移転実施のフェーズで最も大きなウエートを占めるのが、新しいオフィス(移転先)の設計やデザインなどに関する業務だ。ここでは、オフィス設計を進める際の手順と各ステップにおけるポイントをご紹介する。
オフィス設計を進める際のステップは、下図のように大きく8つのステップに分かれる。以下にそれぞれのポイントを挙げるので参考にしてほしい。
まずオフィスの現状を把握しよう。経営層と管理側、そして従業員の視点はそれぞれ異なるため、偏った見方にならないように注意が必要だ。末尾の「オフィス現状把握シート」を使って全員アンケートを実施することで、思わぬ良い点、悪い点が見つかることが多いため、ぜひ実施してほしい。
次に新オフィスに必要な機能や性能をまとめよう。このとき、企業のブランディングやCSRなどのソフト面も盛り込むことが重要だ。何を目指したオフィスなのかを社員や顧客、関係各社へ発信することで、明確な目的を伝えることができる。
たたき台となるレイアウトをもとに、「ゾーニング」と呼ばれる配置割りをして、部署間関連やコミュニケーションなどの相関性を視覚で確認する作業をいう。セキュリティ計画やワークスタイルから見たIT環境計画も盛り込んでおくとよいだろう。
また、この段階で概算見積りを取り、当初の予算から大きく外れていないかを確認すること。コストと品質の供給のバランスを整えておくことが大切だ。特にビルの工事区分はコストが見えにくいので、注意しよう。
三次元で空間を把握する作業をいう。来客エリア、社員のリフレッシュエリア、オフィス全体のイメージを、3Dパースやデザインプレート、材料、照明などから絞り込もう。企業によって力を入れるポイントが異なるため、各社の「こだわり」を表現する作業ともいえるだろう。たとえばシステム開発やデザインに携わる社員が多い場合、リフレッシュやコミュニケーションをはかる場所が生産性に影響を与える。そこで、気分を切り替えやすい空間作りが重要となってくるというわけだ。
内装も家具もランクに応じて金額はさまざまだが、選定する際の留意点は以下の通り。
オフィス設計上の最終段階で、デザイン、内装、家具、セキュリティ、IT環境などの諸条件を、金額や納期などと合わせて取りまとめよう。
それぞれの委託先が決定したら、レイアウト図面に沿って打ち合わせを行う。新規購入するもの、移設するもの、廃棄処分するものを明確にして、壁・床などの内装工事やOA機器、電話、空調、照明などの設備工事を含めたオフィス移転作業の手順、スケジュールを決めていこう。このとき、双方の認識の違いをなくすことが重要なポイントとなる。議事録などを取り、トラブルの防止に努めること。
社内関係者への承諾や稟議を経て決定することになるが、ここで難しいのが「自分の把握している情報やイメージを正しく伝えることができるかどうか」だ。ここで注意したいのは、この段階になると担当者は日々の打ち合わせでイメージができ上がっている一方、経営層はイメージが捉え切れていないため、金額だけの判断になりがちだということ。最終決定が順調にいくよう、関係者に伝えやすい資料を用意しよう。
委託先との認識の違いや漏れがないかを再度チェックしよう。口頭ではトラブルの原因になるので、書式での発注を心掛けること。
執筆:スターティア株式会社
ファシリティソリューショングループ 栗原 雅