「クレジットカードよりキャッシュカードの方が不安だな」「預金者保護法が成立したじゃないですか」「補償対象はあくまでATMでの取引のみ、ネットバンキングやデビットカードでの取引は補償されないこともあるんだぞ」――。
大手総合商社・メデア商事の新人・小林ケンタは先輩・高柳ワタルと昼飯を食べていた。
高柳 ネットでの買い物ってよく利用してるか?
小林 はい。本とかはネットで買うことが多いです。
高柳 クレジットカードで?
小林 えぇ。あっ、そうそう。もちろんそこで一応工夫はしてるんです。
高柳 どんな?
小林 ネットで使うカードと普通の店で買い物するときに使うカードを分けて、ネットで使うカードは利用限度額を低めに設定してます(えっへん!)
高柳 ああ、ありがちだな(苦笑)
小林はちょっと不満げな表情を浮かべた。
高柳 いや、悪くはないんだけど、クレジットカードの場合は、すぐにカード会社に連絡すれば、たいていの場合はカード会社が補償してくれるんだよ。明細をきちんとチェックして、身に覚えのない買い物があるかどうかチェックするのが大切だな。
小林 確かに……。
高柳 オレは、クレジットカードよりキャッシュカードの方が不安だな。偽造キャッシュカードとかATMで暗証番号が盗み取られるとか、いろいろと問題があったろ?
小林 そういえば、数年前はよくニュースで報道されていましたよね。でも最近は、法律で補償されるんじゃなかったでしたっけ?
かつては、盗難カードや偽造カードによって引き出された預金が補償されることは基本的になかった。しかし近年、偽造カードによる不正引き出しが増加し、社会問題化したことで、2006年2月に「預金者保護法」が施行された。
この法律により、預金者本人に、暗証番号を故意に他人に教えたり、カードに暗証番号が書き込んでいたりといったような重大な過失がなければ、預金は全額補償されることになった。しかし、補償の対象はあくまでATMでの取引のみであり、インターネットバンキングやデビットカードでの取引は、法律の適用範囲外。被害額が補償されないこともある。
小林 そうなんですか? 知らなかった……。
高柳 だから、オレは銀行の口座を分けるようにしてるんだ。
クレジットカードを「ネット用」と「店での買い物用」に分けるように、銀行口座を貯蓄用と日常用に分け、日常用の口座には最低限の金額だけ入れておくのだ。公共料金やクレジットカードなどの自動引き落としも、日常用の口座を使う。ネットバンキングも日常用の口座を使おう。
小林 なるほど! とにかく僕ももう1つ口座を作らなくちゃ……。
高柳 もう1つの口座を作る時に、同じ銀行で作るだけじゃなくて、同一人物による別口座として手続きをしないと、「振替」じゃなくて「振込」になって、預金を移動するたびに手数料を取られることになるから気をつけろよ。
セキュリティ関連の話題を中心に執筆中のフリーライター。翻訳(英語、韓国語)やプログラミング、システム構築などコンサルなど活動は多岐に渡る。JPCERT/CC専門委員。Webサイトはこちら。
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