙って座って勉強しろ」と望むわけなのである。

6カ月〜12カ月以内(顧客数、外回り距離、客先からの電話などによる)

 6カ月以降は、担当している顧客数、外回りの距離、客先からの電話件数などに会議の出席率が影響を受ける。何度も電話をしてくるような扱いの難しい客を持てば、同僚からも同情を集めやすい。会議の出席率が下がっても許されるわけだ。

 さらに大きく出席率が最適化できるケースは、自己犠牲の精神が豊かなグループリーダーの部下になること。新人を自分のカバン持ちと思い、外回りはまだしもトイレまで付き合わせ、会議でも“隣に座ってろ”風情の先輩がいる一方で、「会議には代わりに出ておくから、お前は客先に急げ。早く1人でできるようになれよ」という上司もいる。

2年目〜3年目(出席率75%程度)

 1年たった後は会議の内容にもよるが、4回に1度程度の不参加も通用する。「客先から急な召集がありました」「お客への説明会で直行します」といった理由で、会議を回避できるようになる。休むときは、必ず会議の事務局に報告すること。会議の開会の時点で、「○○くんは××の理由で本日は欠席です」と、出席者に対して説明してもらうことが“サボり疑惑”を防ぐ。

 もちろん「3回出席したら1度休む」などの規則性は絶対に避けるべきだ。「あいつ、次回は休む回だぜ」と言われたらおしまい。会議を定期的に休むと、どこかで仕事をしないでサボっていると言われ始める。

3年目〜5年目(関係する案件が議題の会議は必ず出席)

 3年目〜5年目くらいになると、会議内容にかなり自分自身が関係してくる可能性が出てくる。該当案件の議題が出る会議は外せないのである。会議を休んで何食わぬ顔をして自席で仕事をしていると、会議終了後にみんなが部屋に戻ってきたとき、気まずいムードになることもあるので注意。

 この年代になると、会議を招集する側になることもある。立場が逆になるわけだ。いかにみんなに会議に出席してもらうようにするかがポイントとなる。勝手なことで、今までは会議に出席する率が非常に低かった人が会議の事務局になると、ビシビシ取り立てるようなこともあり不評を買う。

5年目以降(出席しなければならない会議が増える)

 5年目を過ぎると、会議の出席率は高くなる。会議の内容も深く、濃くなっていくことを覚悟しておこう。だから年はとりたくないのだ。管理職の給料は、会議管理の費用の一部だと考えてもいいぐらいだ。



 上記のように会議の出席率は、年次と役職が上がるにつれて上昇する。冒頭にも書いたが、会議を欠席する理由は、それ以上に価値がある仕事のためだ。少なくとも会議に出席するほかの参加者が納得する内容でなければならない。決してサボるために、会議を欠席するのでは話にならないのである。

今回の教訓

出席率の最適化への道は険しい──。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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