良いリストを作るという作業は、時にはロジカル、時にはアーティスティックです。リスト作りを通して、右脳、左脳両方の思考力をアップさせましょう。
前回は、リストを作るための8つのステップを定義しました。今回は、良いリストを作るための頭の使い方について考えてみます。
リスト化とは「集めて、束ねて、固める」ことです。良いリストを作るための力も、おおむねこれに呼応する形で下記のように定義できます。
上の3つの力が、「リスト化の8ステップ」のどこで使われるかを表にまとめました。
リスト化のステップ | スキル | 脳 | ||
---|---|---|---|---|
1 | 【定義】テーマを掘り下げ、自分の思いを見い出す | 両 | ||
2 | 集める | 【列挙】リスト項目を思いつくかぎり挙げてみる | 右 | |
3 | 【分析】リスト項目を論理的に洗い出す | フレームワーク思考 | 左 | |
4 | 束ねる | 【構成】リストの流れを決める | 右 | |
5 | 【要約】材料を束ね、リスト項目をまとめ上げる | 要約力 | 左 | |
6 | 固める | 【凝縮】文の「密度」を高める | 左 | |
7 | 【修辞】読みやすさ・思い出しやすさに配慮する | 凝縮力 | 右 | |
8 | 【再定義】テーマを貫く「思想」を見いだす | 両 | ||
ここでいいたいのは、良いリストを作るためにはまず3つの力を鍛える必要があるということではありません。リスト化の8ステップを実践するうちに、こういったスキルが身につくということです。
理詰めで詰めていくだけでは、リストは印象的になりません。直感でまとめていくだけでは、内容が濃くなりません。良いリストを作るためには、さまざまな思考の「モード」を組み合わせていく必要があります。このことを脳の機能から見るとどうなるでしょうか。
書籍『ハイ・コンセプトの時代』は、働く個人の強みが専門性から総合力へとシフトしていくことを主張した本です。多くの知識労働者の共感を呼んだこの本で、著者ダニエル・ピンクは左右の脳半球の役割分担について神経科学の知見をまとめています。それによれば、左右の脳はほとんどいつも協力して活動しています。ただし以下のようなはたらきの違いがあります。
※『ハイ・コンセプトの時代』より
左右の脳には優劣はありません。しかしこれまでは左脳主導の思考(1つずつ、連続して、分析的に)が重んじられてきました。
著者は、米国や日本のように豊かで労働コストが高い国で働く個人が今後とも競争力を維持するためには、両方の脳の活用が欠かせないとしています。その根拠として、左脳主導思考による仕事はコンピュータや海外の安い労働力に置き換えられるリスクが高いこと、製品やサービスの価値が左脳主導思考の産物である「機能」などからよりソフトな「デザイン」などに移っていくことなどを挙げています。
では「リスト化の8つのステップ」は、左右どちらの脳が主導しているのでしょうか。上記の相違点をもとに、あえて分類してみた結果を表の右列に示しました。右と左をかなり行ったり来たりしており、リスト作りは両方の脳の思考モードを使う作業であることが分かります。時にはロジカルに、時にはアーティスティックに、さまざまな角度から考えることでリスト作りも楽しくなりますし、リストの出来もよくなります。
本文中、*ListFreak(リストフリーク)というサイトに触れている部分があります。*ListFreakは2005年11月に開設したリスト収集・共有・活用サイトです。
*ListFreak - 世の中の知恵やコツを「リスト」で共有するサイト
株式会社アーキット代表、グロービス経営大学院客員准教授。「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。起-動線など複数のサイトを運営。ネットメディアへの寄稿も多い。外資系コンサルティング企業時代にシリコンバレー勤務を経験。
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