続く習慣を作るには?(2)【解決編】シゴトハック研究所

長続きする習慣を身につけるにはどうしたらいいでしょうか? 英語学習サイト「iKnow」から、「続ける」とは「やる」という選択を繰り返すこと、そして“続けること”そのものからいったん離れるというテクニックがあることが分かります。

» 2008年01月18日 21時02分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 初心の熱気を冷めさせないようにするには?

 コツ:“続けること”そのものからいったん離れる


 どんなに「飽きっぽい」と自認する人であっても、1つや2つは長続きしているという習慣はあるでしょう。現在はやめてしまったものの、以前は熱心に続けていたという習慣でもいいのですが、とにかく自分の中で長く続いている、あるいは長く続いていた習慣について、次のようなポイントで振り返ってみてください。

  • その習慣は「習慣化しよう」として続けている(いた)のか?
  • その習慣を続けるうえで、特に気をつけていたことは何か?

 例えば、「電車の中で本を読む」という習慣のある人は、最初こそ「習慣化しよう!」という強い意志の後押しが必要だったかもしれませんが、続けていくうちに、電車に乗ったら自然と本を開くようになるはずです。

 もっと身近な習慣でいえば、歯磨きをする際に、「面倒だな、今日はやめておこうかな」などと迷うことはないでしょう──よほど泥酔しているか、病床にあるかといった特殊な状況でない限りは。

 つまり、続いている習慣というのは、「続ける」ことを特段に意識しなくても済むものといえます。当然「続いている」という意識も薄いでしょう。

 これは、自転車に乗るときの状態に似ています。倒れないように注意したり、バランスを強く意識したりしなくても、右に傾いたら自然と左側に体重移動し、左に傾いたら逆に右側に体重移動する、という調整が“自動的に”行われるのです。

 別の言い方をすれば、何か習慣が継続している状態というのは、瞬間瞬間に突きつけられる「やるかやらないか」という二者択一の問いに対して、迷うことなく「やる」の方を選んでいる状態ということになります。

 そういう意味では、「続ける」とは「やる」という選択を繰り返すことといえます。つまり、目の前に現れる「やるかやらないか」という二択に対して、間違いなく「やる」を選べるように自分をしつける、あるいはし向けるようにすればいいわけです。

 そのためには次の2つのアプローチがあります。

  1. 「やる」を選びやすくする
  2. 「やらない」を選びにくくする

「iKnow」が続く理由

 「iKnow」というWebサイトをご存じでしょうか。一言でいえば、英語学習サイトとなのですが、同サイト内に次のような説明文が見つかります。

 脳科学に基づいて開発されたラーニング・エンジンが、あなたの学習パフォーマンスをすべてトラッキング。最適な学習プランを自動的に提供するという画期的、かつ効果的な方法で、英語を学習していきます。


 実際に体験していただくとお分かりいただけるかと思いますが、画面の指示通りにゲーム感覚でキーボードをたたいていくことで、レッスンを進めていくことができます。上記の説明文中にもある通り、レッスンの成果はすべて記録され、「学習完了アイテム」や「スキルレベル」といった数値として目に見えるようになっています。

 勉強というと、どうしても苦痛の伴う、気の進まないものというイメージが先行しがちですが、「iKnow」の場合は、やればやるほど数字が伸び、レッスンが進んでいくのを目で見て実感できる仕組みになっているため、

 「今日はもう1レッスンやろうかな」

 という気持ちが生まれやすいのです。

 英語の勉強に限らず、努力のタイミングとその努力に対する成果が現れるタイミングのタイムラグが大きいと、努力のモチベーションが得られにくくなります。

 例えば、英語の勉強をしようと思っていても、おなかがすいていれば、まず食事をしてからにしよう、と考えるでしょう。これは、食事をすることによって得られる成果(空腹を満たす)は、時をおかずして、しかもほとんど確実に得られるからです。逆に、英語の勉強は、今やったとしてもその成果が得られるのはだいぶ先でしょう。しかも、期待したような成果が得られる保証もありません。それが、1レッスン終わるたびに、数字でその成果が確認できる「iKnow」であれば、

 「食事の前にもう1レッスンだけやろうかな」

 という、ある種の“常習性”が生まれることもあります。もちろん、英語が話せるようになるという最終成果が得られるわけではありません。ただ、そこに確実に近づくことができているという実感が「もう1レッスン」という“おかわり”を後押しするわけです。

続けることそのものからいったん離れる

 「iKnow」が実現していることは、以下の2つです。

  1. 遊んでいるだけ(のつもり)なのにそれが勉強になる
  2. 時間制限とポイントを数字で明示する

 1は、勉強に伴う苦痛を覆い隠すオブラートのようなもので、これがあるからこそ「もう1回やろう」という「やる」を選びやすくなるわけです。

 2は、せっかくここまでやったのだからもう少し先に進めよう、という「せっかくだから」という気持ちを後押しします。「やらない」──すなわち「中断する」のが名残惜しくなるような仕掛けといえます。

 このような「iKnow」の工夫や仕掛けの共通点は、少し先にある「続ける」ではなく、目の前にある「やる」に注力していることといえます。

 この考え方を応用するなら、続けようと気持ちはいったん脇に置いて、以下のいずれかのアプローチで取り組むことです。

  1. 思わず足を踏み出したくなるような工夫をする
  2. 思わず足がすくんでしまう原因を除去する

 キーワードは「気分」です。やろうと思ったものの、「何となく面倒だな」などと思ってしまうのであれば、その原因となる要素を除去します。あるいは、見た目をきれいにすることで、気分をよくするようにします。

 例えば、机の上を整理整頓することは、見た目をきれいにすることになりますし、整理された机の上でなら、気分よく仕事にとりかかることができるでしょう。

 続けることそのものは意識的には行うことができません。できるのは、目の前の「やるかやらないか」という二択に対して「やる」と答え続けられるような場を作ることです。

 ウィンタースポーツの1つにカーリングがありますが、続けることはこの競技に似ています。最初にストーンが投てきされたら最後、選手たちはストーンそのものには一切手を触れることができなくなり、ひたすら氷面をデッキブラシやホウキで掃くことになります。こうして、ストーンが目標とする円の中心にスムーズに近づけるように場を整えるのです。

 同様に、何かを長く続けることは、続けることそのものである“ストーン”ではなく、それが乗っている“氷面”に働きかける必要があるわけです。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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