会話をスムーズに運ぶには?【解決編】シゴトハック研究所

難しい話題に入りそうになると、頻繁に「大変ですね」と言っていませんか? 会話に必要な相づちでは、「思考停止語」を避け「行動促進語」を使うようにしましょう。

» 2007年10月12日 16時24分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 会話をスムーズに運ぶには?

 コツ:「これからのこと」を一緒に考えられるように会話をリードする


 前回は、相づちで会話をリードする方法をご紹介しました。相づちは、相手からより多くの情報を引き出すために欠かせないものです。でも、使い方を誤ると会話の流れを遮りかねません。そして、相づち以外にも、会話の展開にブレーキをかけてしまう言葉というものがあります。

 例えば、

  • 「難しいですね」
  • 「参考になります」
  • 「大変ですね」

 などです。「とりあえず何かいわなくては」という局面では非常に便利な言葉ですが、多用するのは避けた方が無難です。

 例えば、「うちの会社のサイトも、デザインを一新して、新しく社員のブログなども始めたいのですが……」と求められているのに、「そうですか。大変ですね……」などと応じてしまったら、お互い会話を進めていく上で、あまりいい展開は望めないでしょう。

 このように答えられることは、相手の立場からすれば拒絶されているように聞こえるかもしれません。「大変なのは、百も承知だ!」と内心反発するかもしれません。

 あるいは、何をいわれても「参考になります」「勉強になります」などと応じるのでは、ほかに適当な言葉が見つからない、という場合もあるにせよ、「この人は本当にそう思っているのだろうか?」といぶかしく思われても仕方がないでしょう。

 ここではこれらの言葉を、会話中のお互いの思考を停止させてしまいかねないことから、「思考停止語」と呼ぶことにします。求められている答えをいつでも思いつくのは容易ではありませんが、可能な限り「思考停止語」を避け、より建設的な応答を目指したいものです。

「思考停止語」を「行動促進語」に変換する

 「思考停止語」の問題点は、一言でいえば問題解決に全く向かっていないところです。それゆえ意識が後ろ向きになり、思考にも会話にもブレーキがかかってしまうのです。

 ここは発想を転換し、意識を問題解決へと向かうように会話を発展させるようにします。

 例えば、「会社のサイトデザインを一新する」のが大変なのであれば、「それは大変ですね」という代わりに、「もしそれを実行に移すとすれば、とりあえず何が必要になるでしょう?」というように、前向きに話を進めるようにします。その方が建設的ですし、意識のフォーカス(焦点)を前へと促すことができます。

 このような言葉を、会話の流れを止めてしまう「思考停止語」に対し、会話の展開を促すという意味で「行動促進語」と呼ぶことにします。「行動促進語」は上記のように、質問の形式を取っていても、その目的は質問の答えを知るより、対話している相手の問題解決意欲に火をつけることです。

自分が相手になったところを想像して発言してみる

 ここで、どうすれば「行動促進語」を発することができるようになるか、という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。難しい話題に入りそうになると、頻繁に「大変ですね」といって、話題をそらしていた人にとっては、問題解決に意識が向くように会話をリードしよう、などといわれても、容易ではないかもしれません。

 とはいえ、それほど思い悩むことではありません。問題を解決するのは、あなたではなくて相手だからです。それゆえ、相手の立場に立って考えてみること、それによって自然と問題を解決する方向に意識が向かうはずです。

 ただし、「相手の立場で考えてみろ」とはよくいわれるものの、実はそれが難しいことです。相手のことをよく知らなければ、「相手の立場」がどういうものか想像もつかないからです。

 そこで、「相手の立場に立って考えてみる」のではなく、もっとシンプルに「相手になってみた」ところを想像してみましょう。実は人間にはかなりの演技能力があって、目の前の相手になったところを想像するのは意外と難しくありません。

 実際自分が相手になってしまったところを想像しただけで、例えば、会話中にどんなことをいわれればやる気がアップするか、がよく分かるものです。少なくとも「これから自社のサイトを立ち上げなければならないのですが……」と言ってみて、「難しいですね」などといわれたのでは、少しも嬉しくないことが実感できるはずです。

 もし同僚の協力を仰げるなら、同僚の人にあなたを演じてもらい、あなたは「相手」を演じる、というロールプレイをしてみると一層効果的です。あなたがいいそうなことを同僚にいってもらうことで、「相手」を演じているあなたがどう感じるかが如実に分かるからです。

 「確かに、こんなことをいわれたら腹が立つなー」

 「うわー、そういう言葉はもっといってほしい!」

 「もう少し踏み込んできてもいいのに……」

 などなど、言葉ではなく心で受け止めることができるようになります。さらに、定例ミーティングなどで、定期的にこのロールプレイを実践しておくことにより、チームの資産である「行動促進語」のボキャブラリーが増えるという効果も期待できるでしょう。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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