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» 2007年11月02日 10時28分 公開

ビジョン型と価値観型 タイプ別アクションプラン──価値観型・後編成功するのに目標はいらない

価値観型の人のアクションプランを作る方法・後編では、具体的なプラン策定と実行の方法に入っていきます。目標を敢えて持たない、“価値観型の会社経営”についても触れます。

[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 今回は価値観型のアクションプランの立て方の最終回です。具体的にアクションプランを立てて、それを実行する際のポイントにも踏み込んでいきましょう。

具体的なアクションプランを立てる──テーマを決めてアクションする

 ここから価値観型の人の具体的なアクションプランを立てます。やり方は大きく2タイプに分かれます。

 1つは、毎日なり毎週で、価値観の全部を満たすようにアクションをしていくパターン。もう1つは、今日なり今週なりで、満たされ度を上げたい価値観を1つ選んでアクションをする方法です。例えば「チャレンジ」が1しかなかったら、ちょっと少なすぎだから、今週はとにかくチャレンジングなことをいろいろする週にしよう、というような方法です。毎日/毎週、0.1ずつでもいいから全部の価値観を上げるアクションをやっていく方法か、テーマを決めてアクションしていく方法かの2つです。

平本 全部を上げていくか、テーマを決めてそれを上げるか、どちらの方法にしますか?

S 僕はテーマを決めてやる方がいいかな。毎日とか毎週、全部満たそうとすると、それはそれでまた辛い気持ちになってきそうです。

平本 そうですか。でも、全部やる方が安心する人もいるんですよ。1日1個、この価値観に関してこれ、この価値観に関してはこれ、というようにね。やることは、ちょっとしたことでいいんです。「チャレンジ」だったら、「近所のおばさんにおはようと言う」とか。言えた、これで0.5上がる、という感じです。

S う〜ん、できないな。怠惰な人間なのかもしれない。

平本 いやいや、そういうわけではないですよ。逆に言うと、おはようと言ったらそれで終わってしまうので、簡単に済ましているともいえます。人によってやりやすい方法があるということですね。では、Sさんはテーマを決めてやっていくとして、1日1個にしますか、週1個にしますか?

S 週1個にします。

平本 それが一番無理なくやれると思いますね。じゃあ、Sさんの場合は、テーマを決めて1週間やることにしましょう。どれにしますか? 必ずしも低い数字のものをやらなきゃいけないということはありません。例えば、仕事の関係で、今週は心のゆとりが持てないと分かっている場合は低いままでもいい。数字の低さ、高さは関係ないです。どの価値観を上げたいですか?

S じゃあ、今週のテーマは「知識欲」で。

平本 では、今週は知識欲というテーマでアクションを起こします。例えば、「今週は本を5冊読む」と決めてやるのもよし、毎日朝起きてから「今日1日、○○ができたら知識欲の数字がちょっとでも上がるな」とやっていくのでもいいです。どのようにしますか?

S 今週覚えるもの、例えば“海外投資”みたいな課題を決めて、それを自分なりに納得できるところまで、本でもいいし、ネットでもいいし、人に話を聞くでもいいので、学べるといいかな、と思います。

平本 じゃあ、今週は海外投資に関して、本を読むなり、友だちに聞くなり、とにかく知識をむさぼるということになります。その際、毎日「今日、知識欲を満たすのに何ができるかな」と考えながら、1日を始めてほしいんです。「今日はちょっと時間があるから本を読もう」とか、「今日はあまり時間がないけれど、そういえば詳しいヤツがいたからちょっと話を聞こう」とか、「週末時間があるから、あいつにメシでも奢って、直接会って話を聞こう」みたいに、今日何をやろうと考えてほしいのです。

 そして1日の終わりには、「知識欲は今日、どれくらい上がったかな」と思い返してほしいんです。「今日は本をスルスル読めたから、もう6まで行っちゃった」とか「本が難しくて、さっぱりちんぷんかんぷん。全く変わっていない」とか。こうなると苦しいですけれど、こんなふうに毎日、知識欲を満たすために時間を費やす。そして1週間経って、「4だったのが6に(8に)なった」と思えたら、次の週でもう一度知識欲をテーマにしてもいいし、「じゃあ、これはこのペースで置いといて、次のテーマに行こう」と別のテーマに移ってもいいです。また、決めたから絶対これを1週間やらなきゃダメ、ということでもなくて、3日くらいやって「もう知識欲は10になった」と思ったら、週の途中で別のテーマに変えてもいいのです。例えば、次だったらどれを選びますか?

