オフィスにおける携帯電話の利用実態とその管理携帯電話の法人契約で成功する

仕事上の必携ツールとなった携帯電話だが、個人名義のものを仕事上でも活用しているケースもまだまだある。どうしたら管理を容易にできるのか。また自社にふさわしい携帯電話使用規定の作り方は?

» 2008年02月08日 20時40分 公開
[SOS総務]
SOS総務

 携帯電話は誰のもの?──ビジネスでも当然のように使う携帯電話。しかし「携帯電話は個人のもの」という意識が高いためか、企業における対応はまちまちのようだ。今回は、ビジネスにおける携帯電話の利用や管理の実態、そして、企業が抱える管理上の課題などをみてみよう。

 ビジネスシーンに携帯電話は欠かせない――といっても、すべての企業が社員1人1人に携帯電話を支給しているわけではない。個人情報保護や機密保持などの理由から携帯電話を支給する企業が増えている反面、個人名義のものを仕事上でも活用しているというケースもまだまだ多いようだ。

費用負担や精算方法は?

 ところで、個人名義の携帯電話を活用している場合、その費用負担はどうなっているのだろうか? 携帯電話をはじめとする移動体通信機器の販売やサービス加入取り次ぎを行っているアイ・ティー・テレコムの執行役員、永繁充さんによると、すべてが自己負担になっていることもあれば、企業に実費を請求して精算している場合もあるなど、企業によってその対応はさまざまだという。完全に個人負担という場合は例外だが、企業が何らかの形で費用を負担する場合、精算のわずらわしさや社員のプライベート情報の取り扱いをどうするかなど、管理上の課題も多いようだ。

 例えば、個人名義の携帯電話を仕事上で使用し、その費用を企業が負担している場合。以前は個人あての請求書をそのまま提出し、実費精算をするケースが多かったようだが、そこにはプライベートでの通話記録も書かれており、個人情報が筒抜けという状態だった。しかし、個人情報保護が重要視され始めた結果、現在では、プライベートの部分については塗りつぶすといった対応をすることに……。また、実費精算ではなく、手当として一定の費用を負担する企業も増えているという。

 さらに、携帯電話各社等からは、企業への請求と個人への請求を分けられる公私分計サービスや、プライベートとビジネスでの番号を切り替えて使うサービスが提供されており、これらを利用する企業も増えているようだ。

 「例えばフュージョン・コミュニケーションズで提供しているモバイルチョイス。社用でかけるときはいったんサーバを経由して電話する仕組みです。また複数の電話番号を使用できるNTTドコモのマルチナンバーなら、ビジネスとプライベートで番号を使い分けることもできます」とアイ・ティー・テレコム法人営業部の高橋吉嗣さん。

 もっともこのような場合、公私をきちんと使い分けるかどうかは、社員のモラルにかかっているのだが、一応の効果は見られるようだ。

事務処理負担の軽減には契約先を減らすこと

 先述のように企業における携帯電話の管理は、現状ではまさに千差万別というほかはない。また、大企業では部署ごとに対応がまちまちであることさえある。永繁さんによると、携帯電話の管理状況については、経営者のポリシーが優先されることが多く、企業の大小や業種による傾向は見られないそうだ。

 携帯電話の管理について、企業はいまだ模索中といったところだろうか。また、それぞれの企業にふさわしい管理の在り方があるのも事実だろう。このような点を踏まえた上で、永繁さんは企業が携帯電話を管理するポイントをこんなふうにアドバイスしてくれた。

 「携帯電話を管理していくには、できるだけ契約先を1つにまとめて事務処理を減らすことです。また、使う側である現場のニーズをきちんと把握するというのも大切なポイントでしょう」

自社にふさわしい携帯電話使用規定とは

携帯電話社内規定で定めたい項目(例)
1 携帯電話使用の原則
私的利用の禁止など
2 使用上の遵守事項
運転中の通話の禁止、使用場所への配慮、マナーの遵守など
3 損害賠償
貸与した機器が破損した場合、携帯電話を通じて情報漏えいが発した場合など
4 社有(私有)携帯電話の使用許可と使用者の義務
5 私有携帯電話の通話料金の請求

 また、携帯電話の管理について見直し始めた企業が多い一方、社内規定を定めるなど、一定のルールに従った活用を社員に積極的に呼び掛けている企業はまだまだ少ないようだ。社会保険労務士として、各社の就業規則や規定作りに日々取り組んでいる岡田人事労務管理事務所の岡田良則さんはいう。

 「携帯電話に関する最も大きな問題としては、費用負担の問題があります。しかし、それだけではなく、さまざまな使い方が想定される情報ツールとして、使用を許可する者に関する取り決めや使い方など、利用実態に即した細かなルールも必要になってくるのではないでしょうか」

 それでは、実際に社内規定の作成にあたっては、どのようなことがポイントになるのだろうか。

 「例えば法人契約の携帯電話を支給する場合に、まず規定すべきなのは、『私的利用の禁止』です。当たり前のことではありますが、ルール化して社員に意識してもらうのともらわないのとでは、結果がおのずと違ってきます。また、費用負担などについてはもちろん、規定にはマナー的なものも付け加えるべきでしょう。場所柄も考えず大声で通話をしていると企業情報が漏れることも考えられるし、場合によっては企業としての品格を問われかねません。そのほか機器を紛失・破損した際の取り決めなど、携帯電話の利用実態に即した規定も必要でしょう」

 また、社内規定を初めて作るという場合に、規定集などのサンプルをほとんど丸写しで使用してしまうような企業も少なくないが、このようなやり方は避けるべき、と岡田さん。「作成にあたって、社内でこういう場合にどうするということを話していくと、サンプルとはかなり違ってくるはずです」

 職場の意見を聞き、話し合うことで良い規定ができる。まずは社内で携帯電話の利用について話し合う機会を作ってみてはどうだろう。

トラブル対応、プラン変更、携帯電話にかかわる業務は複雑怪奇!?

 社有の携帯電話を支給しているという場合にも、日々の管理は社員1人1人に委ねるしかない。しかし、紛失や故障など、いざというときの対応は、管理部門である総務へ集中することが多いようだ。携帯電話のトラブルがそう頻繁に発生するわけではないだろうが、対応するには時間と労力がかかるのも事実。また、携帯電話各社の競争が激しく、料金割引などのサービスも刻々と変わっていっているため、どのようなプランや機能、サービスを選べばいいのかも大いに頭を悩ますところだ。

 そんなときに利用してみたいのが、携帯電話の管理サービス。個別の携帯電話の利用状況を把握、分析して、携帯各社のプランの中から最適なプランを選んでくれたり、部門ごとに通信費を振り分けたりと、複雑な業務をサポートしてくれる。また、それぞれの携帯電話が適正に利用されているかどうかを診断するサービスや、故障や紛失の窓口になってくれるものもあるようだ。もちろん、プラン変更などは携帯各社のホームページでもできるので、自社の業務負担などによって使い分けてみては?


『月刊総務』2006年11月号 第2特集「オフィスの通信管理事情・携帯電話編」より


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