DeNAが語るイノベーションの“DNA”イノベーションの現場から(2/2 ページ)

» 2007年11月22日 01時15分 公開
[小野和俊,ITmedia]
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 1つは、何か問題が起きたときにはすぐ反省会を開くようにしている。定例の会議は増やしたくないという南場社長だが、反省会は何かあったらすぐ開くようにしているのだという。

 もう1つは、定期的な業務レビュー。四半期に1度、直接の業務に関わっていない人が細かいオペレーションの話を聞く時間を作っている。また、年に1度、全マネージャーが今のやり方を発表する機会も設ける。

 そして3つ目は、冒頭にも紹介したような、「あえて混乱を生み出す」南場社長のオペレーションだ。冒頭の例の他にも、執行役員制を廃止し、ディレクターを一度全員平社員にしてみたこともあった。

 社員から新しいアイデアが出てこないことを嘆く経営者は多い。しかしそうした不満の原因は、アイデアが出てくる仕掛けや枠組みを作れなかった経営者にこそあるようにも思える。今回のインタビューでは、そうした不満を南場社長の口から聞くことは一度もなかった。

毎年、40から60の提案が集まる新規事業提案制度

イノベーションテスト(日本語版)

5:イノベーションを生み出すためのリソース(人材・予算・時間)が確保されているか?

6:そのリソースの使い方を決めるためのプロセスが明文化されているか?


 DeNAでは、社員からさまざまな提案やアイデアが出てくるよう、至るところで工夫がなされている。

 イノベーションを生み出すために予算や時間が割り当てられている例としては、米Googleの20%ルールなどが有名だが、DeNAでは社員が自由に提案できる新規事業提案制度が用意されている。

 半年に一度応募を募る制度で、提案者はかなり力をいれて準備してくる。南場社長に直接説明する機会が与えられ、その後、経営会議で審査が行われる。審査を通過した事業については実際に事業化される。毎回20から30ほどアイデアが提案され、活発に利用されている。現在でも既に仕掛かり中のプロジェクトがいくつかある。

 「本当のイノベーションが片手間で出てくるなんてあり得ない」

南場社長に話を聞いたISIFメンバーの神成淳司氏

 新規事業提案制度では多数の提案が寄せられる。しかしDeNAの中で、これまで大きなイノベーションが生まれてきたのは、新しいものを生み出さなければならないという強いプレッシャーの中で、寝食忘れて考え抜いてきたからだ。

 南場社長は、イノベーションには2つの種類の生まれ方があると考えている。1つは死ぬ気で寝ないで考え抜いて出てくるアイデア。もう1つは、犬も歩けば棒に当たるという気持ちで始めたプロジェクトが大ヒットするケースだ。

 DeNAでは誰かが新しいことを始めようとすると、周囲は全力でサポートする。例えばモバゲータウンの質問広場は、実はインターンの学生が作ったもの。周囲が徹底的にサポートして、モバゲータウンのオフィシャルな機能として採用した。学生からの提案でも、良い内容であれば即採用する。アイデアを実行するための権限の移譲が大切だ、と南場社長は言う。

 新規事業提案制度の審査を通過したプロジェクトはいずれもまだ仕掛かり中で、この制度でどの程度のイノベーションが出てくるのかはまだ分からない。南場社長は新規事業提案制度を続けていくつもりだという。

DeNAのコミュニケーションプラットフォーム

イノベーションテスト(日本語版)

7:人が集まってフラットなコミュニケーションがとれる場所がオフィスとオンラインの両方にあるか?


 DeNAではオープンハウスという制度がある。南場社長の自宅に多いときで30人ほどの社員を招待して、南場社長も含めて、飲みながら社員同士さまざまな話をする。

 オープンハウスからこれが始まった、というはっきりとしたものはないが、例えば人事のスタッフが若手に研修はどんなものが良いかという話を聞くなど、ざっくばらんにコミュニケーションができる場となっている。

 マネージャーを集めて幕張で合宿を行ったりもした。「合宿でもしないとマネージャーは忙しくて集まれませんからね(笑)」。この合宿では、全体の利益を上げる大きなメカニズムの中で、それぞれの部署がどのように貢献しているのかを再確認することができたという。そういうことをやっているのならうちの部署からこういう風にヘルプができる、というような会話も自然と出てきた。

 社内の物理的なコミュニケーションスペースとして用意されているのは現時点ではタバコ部屋くらいだが、「ランチを取れる場所などがあれば効果はあると思う」と南場社長は話す。次にオフィスの引越しの機会があれば、社内のコミュニケーションスペースも工夫していきたいと考えている。

 オンラインでのコミュニケーションにはグループウェアを使ったりもしているが、南場社長はやはり直接的なコミュニケーションが好きだという。社長室は透明な壁になっていて扉は常に開いている。誰でも入ってくることができるし、南場社長に話しかけることもできる。南場社長が不在の時には、社長室で犬と戯れている社員もいるという。

 市場に対してだけではなく、社内に対しても変化を生み出し続けるDeNA。その基盤の部分を、オープンでフラットなコミュニケーションプラットフォームが支えている。

イノベーション・テスト(日本語版)
それぞれの問いにYes/Noで答えてください。Yesの場合は具体例を挙げてください。Noの場合は理由もしくは必要性についての認識の有無を記述してください。
1 仕事の成果が革新的であることが評価基準となっているか?
2 成否よりも実行したか否かの方が評価されるか?
3 仕事のやり方を定期的に評価し、見直しているか?
4 過去の成功や失敗が参照可能な状態で蓄積されているか?
5 イノベーションを生み出すためのリソース(人材・予算・時間)が確保されているか?
6 そのリソースの使い方を決めるためのプロセスが明文化されているか?
7 人が集まってフラットなコミュニケーションがとれる場所がオフィスとオンラインの両方にあるか?

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