S 次だったら「独立感」にします。

平本 そう、必ずしも低いものを選ぶ必要はないです。独立性を上げるために、1週間、何ができるでしょうか。例えば、なんとかのプロジェクトを自分でやるとか、そういう感じですか?

S そうですね。上司がやっているようなものを、先取りして出してみようとか。

平本 それもいいですが、もっと小さいことでもいいのです。例えば「上司に必ずNOを言う」とかね。「お茶入れて」と言われたら、「今、手が離せないんです」と言って断るとか。「ここはこっちの方向に直しておいて」と言われたら、「いや、これだけはどうしてもこのままで」と言うとか。戦うとか反発するとかではなくて、一日に1回必ず小さなNOを言うことで、自分の独立性を保つということです。こんなのもありますよ。妻がいつも自分の好きじゃない料理ばかり作るので、週に1回だけは自分の大好きなものを頼む。「どうしても、スパゲティナポリタンが食べたいから、週に1回だけはそれを作ってくれ」と言うとか(笑)。でも、そうすると独立性が出てくるんですよ。


全部の価値観を満たすアクションプラン

 今回はあまり詳しくご紹介しませんが、全部の価値観を満たしていく方法もあります。例えば、Sさんの価値観に沿って1日1個ずつやるとしたら、こんな感じになります。

  • 知識欲──1日1個、自分が知らないことを見つける。そして、その答えを探そうとする。
  • 経済的安定──1日1個は、経済的安定に貢献するアイデアを書き出す。
  • チャレンジ──毎日、いつもは声をかけない人に「おはよう」という。
  • 好奇心──朝起きて会社に着くまでに、今まで気が付かなかったことを1個見つける(例えば、気づかなかった広告、建物、看板などに1個でも気が付くようにする)。
  • 独立感──必ず1日1つ、上司に限らず誰かにNOを言う。
  • 心のゆとり──1日、最低15分は喫茶店に入って、仕事も家も忘れて深呼吸してお茶を楽しむ。

 全部をやるにせよ、テーマを1つ決めてやるにせよ、大事なのは、いつもいつもこのグラフを見ながら、今、何をやっているのか、そして、自分の価値観が満たされているのかを確認することです。

価値観型の会社経営もある

 会社は経営計画が必要で、上場会社になると四半期ごとにチェックし、先のことを株主をはじめ周囲の人たちに示していかなくてはならないので、経営はどうしてもビジョン型になると思われがちです。しかし、実は価値観型の会社経営もあり得ます。

 私は、個人としてはビジョン型ですが、株式会社ピークパフォーマンスの代表取締役として、会社経営は価値観型でやっています。ウチの1年後の目標設定はこうです。

 私のためにがんばってくれている社員には、最低、これくらいの給料をもらってほしい。Aさんはこれくらい、Bさんはこれくらい、Cさんはこれくらいと、給料の総額を決めて、それを出せるだけの総売り上げを出す、という逆算をするのです。

 つまり「がんばってくれた人には当然のむくいを与えたい」という価値観しかありません。これだけ給与として与えたいから、それだけ売り上げるには、これだけやらなきゃダメだよね、というのが後から決まってきます。「こういう事業をこういう規模でやりたい」「何千億円儲けたい」という意識はないのです。

 ほかにも例えば、「障害を持った子供たちに役立つ施設を作りたい」と考えて、「そうすると、やっぱり会社の福祉部門でこれだけを収益を上げていないと、施設を作ることはできない。だから、これだけ売り上げを上げよう」という考え方も価値観型です。環境保全について強く言える権限を持つために、この分野でシェア3位になる、なども価値観型的な考え方です。このように、価値観型の会社経営はあり得るのです。


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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